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攻略!不殺の悪魔城!(その肆!)

「お待ちしておりました。

これにて、第三の試練[反逆の時]クリアとなります。

……あまり、楽しそうではありませんね。ですが、仲間割れしているわけではない。つまりませんね、せっかくマスターがサプライズをしてくださいましたのに。」


「残念だが俺等の絆はそんなやわじゃねぇんだよ。

それに、サプライズだと?ふざけるのもいい加減にしろよ…!

人の心を弄んでそんなに楽しいか?ああ、いい。テメェの返答なんて聞きたくねぇからな。

それよりとっとと次の試練の説明をしてくれや、そんでさっさとダンジョンマスターをぶっ殺させてくれや」


「ふふふっ。そうですか?まぁ先程何やら話し合っていたみたいですからね。くふふっ。でも生首を見た時の皆様の表情は、なかなか滑稽でしたね。んふふ」


Gann!!

愉快に嘲笑う悪魔に剣を振るったがすり抜けた。

そして悪魔は何でも無いように説明を始める。


「第四の試練[安寧は停滞とともに]の説明をさせていただきます。

といっても試練内容は簡単で、このダンジョンボスの部屋に入ることができればクリアとなります。

準備ができたらお声掛けください」


入るだけだと?となると入る前に何らかのアクションがあるはず。


「全員、全警戒態勢をとれ」


俺は[身体能力強化]と[感覚強化]とレジスト魔力の増加をし、剣を抜く。

皆もそれぞれ準備をする。


数秒で全員が準備を終る。


「第四の試練、はじめてくれ。」

「かしこまりました。

では、第四の試練[安寧は停滞とともに]開始です!」


悪魔がそう言うと、扉が勢いよく開かれ強い光が俺等を襲った。




☆とこぞの悪魔



 おー俺の真実と言うなのプレゼントは喜んでくれたみたいだ。

 だけど期待していた反応とは違うなぁ。もっとこう、『お前が私の家族を殺したのかっ!!』みたいなのを観たかったんだが、残念。思ったより人間の結束は強かったなぁ。

 でもエルフは確実に動揺している。さて、次の試練は心の弱さに付け込むものだ。そんな精神状況で突破できるかな?


 もう少しでミュリィの所に着くな…暇だし、夢の中のダンジョンボスの自我を消して俺が入ろうかな。

 そうだな!そうしよう!ついでにミュリィの自我も消して俺が操ろう!

 そう思い、目を瞑った。


········



 目を開けると、夢の中のボス部屋"玉座の間"にいた。

 部屋は派手に戦闘ができるよう、広くつくった。

 玉座は現実とは違い豪華なもので、後ろのステンドグラスから神々しい光が降り注いでいる。

 そして俺は今、夢の中のボスとしてしっかり角と翼が生え身長も2㍍超えと、悪魔らしい悪魔になっている。現実世界だと、人と変わらん見た目だからな、俺。


 少しして、冒険者達も到着したみたいだ。

 俺はミュリィの体を操って言葉を発する。何気これが初の会話だから少しワクワクしている。


「お待ちしておりました。

これにて、第三の試練[反逆の時]クリアとなります。

……あまり、楽しそうではありませんね。ですが、仲間割れしているわけではない。つまりませんね、せっかくマスターがサプライズをしてくださいましたのに。」


 挑発をしてみる。

 正直ダンジョンの紹介以外喋ることがないので、捻くれた性格故かってに口が動いたと言っても過言。ごめんなさい、魔が差してしまいました。尚、後悔はない。


「残念だが俺等の絆はそんなやわじゃねぇんだよ。

それに、サプライズだと?ふざけるのもいい加減にしろよ…!

人の心を弄んでそんなに楽しいか?ああ、いい。テメェの返答なんて聞きたくねぇからな。

それよりとっとと次の試練の説明をしてくれや、そんでさっさとダンジョンマスターをぶっ殺させてくれや」


 おうおう言うねぇ。さっきまでお宅のエルフさんそっちの魔人族に殺気飛ばしてたじゃないですか。

 それに、さっきの話し合いで解決したと本気で思ってんのか?

……まぁ、どうでもいいか、そこは。

 にしても結構怒ってるな。…もうひと押しいってみるか?


「ふふふっ。そうですか?まぁ先程何やら話し合っていたみたいですからね。くふふっ。でも生首を見た時の皆様の表情は、なかなか滑稽でしたね。んふふ」


Gann!!


