冒険者が来るんですか!?(そうよ!しっかりしてよね!)
俺が召喚されてから1週間がたった。
この一週間の間に、ボス部屋の改築を行った。
以前は幅10m,奥行き10m,高さ10mの立方体の空間だったのだが、幅10m,奥行き20m,高さ10mの直方体にして、更にコア部屋へと続く扉とくっつくように石の大きな椅子を設置した。
俺が倒されると椅子が無くなる仕組みになっている。
部屋の拡張に10ポイント、いすの作成に1ポイント使った。
初日に使った瓶は、1ポイントだったので。残り64ポイント。
1日の始まりに、フロア1つにつき3ポイント支給されるらしく、(4×3)で1日に12ポイント,1週間(7日間)で84ポイント支給され、148ポイント。
食費が
パン(ある程度保存出来るもの、10個で1ポイント)(水は無料)
俺がオススメして、肉(焼かれたものが、500gで1ポイント)とサラダセットなるもの(3つで1ポイント)
を1週間分(少し違う献立の時もあったため少しズレて)で18ポイント使った。
なお、味にあきることはないらしい。ズバズバいう性格だとわかっているつもりだが、本当に大丈夫なのか?
風呂やトイレそれから、亜空間の維持は無料なため現在130ポイントとなっている。
ちなみに。俺の召還は666ポイントのガチャだったため、単純計算56日、私室を作ったとなるとそれ以上の日数このダンジョンは放置されていたことになる。
いや、一番最初に100ポイント支給されるんだった。それなら50日前後か…?
どうしてこんな事を整理しているかと言うと、マスターはヘルプさんから外の世界の情勢や自他のダンジョンに関する様々な情報を調べることができる。
そして、ダンジョンの周囲(最大50km)の状況を映像と音声として把握することができるらしく、
「ダンジョンに近ずいているだろう冒険者一行をみつけた!」と、騒いでいるため冷静にさせるためにも、ポイントを使って何かしてもらおうと思っている。
「どうしよう!初防衛だよ!ねぇ!さっきから聞いてるの!おーい!ねぇ!、、、ねぇっていってるの!!」
俺があまりにも反応を返さなかったからか、ついに蹴られた。
蹴られる瞬間、マスターが足を痛めないように魔力でコーティングしてあげた。
「聞いてますよ。100ポイント以上余ってますし、新しいフロアでも作ってみませんか?確か1番小さいフロアは100ポイントで作れますよね?それに初見殺しのトラップでも1つ付ければば少しは不安も和らぐんじゃないですか?」
「んーでも、フロア作ったら残り20ポイントになっちゃうでしょ?
20ポイントじゃ引っかかってくれそうなトラップ作れないんじゃない?
それに、ご飯用のお金が無くなっちゃうよ!もう!冷静になってよねまったく!」
いや、さすがに今日挑戦はしてこないと思うから、支給ポイントと合わせてギリいけるんじゃないかと思ったけど………10ポイントどこ行ったんだよ!
確か人間はいろいろ大変らしいから、きっとなんか必要なものに使ったんだろうな……。
「それに、罠1個だけのフロアってなんかカッコ悪くない?準備中とか、最後の悪あがきみたいで。」
「…たしかに?」
「まったく!
初防衛で不安なのは分かるけど冷静になりなさいっ!」
なーんで俺が不安で慌ててることになってるんだ?
いやまぁ正直、この星で初めて戦闘することになるから不安な気持ちもほんの少しはあるのだが。
「じゃーどうします?座して冒険者が来るのを待ちますか?」
「それでもいいんだけど……ダンジョンの入口近くにゴブリンが居るから、そのゴブリンを倒してみない?」
ゴブリンか、四日前にこの星の魔物と呼ばれる体内のどこかに魔核と呼ばれる魔力の塊が結晶化したものを保有する生物のカタログを少し見せてもらったけど。
確か1ポイントで買える、全長1.3mの耳と鼻がとがった人型半裸の雑魚だったよな?
