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【完結】書籍化決定 愛されなかった社畜令嬢は、第二王子(もふもふ)に癒され中  作者: かのん


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26話

「おい、あれはなんだ」


「魔法陣を、描いている?」


「一体何が起こっているのだ」


 国王ルードヴィッヒ様の側近たちは慌てた様子で声をあげ、王弟であるオスカーと三つ編みの令嬢が魔法使いアルデヒドと戦う姿に困惑をする。


 しかも、魔法陣とは大量の魔力がなければはつどうしないはずなのに、目の前ではいくつもの魔法陣が展開されている。


「あれは、おいっ! 見ろ! あの娘、目が真っ赤だ」


「まさか、魔物!?」


「ち、違う。あれだ、あれ。一時期話題になっただろう。メイフィールド家の出来損ないだ」


 その言葉にまたざわめきが起こっていく。


「おいおい。メイフィールド家の出来損ないって……できそこないが、赤い瞳で、その上魔力もちだっていうのか?」


「使い方によっては、できそこないじゃないじゃないか」


 誰かがぼそりとそう言った時、ルードヴィッヒ様が机に乗せられていたワイングラスを落とし、皆の注目を集めた。


「少し、静かにしてもらえるか」


「「「「「もうしわけございません」」」」」


 皆が頭を垂れ、すっと後ろへと下がる。


 弟には優しい顔を見せるルードヴィッヒであるが、それは誰にでも向けられるものではない。


 アルベリオン王国では第一王子に帝王学が叩きこまれる。故に、ルードヴィッヒは王たる貫録を持ち、国を治めてきた。


 そして今もまた、冷静に見つめていた。


「オスカーと魔法陣射影師メリル・メイフィールドが魔法使いアルデヒドに応戦。つまり今回の一件、アルデヒドがやはり裏で手を引いていたか。ふむ。オスカーがもしかしたらと言っていたことが的中したか」


 そういうルードヴィッヒは命じる。


「民に気付かれぬように。アルデヒド達の姿は、端に寄らなければ民からは見えぬだろう。宰相、ここにいる貴族の面々は不用意なことはせぬように」


「「「「「はっ」」」」」」


 そう返事をしたのちに、一人、ルードヴィッヒの側近が小声で尋ねる。


「王妃殿下、王子殿下はご無事です。現在、地下の方は複数名を取り逃がしたようですが、追尾中。ほとんどを制圧し、あとはアルデヒド殿だけだそうです」


「そうか。では、あとはオスカーと……あの、魔法陣射影師の力を信じるとしよう」


 ルードヴィッヒはそういうと、立ち上がり、民に向けて手を掲げる。


 その様子に民からは歓声が上がる。


 ルードヴィッヒの位置は国民から良く見える様に作り上げられている。下で戦っている様子が見れるのもここにいる者達だけだろう。


 速く終わらせろよと、ルードヴィッヒはそう弟を信じて思ったのであった。


◇◇◇


 私は、空中に魔法陣を描いていく。手で魔法陣を弾けば魔法陣は回転し、私は足りない部分を書き足していく。


 アルデヒド様が魔力を流し込み、地下の魔法陣が発動して動き出しているのを私は気配で感じ取る。


 魔力があるからこそ、魔力の動きには敏感である。


「オスカー様! アルデヒド様の魔力と繋がっている魔力線を断ち切ります! 衝撃が来るかと思いますが人体には無害ですので!」


 アルデヒド様の魔法を剣で跳ね返し、後ろへと飛びのいたオスカー様は、次々と遅い車法を剣で空へとはじきながらうなずく。


「あぁ! 分かった! やってくれ!」


 アルデヒド様は笑い声をあげる。


「そんなことをしてもいいのか!? っは! 王国を守護する古代魔法陣に魔力を流せる人間がいなくなるぞ! 私ほどの魔力の持ち主はそういないぞ!」


 私はアルデヒド様は優秀な尊敬できる魔法使いだと、噂で聞いていた。


 だけれど、実際はまるで違った。


「自分のことばかりで、他人のことなど何も考えないのですね」


 アルデヒド様の体には、たくさんの魔法陣が彫られている。


 衝撃を防ぐ防御の魔法陣、風で攻撃をする魔法陣、その他にも様々な魔法陣があるけれど、どれも他人を守るためにあるのではなく、自分を守り戦うためのものだ。


 アルデヒド様は城を爆破し、その後自分は傷一つなく生還し、そして王国の新たな王へとすげ代わろうとしているのであろう。


 オスカー様は現在も傷だらけになりながらも魔法使いであるアルデヒド様に引くことなく戦っている。


 国王陛下であるルードヴィッヒ様も、自分の命の危険が迫っている場面だと言うのに、それを民に悟られないように、このような状況なのにもかかわらず笑みを携えて、国民に応えていらっしゃる。


 王の傍に控える貴族達も、背筋を伸ばし笑みを携えて控えている。


 私は、確かに王国の末端の末端だ。だけれども、魔法陣射影師としての仕事に、私は誇りを持っている。


 そして、私には今、一つ目標が出来た。


 オスカー様のようになりたい。


 胸を張って、自分の仕事に誇りを持ち、堂々と振舞えるようになりたい。


 王国の為と言っては漠然とし過ぎているけれど、まずは明日の自分に誇れるように、私は戦う覚悟をもってここにいる。


 傷を負う覚悟もなく、ここにいるのは、アルデヒド様だけだ。


「行きます!」


「了解!」


読んでくださる皆様に感謝です(*'ω'*)

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