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努力なんてくだらない。結局必要なのは__




視点変えてから会話量が多いので、如月とクレアの言葉の間が一行空いていますが、気にしないでください。




前回のあらすじ


少年マザー復活。そして少年は……



★どこぞの少年冒険者



「着いたか」


 今まで、幾度もなく同じ時間を繰り返してきた。繰り返すたび、家族の言葉も、村人の行動も、天候も、世界の情勢もその他の殆どが同じ道、同じ結果をたどっいく。

 だけれども、ウィール平原にあるダンジョン。不殺の悪魔城だけが違う試練を俺にかしてきた。

 試練がかぶるときもあるが、確かな違いがあるものはここのダンジョンだけだった。


 今まで幾度もなく挑戦し、幾度もなく死んだ。

 だがそれも今回で終わりにする。前回の世界で第4の試練を安定して突破できるようになったからだ。



 ……って、前回も前々回も確か同じことを考えてたよなぁ。あぁホントに、馬鹿みたいだ。




それでも俺はまた、

「冒険者登録をしに来ました」

ダンジョンに挑む。





 Gランクではダンジョンに挑めないため、登録した当初から受けられる試験に合格して1日でFランクにあがった。

 試験の内容は、冒険者に必要な基礎知識や常識に関する知識の筆記試験と、低ランク魔物の討伐•魔物や獣を解体する実技試験である。

 何度も繰り返しいくうちに知識も技能も十分すぎるほど蓄積できたし、元々父さんに鍛えられてたから一回目でもギリギリ受かれてたし、正直余裕だった。

 金がかかるのがネックだが、まぁそれはすぐに取り返せる。



 登録が終わったら、今まで身につけた技術が問題なくふるえるよう数日かけて体をならす。



………



 準備は終わった。

 冒険に必要な防具や道具はないが父さんから受け継いだ変形自在の魔剣がある。これがあれば十分だ。


「行くかぁ」




 眩い光にあてられ、瞑っていた目をひらく。

 するとそこには少し広めの洞窟が広がっていた。ダンジョンによっては、床と壁が整備されているみたいにキレイなところもあるが、ここは完全に天然の洞窟といった感じだ。

 魔剣の魔力を引き出して探索魔法をつかってみたが罠すらも発見できない。


「今回の試練は地下5階にいるボスの討伐かぁ…」


 ボスはあんまり強くないことを願おう。



 少し進むと4体のゴブリンに出くわした。

 すぐさま魔剣を極東の地に伝わるという"刀"の刀身が短いバージョンに変形させ、なれた動作でゴブリンを殺していく。


 最初の頃は4体相手でも死ぬ可能性あったのに、随分なれたもんだよなぁ。




 1階は敵との遭遇は多いもののゴブリンが4~5体出て来るだけなのでスムーズに攻略できた。



 2階から、ホブゴブリンが出てくるようになった。正直あまり変わらない。



 3階からはゴブリンメイジが出てきた。普通のゴブリンより身長が低く力も弱いがその代わり魔法を使ってくる。火の玉を飛ばしてきたり、眠くなる魔法を使ってきたり。

 少し厄介だから見つけ次第5秒以内に処理することを心がける。



 4階になると辺りが暗すぎてよく見えなくなり、更に豚の頭に人の四肢を持つ大きな魔物、オークが出て来るようになった。


 だが、足跡で敵が近くにいるかどうかは分かる。すぐ近くにいると思ったときだけ探索魔法を使えばい。

 そして捕捉しだい即座に処理をする。


「はぁあ…!」


 オークに刃が当たる瞬間に刀身を長くして威力を増大させる。

 刀身に魔力を纏わせて切れ味を上げることもできるが、刀身を長くしたほうが魔力の消費が少ないので、これが通じる間はこのまま行く。




 体感で1時間ほどで5階に行くことができた。魔物との遭遇こそ多かったが、随分楽に降りてこれた。


 階段を降りると一本道の通路が続いていて、3分程歩くとボスが居るであろう部屋の扉にたどり着いた。


「すぅぅぅぅぅ…はぁぁぁぁぁ……行くか…!」


 中に入ると巨大な開けた空間にオークやゴブリンが15と30体ほどおり、中にはホブゴブリンやゴブリンメイジなんかもいた。

 そして最奥には全長3㍍ほどで、肌は黒く豚の頭に長い角が二本生えている相当でかいオークが扉を守るように立っていた。

 手には刃渡り2㍍程の巨大な剣を持っている。あれを一撃でも食らったら死ぬだろうな。


「にしても初めて見るなぁ、もしかしてオークキングってやつか…?Bランク、単体だと暫定Cランクの魔物だったはずだけど、いきなりハードすぎないかな?

…いやでも、確かオークキングは雄大な軍勢という戦力込みでBなんだったっけ?ゴブリンやオークはあんまりいないから、ほかを片付ければ……意外と余裕なのかな?」


 だが、もし本当にオークキングだとしたら、あの皮膚は鋼の剣も至近距離からのロングボウの一撃も通さない……らしい。

 魔力もゴブリンメイジの5倍もあるらしい。ゴブリンメイジの5倍がどれほ凄いのかはよくわかっていないのだが。

 とりあえず、こいつは正真正銘の化け物だ。改めて考えると倒せるかどうかわからないが……移動速度次第、かなぁ。


 まぁ、何にせよやらなきゃならない。どうやらあっちから襲いかかっては来ないみたいなので、こちらから仕掛けさせてもらう。

 まずは邪魔な雑魚から殺そう。


 殺すために用いるのは、俺が狂った世界で編み出したいくつかの技。対有象無象用といえばこれだな。


「我流魔剣術殲滅法…」


 腰を落とし踏ん張りのきく体制になり、魔剣の先が自分の斜め右後ろに向くようにし水平に構える。


無情(むじょう)…!」


 刀身に強く魔力を纏わせ自分の体も強化し、左足を一歩前に出して少し前傾姿勢になりつつ魔剣を右から左へ振り抜く。

 その時に壁とオークキングにぎりぎり当たらない程度の長さにどんどん魔剣を伸ばしていく。


ブン!!!