弱すぎて戦う必要もなさそうだが。
せっかく持ちかけてくれたんだし、乗っとくか。
「いいですね、もう何年も殺し合いしてませんから。鈍ってないか試してみたいです!」
「それじゃぁ着いて来なさい!」
そう言って扉の方へ歩いていくマスターに着いていく。
もうレジストで魔力を無駄にするなんて失態はおかさない。
外に転移すると、暖かい陽の光がお出迎えしてくれた。
いいな、日光浴したくなってきたかも。
「マスターは体の作りが人間と同じですし、健康のために1日に少しは外に出た方がいいかもしれませんね。」
「へー、なんで健康にいいの?」
マスターがゴブリンのいる所を目指し歩きながら聞いてくる。
ビタミンナンタラが足りなくなるんだよな?確か、しらんけど。
「詳しくは知りませんが、とにかく陽の光を浴びないと健康に悪いらしいですよ?」
「よく、詳しく知らないのに言おうと思ったね。(まぁ私がキサラギの立場でも言うと思うけど。)」
いちいち棘があるような気がするな……
マスターの性格故か俺が嫌われてんのか。前者であってほしいな。
「健康にいいのは確かですからね!心優しいマスターの下僕は、マスターの健康を気にして助言してあげたんですよ。」
「そっ、まぁご飯もこれ食べろってうるさいもんね。」
悪かったな!マスターといっても13才だし、口うるさく言われんのはやっぱり鬱陶しいのかな?
「もしマスターが病気にかかったりしたら、俺が魔力でどうにかするつもりなんですよね。
そうなると一応は[悪魔]相手に借りを作ることになりますよ?
それでも何も言わない方がいいですかね?」
「なにそれ脅し?そっちが勝手に治すのに恩着せがましいくない?
てゆうか、病気なんて治せんの?」
「悪魔ですからね。契約ほど重くも強制力もないですけど、借りを作らせることはできますよ?
それに病気を治せないと、その分召喚してもらえるチャンスが減っちゃうんですよ。
まぁ、治癒魔力や光魔力じゃない無魔力の荒い治療なので、治せないものもあるんですけどね。」
「ふーん……あ!アレ!あそこにいる!五匹いるでしょ!」
マスターが指をさして一生懸命教えてくれてはいるが、実は外に出た瞬間に魔力で探知していたのでどこにいるかはわかっている。
このこといったら、魔力使えないマスターへの嫌みみたいになりそうだから言わないけど。
「本当だ、森の方へ向かってますけね。兎の亡骸を持ってるところからして、狩りを終えて帰宅してる途中って感じでしょか。」
「さぁ?そんなことより走って追いかけようよ!もう少しで森にはいられちゃうよ!」
別に森にはいられてもいいが、ちんたらしている間にほかの魔物とかにダンジョンにはいられる可能性もあるからな。
「あー(これも嫌味になりそうだけど)、魔法でこっちに誘導させますから。大丈夫ですよ。」
「キサラギはそういえば幻覚見せられるんだっけ。いいなー私も魔法つかいたい…。」
そう言いながら、俺を盾にするように隠れる。
「正確には今使ってるのは幻覚魔法じゃないんですけどね。てか、DPで魔法使えるようにならないんですか?」
「あ!確かに!帰ったら探してみよ!」
元気がでてよかった。
そんなに魔法を使いたいのだろうか。まぁ、あれば便利だし面白いし、使いたくなるかふつう。
「…ねぇ、なんでアイツら棒立ちなの?」
ゴブリンは今俺達から10mほど離れたところで制止している。
「俺が魔法で意識乗っ取っていますから。今は俺の意のままに操れますよ?」
「そんなことできるって言われてないんだけど?」
「悪魔は色んなことができますから、いちいち言ってたらキリがないんですよ。」
「何それなんかムカつく。」
「いちいち何ができるか言うのは面倒なんですよ、許してください。
そういえば、人間殺すのはダメで魔物はいいんてすか?」
「……魔物は…いいの。でも、まんまり痛くしないであげて。」
何故魔物はいいのだろうかとは言わない。詳しく言わないあたり理屈じゃないのかもしれないし。
「ゴブリンが死ぬところ見て大丈夫なんですか?
自分が手をくだしてなくても、人型の生物が死ぬのを見るのは結構ストレス溜まると思いますよ?」
「いいの、私が言ったんだから。ちゃんと見ないといけないの。逃げてばっかじゃダメだから。少しづつ慣れてかないと。」
「さいですか。」
それぞれ違う方法で殺そうと思っていたが。
痛くしないで、か。血を見るのはまだ早いってことかな?