ヒュー怖い。いきなり斬りつけてきやがったよこいつ。

無理もないか、悪いの全面的に俺なんだろうし。


 もうちょいイジッてやりたいけど、流石にやりすぎになっちゃうかな?どうなんだろ…

 人の価値観とか学んだはずなんだけど…所詮何のつながりもない人のモノだから、あんま意味なかったのかな?

 いや違うか、ただ単に俺の性格が残念なことになってて、善悪の判断がうまくできてないだけか…。


 でも最近じゃ、優斗の影響すら出ることがすくなくなったから、俺の自我が完全に近づいてんのかとも思うけど。

 あぁそうだ、完全に自我が出来上がる前に作り手の存在を完全に消しとかないと。じゃなきゃ………いや、今はいいか。


「では第四の試練[安寧は停滞とともに]の説明をさせていただきます。

といっても試練内容は簡単で、このダンジョンボスの部屋に入ることができればクリアとなります。

準備ができたらお声掛けください」


[安寧は停滞とともに]は夢の中で対象者が思う理想の生活を永遠と暮らす試練。

 勿論普通の夢と同じで、その生活が当たり前と思い込みながらな。そして、なんの疑いも持たなければ現実の事を思い出すこともなく永遠に夢を見ることになる。

 抜け出すためには"現実を生きる"意志と覚悟が必要だ。

 この世界の[人]には、精神的な安寧を手放す勇気がはたして備わっているかな?


「全員、全警戒態勢をとれ」


 全員真面目な顔しちゃって。

 警戒なんてしても無駄なのになぁ。


「第四の試練、はじめてくれ。」

「かしこまりました。

それでは、第四の試練[安寧は停滞とともに]開始です!」


 そう言いうと、勝手に扉が勢いよく開く。と、同時に冒険者達は夢の中で眠りに落ちた。


 …誰も起きなかったらどうしよう。

 強制的に起こせるけど、それじゃぁ試練の意味無いしな。

 最悪試練失敗ってことで、適当な時間になったら魔法を解いてダンジョンの外に放り投げるか。

 それじゃぁ、いつまで待とうかな。

 夢の中は時間が凄く早く過ぎている、1分もすれば夢の中では1~2年ほど過ぎるはず…。

 んー……タイムリミットは10分にしよう。10分たったら扉をしめよう。


……もうそろ1分だが…おっと、流石パーティーリーダーと言いたいところだが…まさか魔人族…いや、マルトが最初におきるとはな。


「………。」


 何かを呟いたマルトは仲間を揺さぶったりしたあと、諦めて部屋に入り俺のもとまで来た。今まで頭を覆っていたフードはもうかぶっていない。


 この姿で会話するときは喋り方も変えるか…でもこの口調、前に優斗の奴に似合わねぇって笑われたんだよな……はぁ、あいつが居たら笑い転げるんだろうな…。


「……お前がダンジョンボスか?」

「如何にも、(われ)が[不殺の悪魔城]のダンジョンボスだ。

そして、おめでとう。貴様は第四の試練をクリアしたのだ。

次は第5の試練[英雄と至る道]。クリア条件はこの我を倒すことだ。

このまま貴様と殺し合ってもいいが、その前に一つ聞きたい。

愚かなる魔人族よ、貴様は何故安寧を捨て再び無情たる現世に帰ってきたのだ?」


 正直、俺がこの魔法にハマったら一生抜け出せないだろう。だが、マルトは抜け出してみせた。俺はこの試練をこえた者が何を思うのかが知りたい。

 後で脳を調べればわからんこともないが、せっかく人と対峙しているのだから直接言葉で聞きたかった。


マルトは、少し考えたあとに言葉を発する。

「……僕は…僕がしたことは消えない、だから償いたい。僕だけがいい思いをするのは、僕自身が許せない。この先が苦に満ちた未来であろうと、僕はこの道を進みたい。」


 彼の葵眼には、確固たる決意が宿っていた。

 

「そうか…確かに貴様には覚悟が宿っているようだ。だが、貴様一人でこの我を倒せるか?覚悟があろうが実力が伴わねば、先に待つのは死だぞ?」

「…僕一人で生き残っても意味がない。貴方を倒さないとみんなが起きないのなら、僕は一人でも貴方を倒す。」

「良くぞ息巻いた!ならば精々足掻いて見せよ!!」


[水魔法:ウォーターレーザー]