 この一振りでオークキング以外全員真っ二つにできた。

 うん、一対多の時はこれに限る。敵が強いと効かないんだろうけど。

 ま、そん時はそん時だ、今考えることじゃない。今はオークキングを倒さないといけないからね。


「さ、いこうか」


 身体強化と魔剣に込める魔力を増やす。

 右足で思い切り地面を蹴りいっきにオークキングの目の前まで移動し上から下に一閃。

 防御はされなかったけど、ほとんど刃を通さなかったな。血すら出てない。


すぅぅぅぅ

「ゴギャア”アアアァァァァァァァァ!!!!!!」

「なっ…!」


 物凄い風に襲われて後方に吹き飛ぶ。

 耳もキーンとして頭も痛い。鼓膜破れてなきゃいいけど。


「っと!」


ガギィィーーン!!!


 ふっ飛ばされている最中オークキングに一瞬で距離を縮められ上段から押しつぶすように剣を振ってきた。

 ガードはしたけど両手で魔剣を支え片膝をついている状態になってしまった。


 まずい、ただ力任せに押し付けられているだけだが、身体自体が貧弱な俺は常に魔力で身体を強化している状態だ。

 このままの状態が続くとそのうち魔力切れで死んでしまう。


 いなすこともできなさそうだな。さてどうするか……できることは魔剣の形状変化程度、さっきの斬撃が通じなかったとなると大したことはできないが、やるだけやってみるか。


 魔剣を形状変化させ剣先を伸ばし先端が鋭い鞭のようにする。

 それを魔力で操りオークキングの目を攻撃する。


 どうやら危険だと判断してくれたらしく、オークキングは後ろに飛ぶように離れた。

 いっきに7㍍くらい離れたな。


 そう、これがヤツの戦い方。小回りはきかないが動きが遅いわけではないので、いっきに離れ一瞬で近づき攻撃してまた離れ、ヒットアンドアウェイのような感じで戦う。


 強靭な皮膚は物理攻撃を通さず、角に込められた魔力は様々な魔法をかき消し、笑えるような膂力で敵を薙ぎ払う。

 パーティによっては1個師団と同程度の脅威と言われる、Bランク冒険者パーティでも全滅する可能性があるという、正真正銘の化け物だ。

 そんなやばいやつが何故Cランクなのか。


 一瞬で距離を縮めて斬り上げてきたが、左にすっと避けオークキングの目に向かって魔剣を一閃する。


 咄嗟に瞼を閉じて防がれたか。


 「ゴア”アァァァァァァァ!!!」


 大きな声と突風で威嚇しつつ後ろに下がるオークキング。

 風は魔力で扱っているみたいなのでこちらも魔剣の魔力で対抗し。思いっきり踏み込み、後ろに下がるオークキングにくっつく様に迫る。

 オークキングが足を地面につける寸前に、右足で地を踏み魔剣をレイピアの形にして、更にその先端を魔力で集中的に強化する。

 オークキングはついて来ていると思ってなかったようで、驚いた表情をしている。

 俺はその間抜け面の右目に魔剣を突き刺す。


 また瞼を閉じられたが今度はそれで防ぎきれない。

 瞼を突き破った瞬間魔剣を伸ばして脳を破壊する。


「思ったより、呆気なかったな」


 何故、単体だと暫定Cランクなのか。答えは、動きが単調で対処が簡単だからだ。奴の膂力に対抗できて、ヒットアンドアウェイの移動速度についていければCランクパーティでもたおせる。

