24話
「オスカー様。とにかく詠唱を止めなければ!」
私がそう伝えると、オスカー様はうなずいてい言った。
「制圧を始める。メリル嬢は打ち合わせの通りに」
「はい」
オスカー様の指示に従い、他の騎士達は制圧のために動き始める。
古代魔法信者達は、突然現れた騎士達に戸惑い、動きを止める者やしりもちをつく者、慌てふためく者など様々であった。
けれど、そんな者達ばかりではない。
剣の心得のある信者も中に入るようで、俊敏に動き、応戦をする者が現れる。
「メリル嬢! 頼むぞ」
「はい!」
私とオスカー様は制圧部隊とは別に動く。
オスカー様は剣を取り、私達に剣を向けてくる古代魔法信者を薙ぎ倒していく。
私はオスカー様を信じて、地面に描かれている魔法陣に、打消しの魔法陣を張り付け作動させていく。
かなりの数の魔法陣が描かれているが、今日の日の為に、私も寝る間も惜しんで魔法陣を描き上げてきた。
今回の魔法陣には、古代魔法信者達が使っていた条件で作動するという作用を逆に利用させてもらっている。
特殊なやり方にはなるけれど、魔法陣を描くときに、私の魔力を練りこんで置き、これを他の魔法陣に重ねると発動するように条件づけた。
その為、乗せるだけで作動するというすぐれものである。
私は地面に描かれている魔法陣に次々と自作の魔法陣を重ねてそれを打ち消していく。そして中央にあるひときわ大きな魔法陣を目指す。
その時であった。
仮面をつけた一人の古代魔法信者が私の目の前に立った。
「動くな! やめろ!」
その声はロドリゴ様のものであった。
「ロドリゴ様! どいてください!」
私はそう叫び、オスカー様も言った。
「押し通るぞ!」
「ふざけるな! お前、誰のおかげで城で働けていると思っているのだ! 第二王子だなんて顔だけの男に言い寄られたくらいで、勘違いをするな! お前が根暗で不細工な女だってこと自覚しているのか!」
ロドリゴ様がそう言った時、オスカー様はロドリゴ様を押しやろうとしたのだけれど、後ろから数名の古代魔法信者に襲われる。
それを薙ぎ払っている時、ロドリゴ様が私に向かってこぶしを振り上げた。
「お前は俺の役にただ立っていればいいだけだったというのに! ふざけるなよ!」
オスカー様は瞬時に数名の古代魔法信者を薙ぎ払い、ロドリゴ様の振り上げたこぶしをひねり上げた。
「いでぇぇぇぇぇぇ」
悲鳴を上げるロドリゴ様の仮面に、私は魔法陣を張り付ける。次の瞬間、仮面がパキッと音を立てて割れたかと思えば、ロドリゴ様は目を丸くし、そしてロドリゴ様を守ろうとしていた古代魔法信者達は驚いたように声をあげた。
「どどっどどどどういうことだ! 古代魔法信者総長様ではないぞ!」
「誰だ! あの男は!」
「総長様はどこだぁぁぁ!」
古代魔法信者達の慌てたような声が響き渡る。そんな中、私はオスカー様と止まることなく進んでいく。
全ての魔法陣の発動をとにかく止めなければならない。
そう思い、中央にあるひときわ大きな魔法陣の前までくると、私は魔法陣に打消しの魔法陣を乗せた。
「これで……」
止められるとそう思った。しかし、打消しの魔法陣は赤赤と燃え上がると、その場で肺となって消えた。
「これはっ……」
「メリル嬢! どうしたのだ!」
襲い掛かってくる古代魔法信者を制圧するオスカー様に、私は声をあげた。
「中央の魔法陣だけ打ち消せないのです! これが、これが最後なのに!」
「なんだと!?」
その時、他の魔法信者から追いかけまわされているロドリゴ様が悲鳴を上げながら私の元へと走ってきた。
「め、メリル嬢! オスカー殿! 助けてくれ! こいつらがおかしいのだ! さっきまでは俺のことをあんなに妄信していたと言うのに!」
「お前は総長様ではない!」
「我らが総長様はどこだ!」
「総長ってなんだよ! 俺はロドリゴ様だ! あの仮面は、あのお方から頂いたもので、つけていると皆が従ってくれる魔法の仮面だからつけていただけで、総長様って一体誰だよ!」
ロドリゴ様は散々蹴らりたり殴られたりしたのか、顔には痣があり、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で助けを求めてくる。
「たすけてくれぇぇぇ! メリル嬢! 仕事を見てやっただろう!」
私はその姿を見て、眉間にしわを寄せると声をあげた。
「仕事を見てやったとは……積まれたことはたくさんありますが」
「くそが! 助けろよ!」
またこぶしを振り上げるけれど、今度は自分で転んでしまう。
私はまた立ち上がりこちらを睨んできたロドリゴ様の顔に、魔法陣をぺたりと張り付けた。
「が……」
ロドリゴ様の動きが止まる。
「静かにしていてください。今、大変忙しいんです」
仕事を大量に押し付けられたことも、怒鳴られたことも嫌だった。けれど、それについて今は話している場合ではない。
「魔法陣が作動している……けれど、まだ魔力が足りなくて発動が出来ないようです。オスカー様! この古代魔法陣へと魔力を流している人物を止めなければななりません!」
オスカー様は近くにいた古代魔法信者を拳で地面に叩きつけ、それから顔をあげるとうなずいた。
「わかった! 制圧も間もなく完了する!」
辺りを見回してみれば、ほとんどの者達を騎士達は薙ぎ倒し、そして縛り上げ始めている。
私はあっという間だったなと思いながらも、この最後の魔法陣を止めなければ、皆が大変なことになると、慌てて言った。
「魔力を辿ります! オスカー様、ついてきてください!」
「わかった!」
急いでいかないといけない。私は魔力を辿って走るけれど、上まで登るのにも時間がかかる。
するとオスカー様が私を担ぎ上げた。
「急ごうメリル嬢!」
「おおおおお、オスカー様!」
「舌を噛むぞ!」
「ひゃい!」
私を担いでいると言うのに、オスカー様の足は速い。
というか尋常ではないほどにオスカー様の足が速い。
「あれ?」
目の錯覚であろうか。オスカー様の頭に耳のようなものが生えているように見えた。そして、視界に揺れる何かが映る。
尻尾のような何かが見えたような気がしたけれど、あまりの速さに私はめをぎゅっと閉じたのであった。
総長様!?
あの方!?
もうすでに、予想立てている方はいらっしゃるでしょうか(*'ω'*)