 立ち上がり、決戦の合図として魔法をぶちこむ。が、どうやら魔法障壁で防がれたようだ。


 マルトが周囲の魔素を一瞬で熱に変換し、部屋の温度がありえないほど上昇した。

 結合エネルギーを無理やり作り出して熱を作っているのか、部屋中が光り輝きまともに前を見ることもできない。

 この体は脆いため魔力を纏い熱を防ぐ。悪魔は息をしなくても生きていける故呼吸の方は大丈夫。視界は魔力·実体感知で補う。

 魔力の消費が激しすぎるな。


 にしても人の身でこの練度か!こいつ思ったより強いな!


 しかも、マルトの攻撃はそれだけでは終わらない。30を超える数の[ロックバレット]や推定1500度を超える温度を持つ半径1㍍程の巨大な[ファイアボール]を顕現させ、それらを避けようとすれば奴の頭上に待機している[ライトニングスピア]や[ファイアランス]で迎撃してくるだろう。


 流石にこの体でファイアボールは喰らえないな。

 自身に身体強化をかけながらアレを避ける、避けたところを狙い飛んできたロックバレットを魔力で作り出した片手剣で撃ち落としながら前へ進む。

 眼前にライトニングスピアが迫る。剣で弾こうにもこの後ろにはファイアランスが重なるようにやってきているのは、感知で知っている。

 俺は体を逸して2つの魔法を避ける。そのときにロックバレットを数発喰らったが必要経費というやつだ。


 さて、お前の初撃は全てしのいだぞ!次手のために周りの熱魔力を集めているようだが、遅い!

 一瞬だけ右足を細胞レベルで強化し強く地を踏む。一気にマルトに接近し剣を下ろす。殺すつもりで攻撃したが、剣は鼻先をかすめるだけで後ろに避けられた。


 魔人族は身体能力も高いんだったか?厄介だな、マルトもそうだがこの体、保有魔力が現実の俺と比にならんほど少ねぇ、夢の中で位派手な魔法をたくさん打ちたかっだが、扱いが下手ゆえ馬鹿みたいに魔力を食うので断念。なのでこれからも接近戦で戦わせてもらう。


 マルトと俺の付近に高温の魔力が集中する。

 更に温度が上がっていく空間から出ようにも先程マルトが放ったファイアボールが分裂し10ほどの数になり俺を焼かんと待機していやがる。下手に動いたら焼かれるかもな。

 ならこのまま切り伏せさせてもらう!

 もう一度右足を超強化(細胞レベルで強化)し、強く地をふもうとした瞬間。俺の体が後方へ"落下"していく。


「なっ……!」思わず声が漏れた。

 これは確実に重力操作だ!それはわかるが重力をいじれるほどの魔力が感知できなかったぞ!

 あぁクソ!ファイアボールが迫ってやがる。魔力は温存したかったが使わねぇーとこっちがやられる!

 

 原子と魔力の動きを止める働きをする魔力を周囲に放出して、温度を一気に下げ更にファイアボールと重力操作魔力を先程放った魔力の性質を変化させてかき消す。

 重力がもとに戻り床に着地する。と同時にマルトが[クリスタルランス]を大量に飛ばしてくる。得意な[火魔力]より、魔力を消されにくい[地魔力]を選んだか!


 この体じゃ奴の残り保有魔力も測れないが随分使ったはず、とはいえ俺も魔力の消耗が激しいのでクリスタルランスをもろに受けて人体再生に魔力を使うのは避けたい。剣で弾くとしても剣の耐久力がなくなり、直すには魔力が必要だが、体で受けるよりはましか。


 一つ、二つと、迫りくるクリスタルランスを避けたり剣で弾いたりしてマルトに接近する。

 マルトも俺との距離を取りつつ魔法を放ってくるため、中々距離が縮まない。


『うぜぇ!逃げんなカスが!』と言いたいところだが。


「逃げ回って魔法を放ってくるだけじゃ我を倒すことはできんぞ!」

 と、言う。

 実際先に魔力切れを起こすのはマルトのほうだろうs__っ!!

 コイツ、放ってくるクリスタルランスの威力をいきなり上げやがった。そのせいでクリスタルランスを弾こうとした剣が逆に弾かれる。

 動きを読まれたか!