 要は相性の問題ってやつだ。


 声も出せずに絶命したオークキングを一瞥して先に進む。

 扉に手をつき前に押す。扉の先から眩い光が漏れてきて思わず目をつむる。






大地を照らす日の光も木々を撫でる涼しい風も、心地よく穏やかな一日。

小さな村で、とある家族が言い争っている。



「クライム!聞いてるの!?兎に角、私は反対だからね!絶対にだめよ!」


 あ…ぼーっとしてた。今母さんと冒険者になるかならないかで口論してるってのに…。

 はぁ、どうやって説得しよう。俺には父さんから受け継いだ包丁があるから大丈夫だって言っても聞いてくれないしなぁ……。


「わかったらマロンちゃんでも誘って遊んできなさい」


 マロン……マロン…あぁ、マロンか。なんだがか懐かしいような気がする。可笑しぃな、昨日もあったはずなのに。

 それなんだか、頭がポアポアして…体調悪いのかな?俺。


「クライム大丈夫?顔色が急に悪くなってきたけど…。ごめんね、母さんもそんなに強く言うつもりはなかったの。ただ、貴方まで死んでしまったら、私…。」



 ……あ、そうだ。説得しないと。俺は死なないよって、説得しないと。



おもむろに父さんから受け継いだを包丁を手に取る。


「大丈夫だよ、俺には父さんから受け継いだこの包丁がある。だから絶対に死なないよ」

「それだけ持っててもだめなの。冒険者っていうのは、いろんな知識と技術が必要なのよ」

「どっちも大丈夫だよ、だってほら」


 一瞬で包丁を長くし母さんの首を斬る。

 殆ど無意識だった。発した言葉も、母さんを切ったのも。




 記憶が好きなように書き換えられ、様々な夢を見せられる。

 こういう試練のときは、記憶は消されてても脳が無意識にみんな殺して解決してしまう。


 あぁ…。もしかしたら、もう自分の無意識すら制御できないくらいに、狂ってしまっているのかもしれない。


 …まぁ、それももういいか。今は運が良かったと、あたりの試練を引いたことを喜び、前に進もう。






 次の試練は護衛、商人を魔王城がある王都まで丸一日かけて護送しなくてはいけない。


 そういえば、まえはすぐに終わる試練だけだったのに、最近丸一日以上かかる試練も出てきたな。にもかかわらずダンジョンの外に出ると一日も経ってない。

 それを考えると、もしかしたら試練なんて全部夢なのかな?なんてことを思う。

 まぁ、なんでもいいか。何にせよ、やるべきことをやるだけだ。


「今日はよろしくお願いします。Fランク冒険者のクライムです」


 護衛対象に近づき声をかける。


「あぁ、よろしくお願いします。僕がライカン商店のライカンです」


 思わずホッとなる様な笑顔、それにライカン商店…何処かで聞いたことがあるような気もするが……まぁ何年も繰り返してきたんだ、きっと何処かで聞いたんだろう。




ごとっごとっごとっごとっ…


 馬車に揺られ、穏やかな陽を体に浴びて思わず目をつむる。

 護衛中だというのに凄くのんびりしてしまう。


「日の光が気持ちいいですね」

「えっ!?あ、そうですね。すいません護衛だっていうのに、つい気を抜いてしまって」

「ああいえ、咎めたかったわけではないんです。ただ、穏やかな日だなって思って」

「そう、ですか。ですが何にせよ今は護衛中ですからね、もう気は抜きませんよ」

「ハハハ、分かりました。頑張ってください」


 日の光もそうなのだが、なんだろう。この男性といると心が穏やかになる。なにかの魔法だろうか?

 ま、なんでもいいか。




「止めてください」


 俺が声をかけるとすぐに馬車を止めてくれた。

 ちなみに、止めた理由は盗賊を感知したからだ。

 武器を鞘から出して、茂みで息を潜めているのだ。十中八九盗賊だろう。


 はぁ…嫌なことを思い出すから、盗賊なんてあまり見たくないんだけどなぁ。


 そして少しすると。


「おいおいおい!もしかして気づきやがったのかぁ?俺らがいるってよぉ!」


 しびれを切らして武装集団が出てきた。


「すぐに片付けます」

「ええ、お願いします。でも、気をつけてください。命第一、ですよ」

「わかってます」


「なにごちゃごちゃ言ってんだ!とっとと武器を捨ててうつ伏せで地面に倒れろ!」


 断る。つか、お前ら相手なら意外と反撃できそうな体勢だなそれ。


 さて。敵の総数は12、馬に乗っているのは声を上げているボス格の一人のみ。力量は多分ボスがDランク冒険者程度でそれ以外がE以下ってところかな?


「ちっ!おいお前ら!このバカどもにわからせてやれ!」

「「「おお!!!」」」


 とりあえず、ボス格だけ殺るか。


「我流魔剣術抜刀法:無刃(むじん)


