29話
最終話です(´ω`)
王立騎士団を代表してオスカー様が、魔法陣射影師として私が今回は表彰されることとなった。
今回の表彰式には、あの事件の最中国王陛下の傍にいた上級貴族の面々と、国王陛下、そして王妃殿下が参加されるとのことであった。
内密な授賞式だと言っていたので、普通の部屋で拍手程度かと思っていた私は、恐らくバカなのだろうと思う。
それと同時に、その方が良かったのになと思う。
元々人から視線を集められることなどないこれまでの人生であったから委縮してしまう。
大ホールではないけれど、中ホールほどの広さの会場には王座とそして煌びやかな飾りが施されており、美しい花々が飾られている。
赤いカーペットが敷かれており、私は重厚な扉の前で、小声でオスカー様に行った。
「お、思っていた以上に規模が大きくて、震えます。これが内々の式、なのですか!?」
「ここは、中規模のホールではあるが、内々の授賞式などある場合に使われるのだ」
「そんな場所があることに、驚きです」
「まぁ、内々で受賞されるものか、こうした式に出席する上級貴族しかしらないと思う。それにしても、今日は私は役得だな」
「え?」
「こうして君をエスコートできて嬉しい。では行こう」
「あ、は、はい」
私は手を引かれ、赤いカーペットを歩いていく。
背筋を正し、久しぶりにドレスで男性にエスコートされて歩いている。
拍手が起こり、私とオスカー様は国王陛下の前まで進むと、頭を下げて待つ。
「魔法陣射影師メリル・メイフィールド、並びに、オスカー・ロード・アルベリオン。頭を上げよ」
「「はっ」」
顔をあげると、オスカー様に似てはいるけれど、オスカー様よりも細身で、それなのにその瞳は鋭く、こちらを見透かすような感じがした。
「今回の一件、魔法陣射影師としてよく務めてくれた。メリル・メイフィールドに褒章として報奨金、並びに魔法図書の自由閲覧の権利と、今後の古代魔法陣研究のための資金を授与する」
私はその言葉に瞳を輝かせた。
魔法図書の自由閲覧権といえば、王立図書館、王城内にある図書館、全ての魔法所の閲覧が可能になるというものである。
「ありがたき幸せにございます!」
私はそう答え頭を下げる。
「騎士団第二隊長オスカー・ロード・アルベリオンも騎士団を指揮し、よく王国を守った。その褒章として第二騎士団へ報奨金の授与と武器や備品の一新を行うものとする」
「ありがたき幸せにございます」
オスカー様と私は頭を下げると、拍手が起こった。
そして、私とオスカー様には国王陛下直々に、胸に金色のブローチが授与される。
それは王国の為に活躍をした者に授与される誉のブローチであり、私はまさか自分がそれをもらえる日が来るとは思ってもみなかった。
「これは重みのあるものだ。君がこれからも王国の為に尽力をしてくれることを祈る」
国王陛下は私にそう言うと、肩をとんと叩かれる。
それは重みがあり、私は気を引き締めると返事をする。
「はい。ありがたき幸せでございます」
ブローチには、王国のエンブレムが刻まれている。
私はこのブローチに恥じないように、これからも魔法陣射影師として働いて行こうと思った。
その後の式は恙なく行われ、私は他の貴族の方々からもお褒めの言葉を賜った。
ただ困ったことに、その中に、さりげなく縁談の申し込みが複数県差し込まれてくる。
「本当に才能に溢れたご令嬢だ。私の息子は今年22になるのですが、どうですかな。ここでメイフィールド家との縁を結ぶのも悪くはないでしょう」
「いやいや、私の家こそ、メリル嬢には相応しいのではないかとおもうぞ。魔力を有するということは、子もまた、魔力を有するであろうからなぁ」
私はその言葉を曖昧に受け流していたのだけれど、国王陛下と何やら話をしていたオスカー様は帰ってくると、私の肩を抱き、笑顔で言った」
「メリル嬢については、魔力餅ということが判明したため、王国の保護下にその身柄は置かれることになっておりますので、メリル嬢の意思関係なく、物事を進めようとは考えられませんように。では、我々は他にも挨拶に行かなければなりませんので、失礼します」
そう言うとオスカー様に手を引かれ、私はその場を後にすることとなった。
私は自分が王国の保護下に身柄が置かれるということに、いつの間にそのようになっていたのだろうかと驚いた。
「後で詳しくは話をする」
「あ、はい。分かりました」
私達はその後も貴族の面々に挨拶を終え、そして式は恙なく終えられたのであった。
式が終わった後、私はオスカー様に連れられて王城の庭へと進んでいった。
私達はベンチに腰掛けると、同じように息を吐いた。
「ちょっと疲れました」
「私もだ。兄上はすごいとこういう時に思い知らされる」
私とオスカー様は顔を見合わせると苦笑を浮かべた。
「突然伝えることになってしまったのだが、メリル嬢が魔力を持っているということが今回の一件で他の貴族にも伝わり、その為、国王陛下と話をし、王家の保護下にいるということにしてある。魔力を持っていると言うだけで狙われることもあるからな」
「そうだったのですね。ありがとうございます」
そこで、何となく不思議な雰囲気が流れていく。
このちょっと緊張感のある空気はどこから生まれたのだろうかと私は思いながら、オスカー様へ視線を向けると、オスカー様が真っすぐに真剣な瞳で私を見つめていた。
ドキドキと何故か心臓が高鳴り始める。
なんだろうかこの緊張感は。
「私は、君を守りたいと思っている」
「え?」
「私と、婚約してもらえないだろうか」
「は?」
私は突然言われた言葉に、頭の中は大混乱である。
突然、オスカー様が私に婚約しないかと言った?