 すかさず大量の魔法を畳み掛けてきやがる。

 が、足りない。確かに人を殺すのならばそれで十分すぎるほどだ。だがしかし腐ってもこの体は悪魔のソレ!それも第一の試練で死んだあいつとは違って生命力と再生力は普通の悪魔並み!

 種族の特性のゴリ押しになり、少々ずるい気はするが被弾覚悟で突っ込まさせておらう!

 足の強化率をあげ、急速に接近する。

 頭や足を狙う魔法は弾くが、防いでいない胴が魔法によって穴を開けられる。吹き飛ばされそうになるが、持ちこたえマルトのもとに進む。

 

 二秒もあればマルト目の前まで接近できた。腕を超強化しつつ左上から右下へ斜めに振り下ろす。

 マルトの魔法障壁を破壊し、マルトの肩を剣が斬りつけ勝ちを確信する。


『仲間と共に戦っていればまた違ったかもな』そんな事を思う………いや待て、これは明らかな油断だ!さすがの俺もこんな時にここまでの油断はしねぇぞ!考えられるとすれば……!!


 マルトの奥にある扉の方を向くと、リリィとゴトが立っており、リリィの矢が俺の眉間の近くまで迫っていた。

 なんとか首を動かし躱したが同時にマルトも逃げようとする。だが、タダでは逃さない!傷口から毒の役割をする高密度の魔力を混入させる。

 しばらくは毒の対処で動けないだろうが、殺せなかったな。


 いや、それよりも何故気づけなかった?魔力の消費は抑えていたがちゃんと感知はしていたはず。

…いや、重力操作の魔力まで感知偽装して見せたのだ、人への感知偽装など朝飯前というやつか。

 そして、俺の油断を誘ったのはゴトか、確かに脳を覗いたときにそんな[スキル]をもっていたな。


 そんでもって、俺も久しぶりの実戦といえど格下相手と油断していたふしがあったか。これを実戦といっていいのかわからんが。

 この状態で三人を同時に相手すんのはきついな。身体を再生させて、"この体の切り札"を使う準備をしたい。


「まさか貴様らまで起きているとはな、死んだ同胞との生活はもういいのか?」


 時間稼ぎの意味もあるが、元々気になっていたことだ。

 多分リリィはあのエルフの村で楽しく生活していただろうに、まさかこんなにも早く起きるとは思っていなかった。

 数十年もの間切望していた生活を何故手放した?


「確かに、手放し難い夢でした。このまま一生皆と笑って暮らしたいと、確かに思いました。ですが、私には幸せすぎたのです。日々が過ぎれば過ぎるほどあの幸せに違和感を覚えて、私はある日とある事をきっかけに復讐を思い出しました。虚構とわかってあのまま暮らしていてもきっと耐えられなくなる日が来る。

だから"夢を諦めました"。

死んだ者が戻ってくることはなく、それに囚われていたままでは前に進むことはできない。貴方のおかげでようやく真に前を向けそうです。

もう手に入ることのない幸せな夢をみることができました。

ですから、お礼に私の手であの世に送って差し上げます。」


 どこか晴れやかで、それでいて儚げな声が部屋に凛と響く。それだけでなく、二人の眼にも赤く燃える決意の色が見えた。

 まさか、踏み台にされるとは全く想像していなかった。あの試練はそうやすやすと突破できるものじゃないはずなんだけどなぁ。

 …思ったより[人]っていうのは、強い生き物なのかもな。

 再生はできたが、せっかくだしゴトにも聞いてみるか。


「ふむ、ではそっちの貴様は何故あの世界から抜け出した?」

「…俺の子に助けてもらったよ。

どうやらお前の魔法じゃ、まだ生まれていない者の言動は俺を怒らせないようなものになるらしい。でも、子供っていうのは気難しくて、自由奔放で……素直なのもいいが、我儘一つないのは寂しいもんなんだよ。