 魔剣を左下から右上に振り抜く際、ほんの一瞬だけ剣を伸ばしてボス格の体を断ち切る。一瞬過ぎて、彼らには認識できなかっただろう。


 首だけ切ればよかったがこっちの方がお仲間が見たときの印象が悪くなるだろうと思いわざと脇腹あたりから左肩にかけて切った。


 まぁ、ボス格の死体を見るのはそいつのすぐ近くにいるやつだけで、それ以外はすぐに殺すんだけどね。


「無情…!」


 折り返しの一振りで向かってきていた7人を武器ごと切った。


「お頭ぁ!お前ら!お頭が…へっ?」「はぁ?」「なにが、おきた?」「どうなっていやがんだ」


 ………。あまり馬車から離れたくないし、できれば襲いかかってきてほしいのだが。


「お、おい。やべぇんじゃねぇか?こいつ…」

「に、逃げるぞ!全員バラバラに逃げろ!」


 その声に合わせて残りの四人が後ろを向いて逃げ出す。

 情報収集のために2·3人残したいんだが…。

 ああ、そうか。


 片膝をついてさらに姿勢を低くする。


「無情」


 さっと一振り。それで盗賊たちは走れなくなった。


「いっでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

「足がぁ!俺の足がぁぁ!!」

「あ”あ”あ”あ”あ”あ”ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 その一人に近づく。


「誰に依頼された?」

「い”、依頼、なんて!されて、ねぇよ…!」

「そうか」


 刀身を長くして一人切る。

 そして他のやつに近寄る。


「誰に依頼された?」

「ほ、ほんどなんだ!俺たちゃ誰にも依頼なんてされてねぇ!信じてくれ!」

「そうか、仲間はどこにいる?」

「他にはいない!そんな大きな盗賊団じゃねぇ!」

「そうか」


 更に一振り。

 そしてまた、別のやつに近づく。


「仲間はどこにいる?」

「仲間はもういねぇ!お願いだ!何でも正直に答えるから!命だけは助けてくれ!」


 何でも正直に_あ、そういえば。これはダンジョンの試練だった。それなら態々情報収集する意味もないのか…?うん、ないな。

 また、冷静さを欠いてしまった。


 生かす必要はないと考え、残りの二人も処理する。


「行きましょうか」

「え、えぇ。そうですね。その、お強いですね」

「ありがとうございます」




 その後も、魔物や盗賊から何度も襲撃はあったものの、魔剣の切れ味が良すぎてすぐにかたがついた……が、今度のはヤバそうだ。


「ヤバイのに挟まれてます。止まると逆に危険そうなので全速力で前に進んでください」

「や、やばいのですか?」

「ええ、ヤバイのです」

「はぁ、わかりました」


 探索魔法でさぐれたのは二人だが、多分もっといるな。具体的にどのくらいいるのかはわからないけど。


「っっ!!」


 左右から音もなく矢が飛んできた。数は多分12。狙いはランカンさんか。対処法は…


「はっ!!」


 矢の速度はオークキングの移動より遅い。魔剣を刃のない棒状にして、間合いに入ってきた矢から叩き弾く。


「このまま全速力で王都に行って下さい、馬は使い潰しましょう!!」

「わかりました!」

「はっ!!」


 さっきと同じように矢を飛ばしてきた。

 そしてまた、同じように。馬鹿の一つ覚えか?


 3回目の矢の攻撃を弾いている最中


「いっ!」


 なっ!右手に針がささった!全く察知できなかったぞ!

 それに魔剣の魔力が勝手に俺の中に入って…クソが!針に毒が塗ってあんのか!


 矢は落としたが、このままジワジワなぶられたらジリ貧だ。

 攻勢に出たいが、俺一人しか守る者がいないから一人殺すまでにランカンさんが死ぬ。


「ちっ!!」


 また、矢と針を飛ばしてきた。今度は右肩をやられた。刺さった針の向き的にさっきの奴とは違うやつが投げたの思われる。

 そしてやはり、針すらも魔力で感知することができない。


 更にもう一度、今度は肘をやられた。魔剣を振るう右腕を集中的に狙ってくる。


「あとどれ程で着きますか!?」

「多分、15分程」


 15分……これは…終わりかなぁ。



 ……いぃや、まだだ。


「ちょいと失礼!荷は諦めてくれ!」

「えっ!?」


 俺はライカンさんを左脇に抱えて馬車から飛び出す。

 まだ足はやられてないんだ。馬より俺のほうが速く走れる。

 正直、襲ってきている奴らが俺より速く走れるんだったら終わりだが…


「いっ!…ちっ!今度は足か!まぁそりゃそうだよな!」


 針の数は増えたが矢は飛んでこない。

 針でライカンさんを刺さない理由は多分…毒だ。きっと奴等はライカンさんを生け捕りにしたいんだろう。だから針でライカンさんを刺さず、俺を集中的に狙う。

 だが、俺は魔剣が毒の対処をしてくれる。


 奴らに後どんな手があるのかわからないか、このままなら俺が我慢すれば試練の達成はできる。



 3分ほど走ると針が飛んでこなくなった。

 諦めたのか?

 油断を誘ってなにか罠があるのかもしれない、感知は全力で行っておこう。





「助けてくれ!盗賊に襲われているんだ!」


 王都の門番たちに助けを乞う。



 奴らは追ってきていないようだった。





「本日はありがとうございました」


 そういい、ライカンさんは頭を下げた。


「いえいえ。その、荷物台無しにした俺なんかで良ければ、また何かあったら声をかけてください」

「はい。その時は必ず。…それと、僕が言うのもなんだと思うのですが。その…ただ淡々と生きるんじゃなくて。少し立ち止まって過去を振り返ったりしてみてはどうでしょう。

その、なんだかクライム君を見えいると、崖先へ向かっていっているような…漠然とした不安をおぼえるんです」


 立ち止まり、振り返る…か。


「…そう、ですね。そうしてみます」

「ご、ごめんね!変だよね!」

「いえ、参考にさせていただきます」

「あはは、そっか。それではまた!」

「ええ、さようなら」


 ……はぁ…クソみたいに長い時間同じ日々を送ってきたんだ。その間、何度も立ち止まって振り返って思考して実行して諦めた。

 優しさは嬉しいが、本当に……いや、やめよう。


 それはさておき、第三の試練は終わった。次は第4の試練だ。今まで割と簡単だったから急に難易度が跳ね上がるかもしれない。


 にしても…夜の街は少し、肌寒いかな。


……


「くぁぁぁあ…」


 朝、木でできた窓を開けて窓枠に肘を立て顔を預ける。

 あぁ、日の光が気持ちいい。この宿はいい宿だ。また使うことがあったらここを使おう。


 …さて、ご飯を食べたら試練の続きだ。



 さて、第4の試練はこの王都にいる特定の"協力者"を見つけるというものらしい。


 顔も名前もわからない、何の協力をしてもらうのかさえ知らない。その状態でどうやって協力者を見つけるか…。

 とりあえず、ギルトにでも行ってみよう。




「申し訳ありませんが、協力者の捜索と言われましてもなんの手がかりもないのであれば依頼発行はできません」

「ですよね。いや、ダメ元ってやつなんで大丈夫です。お邪魔しました」


………


「すいません_」

「ですよね!_」


……


「無理だ」

「ですよね!」


……


「冒険者ギルドや_」

「ですよね_」


……


「申し訳ありませんが_」

「ですよねぇ_」


……


「はぁ…その…なんというか…」

「すいません、なんでもないです…」




 うーん……冒険、商業、開拓、総合技術、魔系、情報ギルド。殆ど全部おんなじ返答されたなぁ。あと何があったっけなぁ…町や国が運営している場所でこんなこと言ったら、警戒されそうだしなぁ。

 はぁ、裏ギルドにでも行ってみようかな。でも見つけるの面倒くさいなぁ。







 頑張って見つけました……でも…


「はぁ?てめぇ依頼する気あんのかぁ?小僧!」

「いやぁ、あるんですよ?あるんですけど……あるんですよ」

「はぁぁ、もう帰れ」

「わかりました、お邪魔しましたぁ」


 まぁ、こうなるかぁ。

 うーむ、面倒くさいし、こうなりゃやけだ!




