23話
私達は現在、息をひそめて王城地下にて古代魔法信者達の集まりを包囲しつつあった。
祭壇を囲んで祈りを捧げる古代魔法信者はおどろおどろしい仮面をつけており、その中央にいる人がロドリゴ様であるという事実を知った時は、衝撃を受けた。
今回の事件に関してオスカー様からロドリゴ様が怪しいと言う話を聞いたのは数日前のことだ。
オスカー様曰く、ロドリゴ様が深夜に仕事をしているという事実から、私達の部署でそのように深夜も働かなければならない案件が来るのかという疑問があったのだという。
私自身は、働き始めてから今までがずっとそれだったので疑問にも思わなかったのだけれど、オスカー様にはおかしいと言われた。
「本来、深夜も仕事がある部署ならば、日勤と夜勤とに分かれている物なのだ。だからこそ調べてみたら、怪しい所が出てきた」
オスカー様はいつの間にそのようなことまで調べていたのだろうかと、私は驚いてしまった。
自分が知らないところでもオスカー様は仕事を進めていた。
いつの時間にと思い尋ねると、優秀な部下がいるので仕事が割り振りやすいのだとさわやかな笑顔で返されて、仕事が出来る人というのはこういう人のことなのだろうなと思った。
「ロドリゴ殿は君ばかりを指定して呼び出していたようだ。そこも怪しいところの一つだたった。また、君の管理している魔法陣射影室にも勝手に出入りしているところが目撃されている」
「すみません。私の管理不足でした」
「いや、仕方あるまい。時間として調べてみれば、君はどれだけ働いているのか。そんな状況で全てをしっかり管理しろといわれても出来ないだろう。だが、ある意味君は有能なのだろうな」
「え?」
「睡眠時間も削って仕事をしているのに、最終的にミスはなく、逆にすごい」
「あ、いえ」
鍛え上げられた社畜根性のたまものですなんてことは言わない。というかそんなものに価値はない。
「ロドリゴ殿は、古代魔法信者らしい。とにかく、もっと詳しく調査する必要がある」
「はい」
そして、ロドリゴ様の瞳孔を調べ上げた結果、私達は現在地下の古代魔法信者たちの集まりを包囲している。
古代魔法信者の数は百名ほどのようで、皆が祭壇お前で膝をつき祈りを捧げている。
あまりにも不気味なその姿に、私は息を呑む。
暗い中に、古代魔法信者達の声が響いて聞こえてくる。
「この国は間違えた。我が王国の祖は獣と剣と古代魔法などと言われているが、古代魔法の魔法使いこそがこの国の王になるべきだったのだ!」
「獣が王となった」
「それが間違いだ」
「獣の血筋が王を名乗る。なんと汚らわしいことか!」
「そうだ。獣の血が王家などとおかしいことだ!」
「魔法使いこそが、本来の正当な王だったのだ!」
声が上がる。その声は恐ろしい程に不気味であり、ダンダンダンと足踏みが始まり、それが響き渡り始める。
「獣の血を根絶する時が来た! 古代魔法使いこそこの国の王なり!」
響き渡る足音に、私はぞっとしていると、オスカー様が小声で言った。
「大丈夫か?」
「は、はい」
「無理はせずに」
「はい」
緊張で手の色が変わる程ぎゅっとこぶしを強く握っていたのだけれど、オスカー様に声をかけられて、私はゆっくりと静かに深呼吸をした。
怖いけれど、ここで食い止めなければ王城が吹き飛ぶ危険性がある。
現在、古代魔法信者達を包囲してはいるが、ここに何が仕掛けられているか分からない。
だからこそ今回は魔法使いが数名援護に来てくれている。王国きっての魔法使いであるアルデヒド様は現在建国祭の祭壇にて魔法陣へと魔力を注ぐための準備をしている。
今日は大国にとってとても大事な日だからこそ、その場から逃げるわけにはいかない。
現国王陛下であるオスカー様の兄、ルードヴィッヒ様は逃げることを皆に勧められたのだけれど、建国祭の日に王が姿を現さないわけにはいかないと断られたらしい。
その代わり、ルードヴィッヒ様の妻である王妃様とその息子である第一王子は避難している。
「国王陛下は、避難しなくて本当に良かったのでしょうか」
私がそう呟くと、オスカー様は苦笑を浮かべた。
「我が兄ながら肝が据わっている。話をした時に、笑いながらお前が止めてくれるだろう。期待しているぞと肩を叩かれた。あぁ言われては、頑張るほかないだろう?」
声を潜めてそう言われ、私はすごいなと思った。
そしてだからこそ、頑張らなければと、いや頑張るのではなく絶対に止めようとそう思った。
私は気合を入れると、祭壇に掲げられている巨大な魔法陣を見て、それから部屋に描かれている魔法陣を、オスカー様と移動しながら見ていく。
かなりの数の魔法陣があり、私はそれを見つめながら微かな違和感を覚える。
「なんだろう……」
分からない。けれど何か違和感があった。
その時、古代魔法信者達が、足を踏み鳴らしながら魔法を詠唱するような言葉を発し始めた。
魔法は詠唱する必要があるが、魔力を有していなければ使うことはできない。つまり、いくら詠唱しようとも魔力がなければ、ただの言葉と変わらない。
けれどそこで私は気が付いた。
「これは……」
魔力が、どこからか流れている。明らかにこれは普通の魔法詠唱ではない。
「オスカー様、魔力が流れてきています! これはあそこにいる古代魔法信者からではありありません!」
「どういうことだ?」
心臓が煩い。
とにかくあの詠唱をやめさせなければ危険だと、私の本能がそう叫んでいた。
魔力の続く先は!?
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