そこから違和感を覚え始め、俺もある事をきっかけに全て思い出したよ、現実に俺を待っている人たちがいることをな。

それに、俺の夢は実現可能なものだ。悪いが俺は、夢でなく現実で幸せを掴ませてもらう。」


 いや、赤子の設定も練ったはずだし"きっかけ"なんてものも気になる。何にせよ後で修整しないとな…。


「そうか、だが我の前に立つということは、その未来さえも潰えることと同義だぞ?」

「僕一人に苦戦していた貴方に、僕のパーティメンバーは倒せませんよ。」


 こいつ良く喋るようになったな。ほれ見ろ、リリィが薄い緑色の目をこれでもかと見開いているぞ。


「……それはそれとして、貴方かここのダンジョンマスターは私達の過去を知っているのですか?」

「いや、記憶を覗いただけだ。この我が貴様の過去なんざ知るわけ無いだろう」

「そうですか…ではそろそろ殺させてもらいます」


 そういって弓を構える、阻止したいがリリィの前にはゴトがいる。黎明戦の悪魔は、生命力は弱いが力は相当のものだったはず、あれを凌ぐ奴の守りをこの体で突破できるのか?

 自分で設定したこの体、思ったより弱かったんだよなぁ。

……仕方がない、切り札を使うか_


Paaaaann!!!

快音と共に矢が俺の頭を破壊する。

衝撃で俺は後ろに吹っ飛ばされる。


「流石にあっけなさすぎる。警戒しろよ」

「わかっています」


数秒の静寂、


「クハハハッ!確かに警戒はしたほうが良いが、今の間に我を殺さなかったのは悪手だったな!」

「ちっ、やはり生きていたか!リリィ、マルト!援護してくれ!俺が前線でヤツを抑える!」

「わかりました」「敵に毒の様なものを入れられたので、しばらく戦えません。」

「わかった」


 ゴトが斜めに切り上げてくる。その目には少々動揺と恐れが見える。

 俺は剣を素手で受け止め、握り潰した。


「なっっ!!」

「クククッ。大抵の悪魔には姿が2つあってな、人相手に本来の姿を晒すのは恥になるが、このままでは殺られるのはわれの方ゆえな。少々本気を出させてもらう。」


 今の俺の体は全長が2,5㍍程になり、腕は4本生え、胸の中心には、大きな漆黒の宝玉が黒く光を発している。


 4本の腕を細胞レベルで強化し、ゴトを連打で殺す。逃げようとするが魔力障壁で退路をたつと同時にリリィの矢も防ぐ。

 この状態だと、魔力の質も良くなるようにしてあるため、リリィの矢も耐えれるだろう。


「死ねぇぇぇっっ!!!」


PAGOOONN!!PAGOOONN!!PAGOOONN!!PAGOOONN!!

 何度も何度も殴りつける。

 盾で防御しているがいつまで持つかな!?

 

「オラオラオラァ!!盾の耐久ももう少ないようだな!そのままそこで死を待つのか!?」


PAGOOONN!!PAGOOONN!!PAGOOONN!!PAGOOONN!!


 最早盾と鎧は原型をとどめていない。

PARIIINN!という音と共に矢が数本飛んてくる。

おっと危ない。


「障壁は破られたが、遅かったな!エルフ!貴様の力量不足でまた仲間が死んだぞ!」


 リリィが更に矢を放つが、俺ではなくゴトにあたった。

 何故ゴトに…あっ!矢に糸が!

 気づいたときにはもう遅く、ゴトがリリィに釣られた。

 まさか、まだ死んでいないのか?

 ……なるほど、セルラン。お前も起きていたのか。

 どうやらこの体は、索敵が苦手らしい。まさかまた気づけないとは。


「大丈夫です!生きています!」

「そうですか……でも、どちらにせよこの対面は中々…」

「あともう少しで動けます…」


 ふむ、今畳み掛けた方が楽そうだが……。

 恐らくセルランの夢は死んだ親友との生活。確かに起きるまでに時間はかかったが、ちゃんと抜け出してみせた。

 何故か聞きたいな。


「そこのメガネ、貴様は何故現実へ戻ってきた?夢の世界はさぞ気持ちよかっただろう?」

「ええ!確かに素晴らしいものでした!ですが、私の友は言いました!『俺が死んでも前を見て生きろ!』とね!

