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ちょいと休憩

 ……アホくさ。思い返してみれば問答無用で身体を消し飛ばすとか、情緒不安定かよ俺。

 どうも、封印されてから星に余計なちょっかいかける気は殆ど無くなったんだが、その分悪魔へ憎悪の念を抱くようになったようだなぁ。


 だが私情や強い感情なんてものはあるだけ無駄だ。自分の感情をいじくるのは気が引けるが、改竄したほうが良いだろうか?

 ……それもまた今度考えよう。それより今はこのもどき共を処置しないとな。


 まずは情報収集のためにも今の魔界についての知識等を覗かせてもらうかぁ…あ?

 さっきは気づかんかったけど、こいつ等"既に脳を改変されてる"わ。

 いや、それどころかこいつ等、本当にテキトーに作られた模造悪魔なんじゃないか?


 なるほど、だからあれ程までにめちゃくちゃと感じる部分があったのか……うーむ、こいつ等の親玉がわからないのは良くないなぁ。それに、こいつ等自分のねぐらの場所もわからんらしいし。

 でも、忠告をする為にも一度魔界に戻したほうがいいだろうか。

 ………いや、次にちょっかいかけられたときでいいか。


 にしても、恥ずかしくなってきたな。まさかほとんど自我のない人形相手にあれ程イキっていたとは…。

 ま、まぁそこは一旦おいておこう。

 ほとんど記憶を消されているようだし、次は脳の改竄を始めようか。


「[コードセットⅠ:§Ⅲ×↑4(対象)/隷属:クラスⅡ(改竄内容)_§Ⅱ如月1(対象の主)∩θ9クレア1/(改竄内容保持期間)]こんなところか」


 これで改竄は完了した、

 後名前も決めないとなぁ。コイツ等の名前無駄に長いから一々呼びたくねぇ。

 でもどうするか、俺のネーミングセンスなんてたかが知れてるしなぁ…いや、こいつ等四人組の名前なんざ適当でいいか。


「[セット_コールネーム]ゴブリンみたいな顔面をしたお前が一郎、全身真っ黒くて筋肉隆々でやたら角がデカいお前が二郎、髪の毛で顔が隠れてて全長が2,5㍍程あるお前が三郎、人とほぼ変わらない容姿のお前が四郎。終了。」


 これでコイツ等は良き操り人形になった。

 あとはこいつ等の誰かに少年マザーの様態を見に行ってもらうんだが…まぁ、隠密行動に優れているらしい三郎と、翼と角を切断すれば人前に姿を現すことができる四郎がいいだろうなぁ。


 問題があるとすればダンジョンの外に魔力パスを繋げると、馬鹿みたいに魔力をくうことくらいか。

 外で行動させる時はこの二人のどちらかを司令塔にした方が無駄に魔力を食わないからいいよなぁ。

 となると、独立した自我をうえなきゃならんのだが…


「[コードセットⅢ∶§Ⅲ四郎/クラスⅣ:レベル1/24]」


 作戦完遂を確かなものにするためにも、俺の自我をトレースした。自我のトレースといっても、記憶や感情といったものは都合がいいように改変したものなんだがな。


さて、

「四郎。やるべきことをやってこい。ちゃんと羽と角は消しとけよ」

「うーい。いってきー」


 ……そういえば、この魔法の試運転はほとんどやってなかったな…俺って、傍から見ると割とウザイ奴なのか?




★どこぞの使い魔


 ダンジョンから出た瞬間に三郎に隠蔽魔力を発動させる。

 ダンジョンの外に立っていた数人の人が、俺等の事をじっと見つめている。

 

 見えているわけじゃない。奴等はこのダンジョンから出てきた者に悪事をはたらくことがないよう、見張っている奴らだ。何せ皆気を失ってダンジョンから出てくるからな。

 そして、ダンジョンに出入りする時そこには強い光が生じる。今は夜、俺等が出てきたときもさぞ目立っただろうから不審に思ったんだろ。


 ま、どうでもいいが。


「三郎、俺を目的地まで運べ」


 俺がそう言うと、三郎は俺の手を掴んで飛び立った。

 そう、手を掴んで飛びやがったのだ。おかげで俺は宙ぶらりんの状態だ。

 …まぁいいか、とりあえず着くまでの間、俺はこの体で何ができるかできるだけ深く確認しておこう。


 まず、魔力量と出力、そして強度は多分下の下クラスだと思われる、魔力操作技術は脳を弄ってできるだけ高くした筈だが、素材が弱すぎで俺の本体より数段劣るな。

 魔力性質は[物質Ⅱ]物質の生成と操作ができる魔力だ。まぁこの体じゃあ何でもかんでも作りだせるわけじゃないんだが…まぁあれだ、[地魔法]が使えるな。正直、そこだけは羨ましい。

 そして身体能力も下の下。

 総合的な強さで言うと……冒険者マルトより数段上って程度じゃないか?

