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コミカライズ1巻発売記念 SS 手作りお菓子

コミカライズ1巻発売記念のSSです!


 たくさんの材料を買い込んで、私は本とにらめっこをしていた。


 キッチンに並ぶのは、お菓子の材料たち。

 

「日頃のお礼をかねて、オスカー様に手作りのお菓子のプレゼントって思ったけど、ううう。本当に出来るのかしら……だめよ。今日は頑張るって決めたんだから! よし! ファイト!」


 私は、本の文章通りにお菓子を作るぞと、一グラムの差もなくクッキー作りに挑戦する。


 最初は、ケーキと思ったが、すでに、真っ黒けの謎の物体が出来上がってしまった。


 失敗である。さすがにあれは渡せないので、混ぜるだけ! 超簡単! というレシピを見つけてそれ通りに頑張って今作っている。


「大丈夫! うまくいく!」


 そして、どうにか出来上がったクッキーはというと、もふちゃんに似せて作った。


 ちょっと、上手くいかなかったけれど、味は美味しいと……思う。


「これなら、どうにか、渡せそう」


 そう思い、私はちょっといびつなもふちゃんクッキーたちを袋に可愛らしくリボンをかけて包んだ。


 オスカー様とは今日待ち合わせをしており、王城の解放されている中庭で落ち合う約束だ。


「ううう。喜んでくれるかしら……」


 鏡の前でちょっとだけおしゃれをして、私は気合を入れて待ち合わせ場所へと向かった。


 すると、ご令嬢方の人だかりができており、その中心にオスカー様の姿があった。


 どのご令嬢も着飾っていて、遠巻きに見つめながら入っていける余地がなく、どうしようかと思っていると、オスカー様がこちらに気付き、ご令嬢達の間から抜け出て手をあげた。


「メリル嬢!」


 笑顔をこちらに向けてくださるオスカー様。でも、ご令嬢方の視線が痛いです!


「メイフィールド家の……本当にオスカー様と仲がいいのね」

「いやだわぁ。行き遅れの女だなんて」


 ひそひそとした声が聞こえるけれど、気にしない。


「オスカー様、お待たせしてしまいすみません」


「いや、いいのだ。……ん? メリル嬢から甘い香りがする」


 オスカー様が鼻をスンと鳴らしてそう呟く。鼻がいいんだなと思いながら、私はそっとクッキーを手渡した。


「あの、いつもお世話になっているので、お礼に作ったんです。あまり、うまくは出来なかったのですが」


「メリル嬢が……私のために?」

「はい……」


 オスカー様の表情がぱぁぁぁっと明るくなり、嬉しそうに微笑む。


「嬉しい。すぐにでも開けたい。あちらに座る場所があるから、移動してもいいだろうか?」

「もちろんです」


 私達は並んで歩き始める。


「手作りクッキーですって……オスカー様、手作りのものは受ってくださいませんのに……」

「くぅぅぅ。メリル様が特別ってことですの?」

「笑顔も……あんな笑顔みたことありませんわ! うううう」


 そんな声が後ろから聞こえてきて、いたたまれない。

 

「すまないな。待っていたらご令嬢方に捕まってしまって……」

「いえ、オスカー様は素敵な方なので、ご令嬢の気持ちもわかります……」

「素敵……ふふふ。君にそう言ってもらえると、すごく嬉しい」


 オスカー様は、私を幸せな気持ちにさせる天才だと思う。

 

 私は一人ですぐに考え込んで落ち込んでしまうたちなので、率直に言葉にしてくれるオスカー様に何度も救われている。


 ガゼボへと移動をし私達は並んでベンチに腰かけた。


「開けてもいいかな?」

「もちろんです」


 ドキドキしていると、オスカー様がクッキーを取り出した。


「いい香りだ。あれ、この形は、もしや……たぬき?」

「あ、いえ、その、もふちゃんです。その、たまに顔を出してくれるもふもふの可愛い子です」

「あ……ふふふふふ。一生懸命作ってくれたのだな」

「すみません。不格好で。ううう。もっとうまく作れたらよかったのですが」


 オスカー様がクッキーを口に入れ、美味しそうに咀嚼する。


「おいしい。嬉しい。私は今、世界で一番幸せ者だと思う」

「え? お、大げさです」

「いや、そんなことはない。こんなに幸せな気持ちには、メリル嬢に出会ってから知ったのだ」


 心臓が、ドキドキする。

 へたくそだけれど、こんなに喜んでくださるなら作って良かった。


 その日、私とオスカー様は二人でデートを楽しんだ。

 ふふふふふふふ。デート。

 にやにやしながら、デートは終始楽しかった。


 ただ、デートから帰って部屋に帰宅した私は絶望した。

「あ……かた、づけ……」


 キッチンには、後片付けの山が出来上がっていた。


「みゃーん」


 そこへもふちゃんがやってきて、その山を見て驚いていた。


「ううう。私、もっと色々と出来る女になりたい……」

「みゃ、みゃおん」

「励ましてくれて、ありがとう」


 後片付けは大変だったけれど、でもオスカー様にまた何か送りたいなそう私は思ったのであった。






読者の皆様、いつも読んで下さりありがとうございます。

本作は漫画家の緒方しろ先生がコミカライズを担当して下さり、描いて下さっております。

そのコミカライズ1巻が2025年 1月17日! 発売となります。

是非読んでいただけると嬉しいです。

試し読みをしていただける公式サイトのリンクも貼っておりますので、そちらからよろしくお願いいたします。


かのん



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