今思えばあの言葉は、貴方の夢が見せたものではないのかもしれませんね」


………ありえない。対象者が夢から覚めるきっかけになるような事は起きるはずがない。リリィとゴトも"きっかけ"があったと言っていたが、まさか………いや、アレはタダの固有魔力の残滓に過ぎないはず…となるとこの星の神はもしかしたら…調べたいがそれをキッカケに星から追い出されるかもしれないからな…


「神々が私達の勝利を願っているのかもしれませんね!」


 あ、うっぜぇー。やっぱ神とかクソですわ。


「図に乗るなよ人間風情が!貴様らにいいことを教えてやろう!後、2分ほどであの男は夢に呑まれ一生目覚め付ことがなくなる!それまでに俺を殺さないとな!さぁどうする!」


 これで焦ってくれたら楽なんだけどなぁ。


「かんたんなことです。それまでにあなたを殺せばいい!」


 啖呵を切ったリリィが俺に無数の矢を飛ばしてくる。左右の下の手に盾を持ち、上の手には剣を持つ。


 出し惜しみはなしだ、一瞬でかたをつける!全身超強化!魔力障壁も多重展開!


 リリィ矢は盾で防ぎ、回復したマルトの魔法は先程も使った魔力を霧散させること(分解)のできる魔力(魔力)のこもった剣で切り伏せる。

 リリィを切ろうとしたが、なんとセルランが前に出てメイスで防いだ。

「仲間に手出しはさせませんよ!」

 ゴトの生命活動をもう安定させたのか?つかコイツ、力つぇぇ!

 自分に何重にも聖魔法をかけていやがるな!


「っっっと!」

 マルトが作り出した雷が襲ったが、バックステップでそれを避ける。リリィが矢で追撃してくるが剣で切り、マルトのクリスタルランスも盾で防ぐ。先に厄介なマルトから狙うか。


「おらぁぁ!」


 リリィの矢をさっき作った障壁で守り、

 マルトに一瞬で接近し、右腕の剣で上から斬りつける。バックステップで避けられたか、だが俺の腕は4本!盾を捨てつつ左腕の剣で横薙に振るう、魔力障壁を割ったがよけられた。空いた手に更に剣を持たせ計4本の剣で更に斬りかかる。


 右上の剣で上段から切り、左右下の腕で同時に横薙に振るうが、身をそらし、跳ねるように後ろに跳び躱される。

 そこから即座にマルトの方へ踏み込みながら、振り下ろした剣で切り上げつつ左上の剣をマルトに投げる。バックステップで躱され、投げた剣は魔力障壁で防がれたがマルトは一瞬硬直した、そこに踏み込み左右下の剣で☓字に斬りつける。

 地魔法で作り出したであろう結晶の剣で防ごうとするが、その程度で防げはしない…筈だったが、剣と剣がぶつかる瞬間、俺の体が浮く。

 重力を反転させて衝撃をおさえたか!

 

 即座に魔力で俺と床を縫い付けこれ以上の浮上を防ぎつつ、空いた左手に槍を作り出し投げつける。

 体を反らし避けようとするがそれを魔力障壁で邪魔をする。


 槍を水晶の剣で防ごうとするが、剣を砕きなお進みマルトの右肩を貫く。体制を崩し反射的に右足を動かすマルトだが、それでは重力反転の影響がなくなった俺の追撃は避けられない。

 リリィもまだ障壁をすべて割れていない。動いて、障壁のない場所から射抜こうにも障壁も移動さるから意味がない。

 なんにせよ、これで二人目だ。

 一歩踏み込むと同時に剣を俺の頭上まであげる。

 振り下ろす瞬間、


「障壁!」

と、マルトが叫んだ。


 障壁?障壁でどうにかなると_いや違う!この掛け声に、俺とマルトの間にいつの間にか存在する高濃度の魔力!砕かれたにも関わらず、消滅しない剣の破片! まさか……


DDGGAAAAAAAAANNNNN!!!


「アガッッ!グッカハッッ!」

 爆音と共に吹き飛ばされる。まさか、自爆覚悟で爆発を顕現させて攻撃してくるとはな。

 俺の体に剣の破片が無数に突き刺さり、マルトを切り殺そうと前に出していた腕は吹っ飛んでどっかにいった。

 マルトも死にていだが、まさかマルト一人にここまでやられるとは……。


 呆けている暇はなく、リリィが俺に矢を放ってくる。魔力障壁で防いだが、これですべての障壁がわられた。

 もう一度張り直したいが……


「よぉ…どうやら遅すぎたようだな…。だがギリ間に合ったか?」


 ダンまで起きてきた、まさか全員に突破されるとは…二人くらい第四の試練で脱落させるつもりだったんだが。

 これでは障壁に魔力を割くと近接戦でやられかねないし、接近戦をするにしても、マルトの奴が爆発と共に俺に毒を入れたようで右腕が治らない。…きついな。


「大遅刻です。リーダー、指示を。」

「セルランはゴトとマルトを連れて転移結晶で撤退、悪いが美味しいところは俺がいただかせてもらう。」

「了解!そこまで言ったんです!ちゃんと倒してくださいよ!」

「ああ、二人を頼んだ。」

「ククッ、回収させると思うか?」

「ああ、俺が相手になるからな。」

「リーダー、油断しないでください。」

「わかってる」


GAGIIIN!!