 コレとほぼ同種だという事実だけで赤面しそうだ…


「…はぁ、もういいや。三郎、暇になったから極力速く飛んでくれ」


………


 出発から40分程、もうすぐ村が見えてくると思うんだが、何かにまとわりつかれる感覚がする。

 …魔素ではないな、このまとわりつく感覚、魔力か。しかも、進んで纏わり付いて体を冒そうとしやがる攻撃的な魔力だ、それが森を霧のように覆っていやがる。

 村に近づくにつれてどんどん魔力が濃くなっていきやがる。こりゃ、魔力免疫もろくに無い保有魔力が少ない奴はそれだけで体に害になる可能性がある。少年マザーもこの魔力に冒されているのかもしれんな。


「三郎、俺を降ろしてお前はこの魔力の発生源を止めてこい」


 そう言った瞬間、三郎がぱっと俺の手を離した。


「えっちょおっ」


ZDOOOOOONN!!


「いってぇ…あのクソ野郎!本当は自我あるんじゃないのか!?降ろせとは言ったが落とせなんて言ってねぇぞ!この、ど阿呆が!」


 ったく。ここら一帯森なおかげである程度は衝撃を抑えられたが、この体は脆いからちっとの衝撃で壊れそうで心臓に悪いぞ…。


「はぁ…行くか」



…………………



 …だあぁあ!うぜぇ!魔力がどんどん濃くなっていきやがる…!無駄に察知しやすい体のせいで鬱陶しいったらありゃしねぇ!

 この体の魔力総量低いんだから無駄なことであんま使わせんなよな!

 しかも!ここまで濃い魔力を生み出す奴となると戦闘もそれなりに面倒くさそうだから、三郎が負けたときに俺一人で戦える分は残さんといけんし!

 はぁ…前途多難ってやつかね、こりゃぁ…



「…やや、ここか。ようやくついた」


 村に魔力の発生源があるってわけじゃなさそうだが、それでも中々に濃い。

 少年の魔力総量が少なかったことを考えると、こりゃぁ魔力に冒されたなぁ少年マザー。


 さて、少年マザーが居る家は_っ!!


一瞬で、周囲の魔力が先程とは比べものにならないほどに濃くなった。


 んだこの魔力!どんどん濃くなってきていきやがる!

 ここまでくると、俺でも気を抜くと体を冒されちまう!

 人じゃ1·2時間程度で手足の先から血流をとめられ壊死し、半日程度もすれば脳梗塞で死んじまうぞ!


 どうする!?少年マザーだけでも助けるか!?いや、そのうち魔力が無くなってジリ貧だ。発生源をどうにかするにしても2時間以上手間取れば、村の人全員手足が使えなくなって結局その内全員死ぬ…。

 本体とパスが繋がっていればどうとでもできるが、、、三郎を見つけて全速力で戻らせるか。戻るのに40分程かかるが本体なら一瞬でここに来れる、はず。そうすれば万事解決だ。

 ダンジョンの守りが薄くなるが、本体ならどうとでもできる筈だ。本体がどれほどのことができるか俺は詳しく知らんが、多分できる。

 できなかった時の為、俺は三郎に命令を下したあと発生源を全力で消そう。


 問題は三郎がやられている可能性があるってことだな。アイツは四郎より少しスペックが高いだけだ、これ程の魔力を産み出す奴との戦闘じゃぁ戦闘に向かんアイツがやられている可能性も十分にある。


 アイツは魔力が一番濃い場所にいるはずだ!クソ!もっと速く走れんのか!この体はぁ!

 お願いだから生きててくれよぉ!?失敗したら俺の本体がマスターにどやされるんだからな!?


 あと、もうちょい、、、



「グッハァ”ア!」


 三郎の声!?


「おい!大丈夫か三郎!」


 ……間に合わなかったか…?


 上半身は弾け飛び、残るは首と下半身だけになっていやがる。


「おやぁ?また新しいのが出てきましたねぇ」


 なっ!?感知できなかった!  


