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【完結】書籍化決定 愛されなかった社畜令嬢は、第二王子(もふもふ)に癒され中  作者: かのん


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18話

 街中を歩いていくのだけれど、女性達がオスカー様が通ると振り返る。それはそうだろう。


 騎士団の制服に身を包んだオスカー様は凛々しくたくましく、かっこいい。


 そしてシャツにズボンの一見どこにでもいそうな服装を着た時、オスカー様の色気が駄々洩れ始めるということに私は気が付いた。


 騎士団の制服はその体の輪郭を隠していたのだ。だけれどシャツだと、首筋から鎖骨にかけてや、体いしっかりと筋肉がついていて逞しいことが、よくわかるのだ。


 私の手を握るオスカー様の手は大きくて、ごつごつとしていて、私は、自分の手汗が酷いことになっていることに気がついてしまった。


 汗を拭きたい。


 手汗がばれたくない。


 どうしたらいいのだろうかと思いながら、私は店先にある魔法具の雑貨屋を見つけてぱっと手を離して指をさした。


「あ、あのお店、少し見ていきませんか!?」


「ん? あぁ。行こうか」


 その瞬間に私はさっとハンカチで気づかれないように汗をぬぐう。それから、手を握るのは危険だと判断し、手を差し出されたのだけれどこれを取ったらまた同じことを繰り返すと思い、悩み、そして思いつく。


 エスコートとは、手をつなぐだけではない。


 私は勇気を振り絞って、オスカー様腕を取り、腕組をする形をとった。


 舞踏会などでのエスコートに近いのだけれど、先ほどよりも密着してドキドキとする。


 どうしよう。気持ち悪いとか思われていたらどうしよう。


 私はオスカー様の顔をみたらもう耐えられないと思い、その後の魔法具雑貨の店でも、もう何を話したのかさえ覚えていない。


 ただ、その後オスカー様が口を開いた。


「私が洋服店に寄りたいとお願いをしたから、少し時間が押したな。よかったら、昼食を食べてから神殿の方にはいかないか?」


 そう提案され、確かに神殿に着くころにはお昼の時間を過ぎてしまうなと思い、私はうなずいた。


「そうですね。分かりました」


 オスカー様はほっとしたようにうなずくと、言った。


「良かった。先ほどから心ここにあらずというような感じだったので少し、その心配した」


「え? い、いえ、違うんです! その緊張ちゃって」


「緊張……ふ……実は私も少し緊張している」


「はぇ?」


 私は間の抜けた声を出す。オスカー様は笑い、私の手を引いて昼食を食べるための店まで案内をしてくれた。


 それは遠くない場所であり、とても可愛らしい一件のお店であった。


 窓際には花が飾られており、店内に入ると、ベルの音がカランコロンと鳴った。


 店内は、おしゃれな雰囲気で、落ち着いた時間が流れいている。


 私達は席に座り、オスカー様がメニューを私に差し出してくれる。


「肉と魚であればどちらが好みだろうか」


 その言葉に、私は少し考えて答えた。


「私は断然、肉派なんです。魚も好きなのですが、お肉の方がこう、力が湧く感じがします」


 正直にそう答えてから、ふと、普通の女の子であればここはもう少しおしとやかに答えるべきなのだろうかなんて思う。


 けれど、そこで普通の女の子なんて想像している自分が気持ち悪くなって、頭を振ると自分に言い聞かせる。


 オスカー様は天上の人。私には手が届かない。私なんてその辺の石ころと同じ。


 何度も何度も心の中で繰り返し、私は自分の立場を再度確認する。


「よし、私は石ころ」


「え? 石ころ?」


「あ、いえ、なんでもないです」


 私は慌ててそう答えると、オスカー様はメニューを指さした。


「私も肉が好きなんだ。同じく魚も好きだが、君と一緒で肉の方が何だかやる気になる。私のおすすめはこれだ」


 指さされたメニューはがっつりと肉メインのものであり、私はうなずいた。


「おすすめありがとうございます。それにします」


 オスカー様は笑顔でうなずくと、店員に声をかけて注文を済ませてくれた。一つ一つの書さがどことなくやはり丁寧であるから、育ちの良さがうかがえる。


 自分も育ちはいいはずなのだけれど、どこへ行っても、何をしていても、幼い頃の記憶が蘇ってしまい、人と関わったり注文一つするのにだっておどおどとしてしまう。


 私は小さな息をつく。


「どうかしたのか?」


「いえ……オスカー様のように、堂々としていたいのですが、私、あまり社交的ではないので……」


 そう伝えると、オスカー様は静かに呟く。


「社交的、か」


「……はい」


 自分には持っていないものを見ると、すごく眩しく見える。


 私も、もっと見た目が両親に似ていたら、愛されて育っていたら、違ったのだろうか。


 もっと公爵令嬢らしく……


「私は、元来そこまで社交的というわけではないんだ」


「え?」


「人前で堂々とすることは幼い頃からの訓練で身についたものだし、剣はただ好きで始めたけれど、その中で人より勝るように訓練を受けてきた」


「そうなのですか?」


「あぁ。訓練を続けていくうちに人と共に共闘するということも学び、また仕事柄様街の人や、様々な部署と関わることも多くてな……私が社交的に見えているのは、そうしたことが多いと思う」


「へぇ」


 私はそう答えながら、オスカー様の話を聞く。


「ある程度人とのかかわりを円滑にするという意味では社交性というのは大事だろうが、そればかりが大事というわけでもないしな。まぁ別段今そこまで困難な状況でないならば問題ではないのではないだろうか」


 その言葉に、私はなるほどなとうなずく。


 今までそのように考えたことはなかった。


人と同じように社交的でありたいと願うけれどそう出来な自分が好きではなかった。


 だから社交的な人を見れば眩しく羨ましく見えた。


 けれどオスカー様の言ったように思い返してみれば、ある程度は自分だって意思疎通は出来る。社交的ではないからと言って困るほどではない。


「なる、ほど……」


 私はそうした考え方もあるのだと、思いながら、今までこうした考えの人とは出会ったことがなかったからこそ、不思議な感じがしたのであった。


ブクマや評価も励ましになりますのでよろしくお願いいたします!(/ω\)

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