確かに今日いきなりグロいのを見るのは精神的に良くないか。
とりあえずゴブリンを横に整列させた。
左から順に殺すか。
一番左のゴブリンの心臓を魔力で力ずくで止める。すると、数秒後に糸の切れた人形のようにどさりと倒れた。
寝ている人間を見るのとは明らかに違う。死んだゴブリンは目を開けており、呼吸をしないため胸が上下する事もない。
マスターが俺の服を掴む力が強くなったのを感じる。
少し前まで動いていた動物から、何の力も感じられなくなる。しかもソイツの横にはまだ生きているゴブリンまでいるのだ。
やっぱりつらいのかな?
「大丈夫ですか?」
マスターの方を見ながら言う。
目を見開き呼吸も少しばかし荒くなっている。
大丈夫か、大丈夫じゃないかで言ったら大丈夫だと思うが…
「だ、大丈夫。」
「大丈夫じゃ無くなりそうだったらすぐ目を閉じてください。そんじゃに2体目いきますよ。」
俺は2体目のゴブリンの[意識支配]をきった。
意識を取り戻したゴブリンは、目の前に俺達がいて、なおかつ仲間が動かないことに驚いているように思える。
「……ギャ?ギャギャ!?ギャギャ!ギャ!」
襲いかかって来るが、
俺達とゴブリンの間に魔力の壁があるので一生辿り着けないだろう。
「ギャギャ!」
声をあげ不可視壁を殴るが、ビクともしない。
そろそろ殺すか。
ゴブリンの喉に魔力をこめ、空気が取り込めないようにする。
息が出来なくなったゴブリンは、もがき苦しむが数分したら動かなくなった。
これはやっぱり時間がかかるな、ダンジョン近くには何も近ずいていないが、これ以上時間のかかる殺し方はやめよう。
「苦しめずに殺してって言ったじゃん……!」
マスターの声が震えている。
これはダメだったか。反省しないとな。
「ごめんなさい。『痛くしないで』って言ってたんでてっきり血を見たくないのだと思っていました。苦しめずって意味だったんですか。」
「普通分かるでしょ!」
涙目で怒られた。
非常に申し訳なく思うが人間の普通がわからんのでどうにもならん。
いや、でももがく動物の姿なんてみたくないか。
俺が昔窒息死させようとした奴は皆、体に宿す魔力が少なかったから、各々の武器でどうにか俺の事を殺そうと向かってきた。
だからまさか、もがき苦しんで死ぬだけとは思いもしなかった。
言い訳はこれ以上しない方がいいよな……。
「いや本当に申し訳ありませんでした。もうしませんから泣かないでください、俺まで心が苦しくなっちゃいますから。」
「次やったら容赦しないから!」
「分かりました。」
でも、これ以上見せたくなくなってきたな……ちっ優斗の甘い性格のせいでマスターが成長する機会が無くなってしまう。
800年くらい前に研究してた、優斗の性格を消す方法を試してみるのもいいかもしれない。
「今日はもう、帰りましょうか。ダンジョンにほかの魔物が来ちゃうかも知れませんし。」
「ほかのゴブリンはどうするの?」
「1回目と同じ感じで殺します。」
「そう……わたった。帰る。でも、ほかのゴブリンが死ぬところもちゃんと見る。」
「分かりました。」
これ以上は見せたくなかったが仕方がない。
脳と心臓と鳩尾の付近にある魔核に魔力を込めて同時に潰す。
その時魔力を使って、口や鼻から血とか脳脊椎液とかがでてこないようにする。
せっかくだし埋めてやるか。
手を模した魔力で地面を抉り取り、そこにゴブリンを埋めた。
「帰りましょうか。」
「ん………。」
あぁ、マスターの元気がない。
せめて、DPを使ってマスターが魔法を使えるようになることを願っておくか。
昔やった悪さのせいで、一部の神様に敵対されているが。
よろしく頼んだぞ!神様!
・・・・・・・・・・・・
コア部屋に戻った。
すぐに魔法を使える方法を探すと思ったが、どうやらそんな元気がないらしい。
「マスター、魔法使える方法探さないんですか?
見つかればきっと元気がでますよ!」
「見つかんなかったら怖いじゃん。」
「確かにそうですけど……ほら、明日か明後日には冒険者も来ますし、今日思いきり落ち込んで、寝て、スッキリした気分で冒険者を出迎えてあげましょう!」
マスターは立ち直りが早いから、寝ればきっとスッキリするだろ。
「キサラギ悪魔なんだから、私のこと魔法使えるようにできないの?」
「んー、できなくは無いと思いますよ?