「どうされましたぁ?そんなに驚いた顔をして、もしかして自分より強い者にあったことがないのですかぁ?」


 現れたのは、無数の子供の腕ほどの太さの枝を人型に編み込んだ姿をし、中性的な声を発する魔物。

 木の魔物[トレント]の上位版か?こんな奴俺の記憶に存在しねぇが…

 どのみち、恐らく無傷で三郎を殺した奴だ。ヤバい奴に変わりはない。


「どうされましたぁ?そんなにじっと見つめて、私に惚れてしまいましたかぁ?」

「冗談キツイ、こんなドギツイ魔力を常時発してる魔物なんざ趣味じゃねぇよ。それよりさっさと魔力しまってくんねぇ?」

「はぁあ?それで私が従うとでもぉ?」


魔物は怒気をこめ魔力を飛ばし、威圧をする。


 残念、口説き落とすのが正解だったか。いや普通に態度悪かったな、俺。


「いや確かに悪かった、気が動転してたんだ。お願いだから魔力をしまってくれないか?」

「何故ですぅ?何故私が魔力をしまわないといけないのですかぁ?」


 村人の命が危ないんですって、本当のこと言ったらしまってくれっかな?…無理、だろうなぁ。


「魔力をそんなに放出してるとじきに枯渇しアンタが死んじまう。アンタ程の美貌の持ち主が死ぬのは寝覚めが悪い。だから、な?」


 中性的な声だが、声に抑揚がよく確認できる分女に近いだろう。趣味じゃないとか言ったけど、許してくれっかな?


「ご心配なくぅ!私はこの森そのもの、いくら使っても直ぐに回復するのでぇぇす」


 森そのものだと!?

 一つ一つの木が宿す魔力量はせいぜい人の子程度。だが、この森には馬鹿みたいな数の木々がある。そのすべてが敵にまわってるとか…

 ちょっと冗談きついっすねぇ…


「それに貴方ぁ、貴方を殺すことも決定事項なのですよぉ?」

「おいおい、俺は悪魔だぞ?魔物を創造した一族だぞ?俺を消すとお前にも不都合があると思うが?」

「フフッ。魔物を作ったのは悪魔かもしれませんが、私を作ったのは[魔王]様ですよぉ?けして悪魔などではありませぇん。だから大丈夫なのでぇーす」


 魔王…?


「おいおい、何ふざけたこと言ってやがる?

[魔王システム]は生物や魔物の死や負の感情から排出されるほんの少しの魔力残滓が長い時間をかけて集まり、魔物と化すもの。そして魔王は全ての生命を終了するために、感知した全ての魔力をおのが身に宿さんとする者だ。けしてお前さんを作ろうとはしない筈だが?

それに、前回の魔王顕現から100年も経っていないらしいじゃねぇか。新しく出てくるのはちょいとばかし早いだろうよ」

「あらぁ?それはそれはぁ、嘘を教えられてしまったようですねぇ可哀想にぃ。ですが、これが現実でこれが事実なんですよぉ」


 …俺の情報が古いのか?システムに改変が…?考えにくいが、ないとは限らない。


「それじゃぁさようならぁ。お話、楽しかったですよぉ?」

「グッ!」


 いきなり腹蹴ってきやがった!ぎりぎりガードできたが、まともにくらったらひとたまりもねぇぞこの威力!これを1時間以内に処理しないといけないのか?無理くね?

 …よし!諦めて逃げよう!


「逃げる気ですかぁ!?いけませんねぇ!」


 んなっ!腕の形状を変え、数本の先端が鋭い枝にして攻撃してきやがった!撓るし伸びるし、間合いもクソもねぇな!

 なんと捌いているがこれ以上本数が増えるt_


「グッハア”ッ!!」


枝を素手で弾く瞬間更に形状を変え枝分かれし、人の小指程度の太さの枝が無数に突き刺さった。

されども魔物は止まらない。


 いってぇな!刺された箇所を確認して治す暇もねぇし…!


「ちったぁ手加減してくれよ!」

「馬鹿ですかぁ?殺すのに手加減するわけないじゃないですかぁ。そーれぇ!」

「嘘だろ!?」


 周りの木々まで枝を伸ばして攻撃してきやがる!無駄に魔力を帯びていやがるから切るのも一苦労だ!

 木々の攻撃はそこまで強くねぇから、これくらいなら魔力障壁でもなんとかなるが、視界に広がる枝が多すぎて奴の攻撃と木々の攻撃かの判断がつかねぇ。

 その上感知魔力はすぐに霧散されちまうし。


「それっそれっそれぇ!貴方は何分持ちますかねぇ!」

「うっぜぇな!魔物がいっちょ前に言語を喋るんじゃねぇよ!気色わりぃ!」

「ひどぉーい。その調子じゃ異性にモテないでしょう?直したほうがいいですよぉ、その口の悪さぁ」

「やかましいわ!」


目の前の魔物から、周りの木々から地面から。大小様々な枝が獲物を刺殺さんと無数に伸びる。


「[地魔法:クラック]!!」


 これで地面に巨大な溝ができるはずなんだが…アイツに俺の魔力をかき消されて不発に終わったな…。

 だが、奴の注意が少しのそれたのが分かった。魔法本来の効力はないが、"注意"が散漫になればまだ勝ち目がありそうだ。


「クラック!アースニードル!ロックバレット!まだまだいくぞぉ!!」


 魔法の強度は低くて良い。とにかくできるだけたくさん魔法を放って注意をそらす!