 俺とダンの剣がぶつかる。腕は一本なくなったが身体強化は万全、にも関わらず俺が少し押されている。


PAAANN!!

 俺の右肩に矢が突き刺さる。

コイツさっきよりも矢の威力上がってないか!?


 一度下がって体制を立て直したいが、ダンがそれを許さない。コイツダンジョンに入った時より動きにキレがありやがる。

 仕方がない、コイツの魔力が尽きるまでどうにか耐え凌ぐか……。

 

 左肩に迫る剣を左の2本の剣で防ぎつつ、右の剣をダン向かって振り下ろす。最小限の動きで躱され、左手で打撃を打ち込んでくる。左手は未だ防御で使っているので、振り下ろしていた右腕で防ぐ。

 体が少し後ろに押される。そのまま後ろに下がってダンの追撃を避けようとしたが、まだダンジョンから出ていなかったセルランの障壁によって邪魔をされる。

 どう足掻いても、ダンの剣は俺を貫くだろうから、これ以上居座られたら邪魔にしかならんセルランに[エクスプロージョン]をおみまいする。

 ちなみに、転移結晶での転移は死亡扱いで意識がシャットアウトする。

 

「グッア゛ア゛ア゛ああぁ」

胸の宝玉に剣が突き刺さり、更にリリィの矢が頭に突き刺さったことで、思わず声を上げる。

追撃が来るが、俺が剣で防ぐよりも速くダンの剣が俺を切るだろう。


 こうなれば、俺の魔力とダンの体力の根比べだ。"真の姿"は魔力が尽きない限り無限に再生できる。正直、宝玉は飾りだし脳も一応再生できる。


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ゛ぁ!!!!!」


 ダンが何度も何度も俺の体を切り裂く。対する俺は存在できる程度に高速で体を再生させる。


………次第にダンの攻撃が緩み……ついに攻撃がやんだ。


 根比べは俺の価値のようだ。

 体を完全に再生させる。


「リーダー!下がってください!」


 ダンが俺から離れ、今度はリリィが矢で射抜いてくる。俺はそれを避けることも防ぐこともできない。脳が破壊されると、再生以外の行動が取れなくなるからだ。


 何本、何十本の矢が俺のいたる所を貫き、風魔法で俺の体を刻むが、俺の魔力のが尽きるより先にリリィの手持ちの矢がなくなる。すぐにマジックバッグから用意をしたが、その一瞬をつき動けるようになるまで回復させ、すんでのところで次のリリィの矢を防いだ。


「クソが!ここまでやっても勝てねぇーのかよ!」

「リーダー、後どれくらい動けますか?」

「死ぬ気で行けば10秒」

「話し合いとは悠長だな!!」


 二人に向かって[エクスプロージョン]を発動させる。一瞬で二人は炎に包まれる。いいねこれ、派手で好きだよ。

 まぁ、殺れてはないけど。


「なっ…リリィ!どうして俺にだけ障壁をはった!」

「あそこまで…回復されたら…私一人じゃ…太刀打ちできません…し…私じゃ…距離の離れた二人を守れるほど…強い障壁は…はれませんから………後は…頼みました……」


 そう言い残し姿が消える。転移結晶を使ったのだろう。

 正直、今の魔力残量ではほぼ無傷のリリィとやりあったら殺られるのはこっちだっただろうから、脱落してくれたのはありがたい。


「残るは貴様だけになったな」

「後は任せるって……もうほとんど戦えねぇっての……」

「なんだ?諦めるのか?」

「はっ!んな訳ねぇだろ。テメェなんざ5秒で十分だ。」

「最後の威勢は認めてやる!が」


Paaaaannn!!