何故?
だってオスカー様はより取り見取りである。それこそ、美しい令嬢達はたくさんいるではないか。
「え? ど、どう」
「きゃっ! オスカー様だわ!」
「オスカー様。今日はどうしてこちらへこられたのかしら!」
「オスカー様! はぁっ素敵!」
少し離れたところから、令嬢達の声が聞こえ始め、私は今日は騎士団の練習の公開日だったので、その行き道にこの庭が隣接していたことにしまったなと思った。
そしてそこで、私は現実に引き戻される。
美しい煌びやかな令嬢達が黄色い声援を向けるのがオスカー様である。
私なんか……
そこで、私はハッとした。
自分は今何を考えていた?
顔に熱がこもる。まただ。恥ずかしい。私はいつの間にこんなに自意識過剰な女になっていたのであろうか。
「あ、あれですよね。私が魔力持ちだからって、心配してくれて、こ、婚約って。すみません。オスカー様が私を好きなんてことは絶対にありえないってわかっていますので」
オスカー様は立ち上がると、私の目の前に跪いた。
意味が分からなくて、私は呆然としていると、オスカー様が言った。
「あまり真剣に言うと、君が逃げてしまいそうに感じていたが、一度ちゃんと伝える」
「え?」
「私は一人の女性として、メリル嬢に惹かれている。魔力でも公爵家という地位でもない。仕事を頑張る君に、尊敬できる君に私は惹かれている。婚約を検討してくれたら嬉しい」
「は、え、ええぇぇぇぇ」
私が真っ赤になって動きを止めた時、先ほどまで騒いでいた令嬢達から悲鳴が上がった。
「きゃぁぁぁ」
「ちょっと! 誰か来て!」
「オスカー様がぁぁあ! うっそでしょ! 相手は、相手は! メイフィールド家の出来損ない令嬢よ!」
聞こえてしまっていたのであろう。令嬢達の悲鳴が響き渡ると、近くにいた騎士達が慌てた様子で言った。
「オスカー様の一世一代の告白なので!」
「申し訳ありませんが、観覧は遠慮下さい!」
令嬢達は騎士達に案内されて移動していく。倒れた令嬢も担がれており、私は呆然とそれを見送ると、オスカー様へと視線を向ける。
オスカー様も両手で顔を覆っていた。
「すまない。あれは、うちの騎士達だ」
「あ、いえ、その。えっと」
「恥ずかしい。はぁぁぁ」
両手で顔を覆っているオスカー様を見つめていると、脳裏にもふちゃんが思い浮かぶ。
似ていないのだけれど、オスカー様を見ているともふちゃんを思い出す。
「オスカー様、もふちゃんに似ています」
「え?」
最近もふちゃんに会えていないなと私はふと思う。また会えるだろうか。というか、本当は家に毎日いてほしい。
ずっと一緒にいたい。
「王城はペットって飼ってもいいのでしょうか」
その、明らかに先ほど自分が告げた言葉を忘れているメリルの姿に、オスカーは苦笑を浮かべた。
「自分の敵は自分だな」
「え? どうなさいましたか?」
「いや、なんでもない。私は気が長いのでね。待つさ」
「え?」
オスカーは、自分がもふちゃんだとは婚約してからでなければ打ち明けてはならないと兄より命じられいてた。
王家の秘密であるからこそ仕方がないとは思いながらも内心、早く伝えたくてたまらない。
だからこそ、婚約者になるためにこの後オスカーはメリルに猛アタックを始める。
城では、第二王子が魔法陣射影師の地味な令嬢を溺愛して首ったけであるという噂が、瞬く間に広がったのであった。
おしまい
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作者かのんの書籍情報↓
児童書【魔法使いアルル1〜2】(こちらは羽織かのん)
書籍【心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される1〜2】
【聖女の姉ですが、妹のための特殊魔石や特殊薬草の採取をやめたら、隣国の魔術師様の元で幸せになりました!】
などなど
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