「誰かぁ!!!私の協力者の方はいませんかぁぁ!?協力者ぁぁ!協力者の方ぁぁぁぁ!!!!」


 どうせダンジョンの外に出たら何もかもなかったことになるんだ。少し恥ずかしいけどこうするのも手だろう。


「おいお前!屋根から降りてこい!」


 おや、衛兵を呼ばれた。まぁ、そりゃぁそうなるか。よし!逃げよう!




 そんなこんなで数日がたったある日。


「おい」


 低く小さい声で呼ばれた。後ろから聞こえたものだが、この声の大きさで聞こえるのは俺くらいだろう。

 後ろを振り向くとフードを被ったいかにも怪しげな男が一人で立っていた。


「協力者の方ですか?」

「…ついてこい」

「はあ…」


 有無を言わさぬといった感じだったので何も言わずについていく。


 賑わっている場所から遠ざかり、スラム街の方へと進んで行く。

 ゴミと汚物とあぶれたモノでごったがえする終わりの区画。

 こんな所じゃないとできない話なのかなぁ。この人が協力者だとしても、協力内容がなんか面倒くさそうだ。



「ついたぞ、この中に入れ」


 連れてこられたのは歪で小さなボロ屋。

 入ってみるとこれまたボロボロな机に水が入ったグラスが2つ置かれ、対象になるようにボロボロの椅子が二つあり、机に挟んでおくの椅子にはフードを被った誰かが座っていた。


「座れ」


 案内してくれた男に言われるがまま椅子に座る。


「ここまで長く歩いたでしょう。話をする前にどうぞ、お水をお飲みください」


 目の前に座る男が口を開いた。

 萎びれた老人の声だ。はて、この人が協力者なのだろうか。


「いえ、お気になさらず。宗教上の関係で水を飲む時間や食事をする時間が決まっているのです」


 まぁ、もちろん嘘だ。流石にこれを飲もうと思うほど浅はかではない。


「なんと、そうでしたか。そうとはしらず申し訳ない」

「いえ、それよりも。貴方が協力者なのですか?」

「ふむ。その話をする前に、おい君、これ以上は君に関係ないことだ、外に出なさい」


 案内人はうなずくとそのまま外に出た。

 ………。


「して、協力者なのですが、実は私ではないのです。奥の部屋で待機していますので、今呼んできます」

「わかりました」


 そう言うと、老人はゆっくりと部屋を出ていった。

 ……はぁ…。やっと協力者に会えると思ったんだけどなぁ。


Dooooooonnn!!!


「やったか!」

「ああ間違いなく!奴の気配は潰れる瞬間まで中にあった!」

「よし!瓦礫をどけて身ぐるみをはがせ!」


 いち、にぃ、さん、しぃ、ごぉ、ろく。6人かぁ。

 スラム街とはいえこんな派手なことして大丈夫なのか?もしかして誰かに雇われているのかな?

 ま、考えてもわかんないし、尋問苦手だし、全員殺してしまおう。

 魔法を使えるやつがいるみたいだけど、全員戦闘力が高くなさそうだ。

 ちゃっちゃと終わらせてまた宣伝しにいくか。


_我流魔剣術暗殺法:無形(むけい)_


 魔剣を振るい、魔剣から魔力を針状にしたものを飛ばす。針は空気中の魔素を吸収し進み、男達の魔力に刺さり、更にその魔力を吸収し、吸収の限界が来たら体の内部で爆発する。勿論、実体化してね。

 男達は外傷こそないものの内臓はズタボロになっているだろう。


 さて、宣伝でもしに行くか。


「いやお見事」


 その男の声が聞こえた瞬間、前に飛び体を反転させ声の主の方を向き、魔剣を前に構え警戒する。


 声の主は金髪を結ばず肩まで伸ばしており目は碧い、肌の色は白く顔は少なくとも俺の主観では美形に見え、表情はにこやかで敵意は感じられない。

 武器は見あたらず服装はカッターシャツにそれに合うような黒色のズボン。隠しているわけでもなさそうだ。

 問答無用で襲われなかったし、少なくとも敵対はしていない……のか?


 いや、そんなことより、全く気配を感じられなかった。

 今も目で見ているのに気配を感じられない。ただ目に見えているだけのような…。


「そんなに警戒しないでくれよ。君、僕の協力者なんだろ?」


 俺がこの男の協力者…?いや、どっちもそれぞれの立場から見れば協力者になるのか?


「さてね、俺は誰が何の協力者なのかも知らないんだ。できれば説明してくれるとありがたいかな?」


 そう言うと男は驚いたような表情をする。


「いっや君面白いなぁ、馬鹿みたいに町中で叫んでいたし本当に知らないのかい?ククク。いいよ、教えてあげる。僕たちは今から魔王を討伐しにいくんだよ」


 魔王?って言うと、100年くらい前に存在していた魔物の親玉だったか?そんなやつを倒せるのか?

 いやそもそも、本当にこの男は俺の協力者なのか?