小規模のエクスプロージョンでダンの腰にある魔力がこもったバッグと左手を損傷させる。

 全員逃がすのは癪だっただけだが、適当にそれっぽいセリフをはいておこう。


「これも避けられんのか…それに、これでもう貴様は逃げられまい?死ぬ覚悟はできたか?」

「………」

「なんだ?死ぬのが怖いか?」

「ククク……ああ、こえぇさ!これから死ぬんだと考えたら恐怖心が湧いてきやがる!でもな!

たとえ、刺し違えてでもテメェだけは殺す!」

「それは叶わん!貴様一人で孤独にしねぇ!」


 お互いに地を蹴り接近する。

 ダンが斬りつける剣に合わせるように俺も右手の剣をふる。

 が、空振ったような感覚に陥る。剣と剣がぶつかった瞬間にダンが剣から手を離したからだ。

 そして俺の剣が当たらないよう身をかがめ、魔力の剣を作り出し抜刀するような動作で俺の腹を裂いた。

 脳が破壊された後遺症か、対応ができなかった。


「見事っ!」


 だが、ほんの少量とはいえ魔力が残っている以上俺の体は回復される。

 ここまで健闘したこのパーディの皆に賛辞の言葉を発っし、ダンを斬る……




 「なっっ!!」

 ダンの体に触れた剣先が霧散する様に消えた。


 何が起きていやがる。

 …いや…これはもしや……!神が介入したのか…!

 俺が今感知している力は確実に[神性]と呼ばれる神にのみ扱うことが許された力だ。だからこそ人の身で神性はやどせないはず、となると態々ダンを神格化させたのか?いやいや、そんな突発的にさせていいものじゃないだろう!?

 まさか、元から申請していたのか?俺をこの星から追い出すために?いや、申請はしていたのだろうが、この程度の[神性]じゃ俺は殺せない。

 ならばどうして………


 いや考えてる暇はねぇ。

 こうしている間にも、ダンの傷が癒やされ、周囲の魔素を魔力に変換していっている。

 それだけならばいいが、さっき俺の剣を消した力を考えるに………

 クソが!やっぱり夢の空間が崩れていきやがる!

 まずい、今起きられたらコイツの周囲にはコイツの仲間が倒れている。しかも無傷で。


 とりあえず一旦現実に戻って色々とやんねぇt__っ!!

 

 一瞬で腕か切られた。全く動きが見えなかった。

 まずい!すぐに出ないと!


 ダンに両断される寸前に、俺は現実世界に戻ってきた。


···········


『ねぇ!キサラギ!きいてるの!?』


どうやらマスターが俺に話しかけてきていたようだ。


「あーすんません、ちょっと緊急事態なんで俺の話を聞いてください」

『別にいいけど、なに?』

「夢の世界が壊されますんで、とりあえず事情を聞かずに冒険者四人をコア部屋に移動させる許可をください」

『いいよ。でも後でちゃんと話してね』

「ありがとうございます!」


 目覚めた冒険者に殺される未来を想像しないのだろうか?それとも俺を信用してくれているのだろうか。何にせよ、二つ返事で了承してくれたのはありがたい。


 奴が目覚める前にせっせとコア部屋に四人を運ぶ。この四人は、神性の影響を受けていないようだ。


 "俺"が持つ[切り札]を使って神性を消してもいいのだが、半神半人とはいえ一応は神の名を関するモノになったダンが"寝ている時"に一方的に[力]を使うのはまずいため、わざわざ冒険者をコア部屋に運んで場を整えた。

 前ならば不意打ちで神に[力]を使うことなんて、喧嘩をふっかける程度にしか思っていなかったが、この星を制約違反で追い出される要素を増やしたくないため久しぶりに律儀になっている。


 はぁ、マジで神のせいで色々面倒なことになったな。つか、後でマスターからのお説教確定じゃん。はぁぁ…。


「ここ…は……?」




どうやら起きたようだ。

ゴトぉーーーー!!!

ごめんなぁーお前活躍させられなくてぇ!

悪気はないんだが、見直したときに『あれ?ゴトいいとこなしやん』って気づきたんだよぉー!

見せ場新しく追加したかったんだけど、気力がないんだぁー!

ごめんなぁー

セルランもごめんなぁーお前第一の試練から目に見えた活躍が無いに等しいもんなぁー……

俺の力量不足だ……当分先になるかも知んないけどまた登場させる予定だから、その時こそは!頑張る!




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