短編 幸せなひとこま
ついに発売日です!(●´ω`●)
最初から最後まで最高だったデート。
私はそう、想い、部屋の前でオスカー様と別れがたくて、どうしたものかと思っていると、オスカー様が口を開いた。
「今日は……楽しかった」
「は、はい」
王城の時計塔の鐘がなる。
ゴーンゴーンと響くその音を私達は聞きながら、お互いにお互いの手を離せないままでいた。
「えっと……」
私は顔をあげると、勇気を振り絞って言った。
「も、もうちょっとだけ! もうちょっとだけ一緒にいませんか!?」
恥ずかしい。もし断られたらどうしよう。でも、もう少しだけ一緒にいたい。
オスカー様は私の言葉にうっと息を詰まらせ、それから息をゆっくりと吐いていく。
「いや、私も一緒にいたいのはやまやまだが、理性が……」
「り、理性」
「まだ婚約もしていないし、それに夜だからな。だけれど……本音を言えば私も、もう少しだけ一緒にいたい」
にっと笑ってそう言うと、オスカー様は私の手を引いた。
「ちょっとだけ、王城の庭を散歩して帰らないか?」
その提案に、私は笑顔で勢いよく返事をした。
「はい!」
「行こう」
私達は、一緒に手を繋いで夜の王城の庭を歩いていく。
薄明りが灯された庭は幻想的な雰囲気であり、私はオスカー様と一緒にこんな風に歩けるなんて夢みたいだなと思う。
私達はベンチに座り、他愛のないおしゃべりを繰り返す。
自分の仕事のことや、魔法陣のこと、家族のこと……。
そして、そろそろ帰らなければと言う時間に、オスカー様はポケットから小さな可愛らしくラッピングされた箱を取り出す。
「いつ渡そうかと思っていたのだけれど、受け取ってくれると嬉しい」
「あ! わ、私もあります!」
お互いに、いつ渡そうかとそわそわしていたらしく、私達は微笑み合う。
私はカバンから、袋を取り出し、それをオスカー様に渡す。
「見てもいいか?」
「私もいいですか?」
ふふっと私達は笑い合い、そしてお互いのプレゼントを開く。
「わぁぁ。可愛い」
それは魔法石のネックレスであり、美しく装飾がなされている。
「綺麗です」
「メリル嬢……これは、ハンカチだが、ただのハンカチじゃなさそうだな」
オスカー様は嬉しそうに微笑んでおり、私はうなずくと言った。
「私が魔力を込めながら刺しゅうを施して作った特製品です! これを持っていると、危険なことがあっても一回は防いでくれるという代物です」
自信満々にそう告げると、オスカー様はそれを広げながらしげしげと眺める。
「すごいな……これは素晴らしい」
「ふふふ。頑張りました!」
オスカー様が喜んでくれてすごく嬉しかった。
私はオスカー様にネックレスを付けてもらう。
「ありがとうございます」
「いや、こちらこそありがとう」
くすぐったくなるような甘い雰囲気。私は、世界で一番幸福なのではないかと思ったほどであった。
そしてそんな夜のことを親友のティリーへと話すと、ティリーは私の首元に輝くネックレスを見つめながら言った。
「それ、かなり純度の高い魔法石よ。普通の宝石の非じゃない値段のしろものね」
「え?」
可愛らしいデザインなのに!? そう思っていると、ティリーはにやりと笑う。
「でも、貴方の作ったあのハンカチも同じくらいの価値があるものだわ。プレゼントに最適だったかは……まぁ置いておいて、お互いに良いプレゼント交換になったわね」
そう言われ、私は首を傾げる。
「オスカー様は喜んでいたわよ」
「ふふふ。貴女からもらえたらなんでも嬉しいのでしょうよ」
「?」
ティリーは私のことを優しい瞳で見つめ、頭をぽんぽんと撫でる。
「幸せになってくれて嬉しいわ」
たまにお母さんのような視線で見られるので、なんとも小恥ずかしい。
「……ティリーにもあるわよ。プレゼント」
「え?」
私はティリーの為に作っておいた魔法陣を中に入れてあるお守りを手渡した。
「もし嫌なお客さんがきたらこれを握って。お客さんは、急に家に帰りたくなるはずだから」
「まぁ! とっても便利ね! ありがとう!」
「えへへ」
今、とても幸せだなと思う。
好きな人にかこまれて、昔とは大違いだ。
この幸福な日々がずっと続けばいいなと、私はそう思った。
読んで下さりありがとうございました。
この小説は、自分の中ではかなり気合を入れて書いたものだったので、文庫本として書籍化できてとても嬉しく思っております。
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発売されてすぐに初速が命!そんなことを言われる今日この頃で、もう心臓ばくばくです。
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かのん