「そんな怪訝な顔をしないでくれよ。君の名前はクライムだろう?……その顔、どうやら正解みたいだね。まぁそんな感じで僕はある程度君の情報をもらっているんだ」


 名前を知っていただけで信用していいものか…そもそも第4の試練はまだ終わら……


「第5の試練…魔王の討伐…いやまさか、本当なのか…」

「おや、ようやく納得してくれたみたいだね。良かった良かった」


 すぅぅぅ…はぁぁぁ…。

 落ち着こう。相手の気配が全く読めず気が動転していた、俺もまだまだだな。落ち着いて確実に進まないと。


「わかった、アンタが俺の協力者ってのは理解できたが、まず俺はアンタの名前すら知らないんだ。自己紹介でもしてくれると嬉しいかな」

「おっとそうだったね。僕の名前はフリム。性はないよ。得意なことは暗殺……かな?というかここで話すのもなんだしね、準備ができているのなら早速魔王城にいかない?」


 敵の根城で話す方がおかしいだろ…まぁいいか。


「わかったよ、いこうか」






 魔王城は黒くてでかくてすごかった。……今度、芸術品の感想でも学んでみようかな。


 まぁそれはおいといて、魔王城の入り口まであっさり来れてしまった。何故魔物やら悪魔やらが一体もいないのだろうか。それに、見張りがいそうな塔とかはあるんだがそこにも肝心の魔物が見当たらない。

 楽でいいが、少し不気味だな。


「おぉーさすが魔王城。やっぱり近くで見ると圧巻の一言だなぁ」

「なぁ、なんで見張りが一人もいないんだ?」

「見張り…?魔王城にそんなものは居ないよ、来る者拒まず去る者逃さず。それが魔王城だからね」


 勝手に入るのはいいが無事に出られると思うなって感じか。それで良いのか魔王城。


「心の準備ができたら入ろうか」

「心の準備っていうより…暗殺といっても、フリムさんは何ができるんだ?俺はなんていうか、前で戦えるよ」

「あぁ、好きなように戦ってくれて結構だよ。こっちも好きなようにサポートするから」

「…わかった」


 まぁ多分、俺より実力者なんだ。俺が無理に合わせようとするより、そっちのほうがうまくいくんだろう。


「あぁ、そうだ。これを渡しておくよ」


 そう言って、紙で作られた薄っぺらい人形をわたしてきた。

 魔力も感じられないが…なんだこれ。


「なんだ?これ」

「お守りさ。かつての勇者たちが魔王討伐で使っていたものなんだって、消耗品らしくて残こった最後の一品がこれさ。魔力も感じないし本当にお守りって感じなんだけど、ないよりマシでしょ、多分」

「そっか。まぁ、貰えるってんならもらっとくけど」


 役に立たないって分かってるものをよく渡そうと思うな…。

 まぁ、フリムなりの協力の一環なのかな?


そんなことを思いながら、ポケットに紙人形をしまう。


「んじゃあ行きますか」

「そうだね。ま、行くって言ってもこのまま正面から行くわけじゃないけどね」

「えっ?」



………



「なぁ、ほんとに割れるのか?流石に魔力で強化されてると思うんだが」

「大丈夫大丈夫。まぁ見ててって」


 俺たちは今、魔王城の壁をよじのぼり玉座の後ろにあるステンドグラスまで来ていた。

 見張り等がいないから簡単にステンドグラスまでこれたのだが、正直どうかと思う。

 易易とここまで来れるのもそうだし、ここまでこれてしまうのならステンドグラスが壊れない可能性のほうが高い。これで壊れてしまったら、流石に攻略が簡単すぎる。


「それじゃあ行くよ、準備はいい?」

「ああ」

「そぉーれ!!」


パリーーーン!!!


「はぁ!?」

「行くよ!」


 まさか本当に壊れるとは。いやでも、何回も挑んでいるんだ、そういうこともあるのかもしれない。運が良かったな。

 今は、魔王討伐だけを考えよう。


 城の中に転がり込み、できるだけ玉座から離れる。行動しながら魔王を確認する。


 黒く長い髪鋭い目つき、頭から二本の角をはやしており、魔力の沢山込められたローブを着込み右腕で頬杖をついている。魔王以外に悪魔やら魔物やらは見当たらない。


 一瞬で目入った情報はこれくらい。あとは…


「余の眼前であるぞ、『礼儀を知らんのか?』」


 透き通るような声が響く。


それと同時に

「がっ…!!」

床に叩きつけられた。


 何だ!?急に体が重くなった!魔力で体を強化すれば立てないほどではないが、これじゃあ満足に戦闘なんてできない。


「『誰が立ち上がっていいといった』?」


「がぁっ!!…っく!」


 さらに重く…!重いなんてものじゃない!押しつぶされる…!




スパッ……!!



 急に体が軽くなり、今度は体が上に跳ぶ。玉座を見ると首が床に落ちた魔王と、その隣にフリムが立っていた。


「いやぁ、ありがとう。君に注意が向いていたおかげで簡単に魔王を倒せたよ」


 フリム…?そういえば最初、魔王は"貴様"といっていた、"貴様ら"ではなく。

 囮に使われたのか…まぁ、何にせよ倒せたのならなんでも_


「『不敬を償え』……ふむ、愚かだな。」

「なっ!」


PAAANN!!!


 フリムの頭が………弾け飛んだ。


「この程度で余が死ぬと、本当に思っているのか?」


 いつの間にか、魔王に首がついていた。だが、首は切られ床に落ちたまま……まさか…!はやしたのか!?首を切られても瞬時に再生するのか!?


