3話 ※オスカー視点
オスカー好きです(●´ω`●)でも、オスカーって言うと、アンドレ!って続きそうっていつも思うのです(/ω\)
外へと出たオスカーは急ぎ足で王城の渡り廊下を進んでいく。
彼女が住んでいる宿舎さえ抜ければ、後は安心して歩いて行けるので、本館である王族居住区王の城内へと吐いたオスカーはほっと息をつく。
ここまでくれば後は自室へと戻るだけである。
自室へと入ったオスカーは、執事にお茶を頼み、部屋に入ると、騎士団の服を脱ぎ、シャツとズボンに着替えると、ソファに座って、大きく息を吐いた。
執事は紅茶を入れ下がり、オスカーはそれを一口飲むとほっとする。
アルベリオン王国の祖は獣人であると言われている。
それは国民も知っており、王国神話として語り継がれている。
そしてそれは事実であり、その為、先祖返りを果たして獣人になる者がたまに現れるのだけれど、それは王族だけの秘密とされてきた。
オスカーは祖の力を色濃く継いだ先祖返りであり、最近になってその血が目覚め、獣の姿へと変わるようになってしまったのである。
幼い頃からというわけではなく、半年ほど前からなのだが、未だその力を制御することが出来ずにいた。
たいていの場合は深夜の二時から明け方と二、三時間で姿は戻ることが出来てはいるのだが、たまに体調を崩したり怪我をした時なども変身してしまうことがありそうした時には、大人しく部屋で療養することにしていた。
今日は騎士団の仕事でかなり遅くなってしまい、帰る途中で獣化してしまったのである。
王城内には獣は基本的に入ることはない。その為、もし他の物に見つかってしまえば、捕まり王城外へと投げ出される可能性もあった。
なのでメリルが一時的に保護してくれたことはとてもありがたいことであった。
「はあぁぁ。申し訳ないことをしてしまった」
不可抗力とはいえ、女性の部屋に無断で入室し、その上食事をただでごちそうになるなど、王子としては初めての経験であった。
「どうにか、メリル嬢にお礼をしなければ……このままでは、男として情けない」
女性とは敬い、エスコートするものである。それなのにもかかわらず、抱っこして運んでもらったばかりか、食事までごちそうになってしまったのだ。
このままでは男が廃る。
オスカーはどうにかメリルと知り合う機会はないだろうかと、頭を悩ませるのであった。
その時、部屋をノックする音が聞こえオスカーが返事をすると、部屋に第一王子であり兄であるルードヴィヒが入ってきた。
どうしたのだろうかと思っていると、ルードヴィッヒはオスカーの座っているソファーの向かい側に座ると肩をすくめて言った。
「お前が朝まで帰って来ない日は私にも連絡が来るようになっているんだ」
「やめろよ。いつの間に兄上にそんなことを報告するようになったんだよ」
「仕方がないだろう。それで、今日はどうだったんだ?」
ルードヴィッヒの質問に、オスカーは大きくため息をつくとメリルのことを話した。
「研究棟から出てきたメリル・メイフィールド嬢に拾われて、一夜世話になったのだ」
その言葉にルードヴィッヒは眉間にしわを寄せると、足を組みなおす。
「今回は無事でよかったが、何があるかわからない。深夜二時までには必ず部屋に帰るようにしてくれ。私も気が気ではない」
自分を案じるその言葉にオスカーはうなずくと、申し訳なさそうに言った。
「もしや、探していてくれたか?」
「あぁ。影を使い、探していた。まぁ無事であったならよかった」
「申し訳ない……」
項垂れるオスカーに、ルードヴィッヒは苦笑を浮かべると、首を横に振った。
「大丈夫だ。そうだなぁ、まぁだが、もしもの時の家が出来て良かったな」
「え?」
「もしも今後も獣化してこちらに帰って来れない時にはメリル嬢の所へと帰ったらいいではないか」
冗談なのか本気なのか分からない口調でそう言われ、オスカーは顔を引きつらせる。
「兄上、ご冗談を」
「冗談になるといいのだがな。いいか。今後絶対に深夜二時までに部屋に帰るように。いいな。そしてもし戻れない時には、メリル嬢の所を避難所にしてもらえ」
オスカーは頭を掻きながら何とも答えられずにいた。
メリル嬢を巻き込むわけにはいかない。ただし、もふもふ姿の自分を愛おしそうに抱きしめたり撫でたりするメリルの姿を思い浮かべ、オスカーは、また会いに行きたいななんてことを考えてしまう。
「とにかく、無事でよかった」
「ありがとう。兄上」
オスカーが獣化するということは現在最重要機密となっている。
これを知る人物は出来るだけ少ない方がいいだろうと判断され、オスカーは早急に能力を制御できるようになろうと特訓中である。
ただし特訓は中々うまくはいっていなかった。
これではいけない。
どうにかして制御できるようにならなければと思うのだけれど、やはりうまくいかずオスカーは試行錯誤中なのである。
「とにかく、無理はしないように。私は一度部屋へ帰る」
「兄上、ほんとうにありがとうございました」
「あぁ。ではな」
ルードヴィッヒが部屋を出て行く。オスカーはそれを見送った後、大きくため息をついてからベッドの上に倒れこんだ。
眠い。
とにかく一度仮眠をとってから、騎士団へと出勤しなければならないだろう。
「……メリル嬢は大丈夫だろうか」
そう思うものの、瞼が次第に重たくなり始め、オスカーは意識を手放したのであった。
その数時間後、まさかメリルに仕事の援助要請をしにいくとは思ってもいなかったオスカーである。
二人の運命はカチリと動き出した。
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