ただ、失敗したらマスターがグロい事になっちゃいますし、成功しても人間じゃなくなっちゃいますよ?」
「はぁー、アンタ何をするにも失敗する可能性があるじゃん。」
「そんなんだから、200年だっけ?そんくらいの間誰にも召喚してもらえなかったんじゃないの?」
グサァァァ。
言葉の剣が俺の心臓を深く貫いた…。
くっ、まさか昨日話した俺の過去話がこんな形で牙をむくとはっ。
「はぁ、、で、どうです?ありました?」
俺に深い心の傷をつけたマスターは、そんなこと知らんと言った感じで熱心にダンジョンプレートを操作している。
「無さそう……。」
「ヘルプさんに聞けばすぐ分かるのでは?」
「心の準備が出来てない。
………でも、聞くしかないかも。」
すぅーはぁー、すぅーはぁー。
と、目を閉じてゆっくりと呼吸をしている。
1分ほどたったら、急に目を開いて「いくは!」といった。
どうやら決心がついたようだ。
「ヘルプさん!
魔力がない人間でも、魔法を使う手段はある?」
ちなみに、ヘルプさんの返答は、文字と音声両方のようで。
俺も音声が聞こえるようにしてもらってある。
『魔力を持たない人間が魔法を使えるようになる方法は、3つあります。』
「っ!ほんと!?」
ヘルプさんは嘘つかんだろ。
にしても結構あったな。
『1つは、創造神、魔法神によってそのような施しをうける。
1つは、悪魔との契約により、願いを成就させる。
この場合、別の存在に変化する可能性がありますので、オススメはできません。
1つは、知恵の実と呼ばれる伝説級の果実を食べる。です。』
「・・・知恵の実はどこにあるの?」
『[ティシリオ大陸]の中心にある[最果ての丘]に存在します。』
ティシリオ、確か俺達がいるオプロティス大陸から相当離れたところにあったよな…。
「それ以外じゃ手に入らないの?」
『いいえ、DPを使って購入することが可能です。』
「!!何ポイントで買えるの!?」
『100万ポイントです。』
お、桁がおかしい事になったな。
「ヒャ、ヒャクマンポイント……」
「大丈夫ですかマスター!お気を確かに!」
「コノヨノオワリダ…」
「へ、ヘルプさん!どうやったら俺はマスターの存在を人間のまま、魔法を使わせてあげられるようになる!?」
『わかりません。ですが、あなたの存在は神々に知られているようなので。この星を管理している神のもとに行き、創造神か魔法神を説得させればよいかと。』
頭で願うだけじゃなく、頭を下げないといけないのか?
つか、どこにいんだよ!
神界か?悪魔はあそこ行けないぞ!
「どこにその神様方がいるんだ?」
『星の魔核がある、[星核の部屋]にいます。』
無理やり行ったら戦争ものだぞ、それ。
「2柱とも?」
『はい。』
「そこに行く以外に一番手っ取り早く会う方法、もしくは話す方法は?」
『神々の祝福を3つ以上賜った[勇者]と呼ばれる存在を皆殺しにすれば、あちらから出向いていただけます。』
マジですか……
「俺が知恵の実を取ってくるとして、最速でもどのくらい時間がかかる?」
『悪魔:如月の解析ができませんので。わかりません。』
ヘルプさんに解析させて、その情報がもれたら俺が死ぬリスクがたかまるな……。
「知恵の実までの最短距離を教えてくれ。地中と海中は通らず空を渡る感じでよろしく。」
『最短で約1.8万キロメートルです。』
思ったより近かったけど
それでも遠いなぁー、何の障害もなければ甘く見積もって往復3日くらいか。
「マスター。俺なら1週間でとりにいけますよ。知恵の実。」
「ほんと!?……でも、1週間は長い。」
「ですよね、1週間あれば確実に誰かしら来ますよね。」
「ま、まぁでも。希望があるのはいいこと。
その内とってきて!」
「わかりました。俺が居なくても大丈夫なように、さっさとダンジョン強化しましょう!」
「そうね!すぐに最強のダンジョンを作ってみせる!」
「その意気ですよマスター!」
元気になってくれてよかった。
この後は精一杯マスターのご機嫌取りをした。