「なんだいつまで呆けている。余を殺しに来たのだろう?まさか作が尽きたとは言うまいな」


 落ち着けおれぇ。あの体が重くなるやつはやってこない。油断しているのか使えないのかはわからないが、やってこないのなら都合がいい、まだ倒せる余地がある。

 やつが油断しているうちに、一瞬でかたをつける。


 魔王は勇者でないと倒せないと聞いたことがあるが、倒せないモノが試練として出てくるわけがない。

 第4までが楽だったからツケが回ってきたという可能性もあるが…それでも、何があっても倒せないということはないだろう。


「すぅぅぅぅぅ……はぁぁぁぁぁ……」


 魔王の正体は知らないが、首を切っても死なない以上魔人族ではないだろう。悪魔は聖なるものが弱点と聞くがそんな物はは持ってない。姿は人に角が生えただけのものとはいえ、魔物の王と言うくらいだから、やはり魔物だという線が濃いが、それでも首を切っても死なないんだ、正直どうすればいいかわからない。

 その他の魔物の弱点……と言うと、あれしかないか。


 魔核。人でいう心臓部や脳と同じくらい重要な器官とされる解析不可能の神秘。それを切ろう。

 魔剣だということは流石に気づかれているだろう。だが、どんな魔剣かはわかっていないはず。一瞬だ。一瞬で魔力を最高潮まで高め魔剣を振り、伸ばし、殺す。


 人型の魔物の魔核が鳩尾にあるからきっと魔王の魔核も鳩尾にあるだろう。と、あたりをつけて魔剣を振るうが、正直言うと部の悪いかけだ。


「ふむ、余も暇ではないのでな。座して死を待つと言うのなら、殺してやろう」


 ものすごい殺気を飛ばしてなにか言っているが無視だ。今はとにかく集中しろ。



「……はぁ…つまらん。ようやく退屈しのぎが来たと思ったのだがな。もういい_



(_我流剣術抜刀法:無刃-)



『死ぬがいい』」


スパッ……!


 確実に殺った。確かな感触があっ_


「ガッッァ”ハッ…!」


口から赤黒い液体が出てき、体に力が入らなくなる。


 早く魔力で原因を……そうか、心臓が潰れているのか…はぁ、せっかくここまで来たんだけどなぁ。

 どんどん意識が遠のいていく。仕方がない。また次頑張ろう。















諦め、意識がなくなった瞬間。

クライムのポケットが光り輝いた。







★どこぞの悪魔


『_サラギ!キサラギ!起きて!!』


「んあぁ?あ、マスター。俺は寝ていませんよ、少し集中していただけです。んで、どうしました?」



 まぁ、マスターが起きてるってことで察しはつくが。まさか本当にクリアしてしまうとはなぁ。いやはや、俺の予想はつくづく当てにならんな。



『何か第5の試練で魔王倒したら急に目が覚めたの!』


「第5の試練?6じゃなくてですか?」


『えぇ。やっぱりおかしい?何かいきなり簡単になったなって感じたの』


「そりゃあもう。簡単どうこうは置いといて、試練5つで終わるのはマスターがいきなり大人ぶった口調になるくらいにはおかしいですね」


『(イラッ!)アンタね……』



 おぉ怖い。からかうのはここらへんにしておこう。



「冗談はおいといて、今確認しますんでちょいとお待ちください。お、良かった。クライム少年は起きてないみたいだな」


『はやくね!』


「そう急かさないでください。えぇと何何?

第一の試練は道中優しめの難易度で、ボスも相性関係から瞬殺…えっ、つか。包丁、じゃなくて魔剣強くねぇ…?前調べた時何もなかったよな。


第二の試練は……これは、何十年も同じ時を繰り返している状況が不具合を生じさせたのかな?……はぁ、また改良しないと…


第三の試練は…おいおい随分簡単だな。危険はあったとはいえ魔剣の性能を考えたらもう少し難易度が高くてもいいと思うが…魔剣の性能が試練の難易度に影響していないのか?いやそんなことはない。んじゃあ、ただ運が良かっただけか?


第四の試練は……内容自体は悪くないが、こんな捜索の仕方で協力者が出てくるのはおかしい、それにこの[フリム]とかいう奴、俺には声も姿も認識できない。マスターや少年の記憶にもないみたいだなぁ。

となると不具合の原因はコイツか…?

はぁっ!?この魔力残滓!ダンジョンに乗り込んできた悪魔共に影響を与えていた魔力と同じじゃねぇか!

舐めた真似してくれたなぁークソが


いやまて、今もダンジョンに……はもういないか…」


『えっ!?ダンジョンに悪魔乗り込んできたの!?』


「取るに足りんお人形みたいなもんでしたから、ご心配なく。まぁ、後で報告しますよ。


んで、そんでもって最後の第五の試練は、もうなんというか酷い。謁見の間にたどり着くまでの消耗を考慮しての魔王の難易度設定なのに、フリムとか言うやつのせいで全部台無しになったな。


だがまぁ、直接バグを起こしたのはこの紙人形か。

蘇生のタイミングが心停止でもなければ脳停止に見せかけてそれでもなく、その先でもない。まさに、俺の魔法をバグらせるためだけにあるような絶妙なタイミングだ。


はぁ…少なくとも、俺の魔法に介入できる程度の実力を持つ悪魔か…。かんっぜんに俺の油断が招いた結果だな。

って感じですわマスター。本当にごめんなさい」


『私的には試練クリアしてくれて嬉しいし、それはもういいけど、どうするの?』



 どうするか。再開させるのもありだが、また悪魔からの介入があるかもしれない。

 俺の警戒があるうちは何とかなるだろうけど、これからずっとクライム少年の試練のために意識を削ぐなんてめんどくせぇしなぁ。



「第六の試練は最初のパーティと同じものにしましょうか。つまりはまぁ、現実世界で行います」


『えっ!それ絶対クリアできないやつじゃん!!!』



 おお…頭に響く…。寝起きでその声量はキツイ…。



「まぁ落ち着いて下さいマスター。クライム少年の頑張り次第でクリアにしてあげますよ。まぁなんにせよ、悪いようにはしませんよ悪いようには。

いや、にしても。マスターに現実はうまく行かないってことを覚えてもらうためにも、失敗してほしかったんですけどねぇ。まさか本当にここまで来るとは思はなかった。」



 マスターといい、ウルフファングの面々といい、クライム少年といい、皆俺のちっぽけな想定を簡単に超えていくなぁ。

 吹けば飛ぶような存在で、摘めばすぐに潰れてしまうような弱者のくせに、心の芯は無駄に強くてこの短期間で何度も俺を驚かせる。


 何度考えても、やっぱり脆弱で矮小な人々がどうしてそんな……いや、脆弱だからそこ、思考して努力してもがき足掻いて結果をつかもうとする。その道中に命の輝きと言えるようなものが__

 


『悪いようにはしない、か。まぁ、私はそれを信じるよ。でもいいの?』


「え、ええ。ただまぁ、その代わりお願い聞いてくれません?」


『お願い?私にできることなら聞いてあげるけど…』


「おーよかった。確か、ダンジョンって一ヶ月前に申請を出しておけば休止することができましたよね?

なんか休止中ダンジョンに入れなくなるやつ」


『あーー、たしか?』



 覚えてないのかよ。まぁ、普通ダンジョン休止とか思いつかんのかもな。



「休止できるはずなんですけれど。そのぉ、今日申請出して一ヶ月後から休止しません?」


『休止して何するの?』


「欠陥がありそうな…いえ、最低でも悪魔に介入されるような脆弱な魔法を改良したいです」


『休止する必要あるの?どうせ一ヶ月かかるんだし、一ヶ月もあれば改良できるんじゃないの?』


「まぁ確かに、いくつかは出来るでしょうけど、これから暮らしていくうえでいつ敵対勢力がちょっかいかけてくるかもわかりませんし、できれば今俺が使える魔法全部を見直して必要があれば改良し、新しく必要そうな魔法も作りたいんですよね」


『ふーん。いいけどぉ、その間私暇じゃない?』



 確かに!そんなに時間かける予定はないけど、もしかしたら何十年もかかる可能性あるしなぁ。

 あぁ、そうだ。



「なら、休止中はダンジョンの外を観光でもしますか」


『えっ!?ほんとに!?』


「本当も本当ですよ。マスターあんまり口には出さなかったけど外の世界観たがってましたよね。この際だから、念の為に休止までの一ヶ月で神性すら効かない最強の結界を作って、一応それにダンジョンを守らせて、俺たちはのんびり観光しましょうや」



 ま、正直神性相手にゃ太刀打ちできんだろうが。異常が起きたら帰還するまでの間どうにかして一郎たちにダンジョンコア守ってもらうか。



『………でも、いいのかな?私、ダンジョンマスターだし。ダンジョンほったらかして観光とか…』


「いいんですよ!気にしなさんな!このダンジョンは前代未聞の不殺を掲げる悪魔城なんですよ?たかがマスターがダンジョンほったらかしにして観光とか、きっといろんなダンジョンマスターがやってますよ」


『そう…かな?そうだよね!ちょっとくらい良いよね!』



 お、割と責任感強そうなマスターがあっさり折れた。こりゃぁ俺が思っていたより外に行きたがっていたのかね?

 うーむ、最近は日光浴すら満足にできてないからなぁ。そりゃ外に出たくもなるか。

 いやてか、マスターも人なんだし悪魔より同族とお話したかったのか?



「そうと決まればとっととクライム少年追い出しましょう!」


『言い方!それと!ちゃんとクライム君のお母さん治してね!』


「はーい」



 さて、マスターとの会話中クライム少年の試練の道中や魔剣を念入りに調べさせてもらったが……魔剣は悪魔か神が力を与えていやがるなぁ、多分。道理でさっと調べただけじゃ気付けなかったわけだ。いや、普通に油断してテキトーに調べた俺が悪いのか?これは。


 そんでもってクライム少年の人格は……はぁ…一応、速攻で壊れてマスターにガミガミ言われないように、お人好しだったり気が良さそうなやつを数人、無駄に印象に残らせるようにして、そいつらに心をひらいてもらって心の摩耗を軽減させようとしていたんだが…。

 まさかすぐに人に頼ることをしなくなるとはなぁ。


 おかげでいい感じに曲がったな。

 良くも悪くも、真っ直ぐな感じだったのに。いつもどこか諦めていて、投げやりで、少しばかし孤独な人格になったようだ。


 うまくいかなくてもいい、どうせまた繰り返す、失敗しても何度だって挑戦できる、だから気負うのはやめよう。

 その考えが悪いとは思わないが、現実に戻ってもなおこのままだと彼、もしかしたらすぐに終わっちゃうなぁ。


 ま、それこそどうでも良いってやつだけど。

 一応合ったら忠告くらいはしてやろーかなぁー。



















投稿遅くてごめんなさい;;




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