「ロックバレット!ロックバレット!ロックバレット!ロックバレット!ロックバレット!ロックバレット!ロックバレット!ロックバレット!ロックバレット!ロックバレット!」


 よし!いい感じに注意が引けてるしこのままひたすらに手数で攻める!それと同時にヤツに命令を伝えなくちゃな!

 うまくいかなきゃ村人が全滅して本体が怒られちまう!悪いが全身全霊で殺させてもらうぞ!



夕立の様に石を降らせ、弾幕の様に襲ってくる枝を捌く。

刹那の攻防が物凄く長く感じる……



 まだか!早くしろ…!



「_っ!!」


 ついに頭を貫かれた。


「それぇ!とどめでぇす!」


魔物の無数の枝が体中を突き刺す。

が、少し遅かった。


 それは残念ながら俺じゃない。


「グッ!!な、なぜぇ…」

「あまかったなぁ、悪魔はちっとやそっとじゃ死なねぇ。実は三郎はまだ生きてるんだぜ?そしてお前が貫いたのは三郎が見せた幻覚、本体の俺はお前の後ろに回り込んでこうしてお前の胸を素手で貫いてるってわけだ。俺の魔法に気を使いすぎだったから三郎の魔力に気がつけなかったんだ!残念だったな!」

「グフゥゥ、まだ、まだ終わりませんよぉ…!」

「いんや終わりだ。死にな」


 魔核を握りつぶそうとすると同時に、奴の体も俺の魔力で侵食する。

 そしてコイツも、俺を殺さんと無数の枝で俺を突き刺す。


「お…のれぇぇ!!許しません!許しませんよぉ!!」

「しぶてぇな!とっとと死ね!」


 枝を凌ぐための魔力を残し、今ある全ての魔力を使ってコイツを殺す!

 コイツの魔力から身を守っていた[レジスト]用の魔力も使うためヤツの魔力がどんどん体を侵食していくが、こうでもしないと殺せそうにないからな!


 後…!少し!!


「しねぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 クソがっ!このままじゃぁこいつより先に俺が魔力に冒されて死んじまうぞ!

 もう手足の感覚がねぇ…!目もかすれてよく見えなくなってきた!その他の五感はすでにない!

 魔力も残りすくなくなってきた…このまま脳を冒されたら俺の負けだ。

 お願いだからとっとと死んでくれや!!







ガシャンッ!!!







…やがて、森を覆っていた魔力が薄れていった。


「死んだか…。感知にも反応しない。俺もヤツの魔力に冒されて限界が近い。三郎はもう意識が途絶えているな…

でも休んでいる暇はねぇ。とっとと体を再生させて村に行かないと、最悪全部無駄になっちまう…」


できるだけ速く体を再生させるため、魔力を作り出す。

枝に刺されて穴が空いていた部分がみるみるうちに塞がっていく。


「いくか…」


 ちょいと重労働だが時間が惜しい。

 体の再生をしている間も少しでも村に近づいておきたい。



…………



「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…ようやく、か」


 10分程かかったが少年マザーが住む家についた。

 魔力は最大量の半分ほどまで回復した。

 

 いくか。

 よくよく考えてみれば、今から未亡人の家に無断で入り、挙句の果てに寝ている部屋に忍び込もうとしているわけだが、今は倫理感なんざ気にしてる暇はねぇ。


 家の鍵を魔力を使って開けて、少年の記憶を元に少年マザーが寝ている部屋に忍び足で向かう。

 部屋の鍵はかかってないようだ。つか、鍵がない。

 これが悪魔の部屋とかだったら、問答無用で殺されるだろうけど。まぁ、相手は人だし大丈夫だろ。


ぎぃぃ…ぱたん。


 !!お、思いの外音がして驚いたぞ……

 だが少年マザーが起きた様子はない。よかったぁ。


ベッドの上には少年マザーが仰向けで眠っている。

顔は歳の割に幼く思え、タオルケット越しにでもその胸の豊満さがうかがえる。


 これなら俺の案も割と良かったのではないか?

 まぁそれはさておき、病気の原因を探らんとな。多分魔力に侵されただけだろうが……うん、やっぱり木の魔物の魔力に冒されてただけだ。

 正直、早期発見できたんならちょっと魔力を散らすだけで治るんだが、この星の医者は魔力に対しての理解度が低いのかもしれない。ヤブ医者という可能性もあるが。


 タオルケットをめくり手足の状況を確認する。

 指が数本壊死しているが…まぁ、この体はくさっても魔力性質が物質だからな。なんとかなりそうだ。


 そんじゃ、処置を開始しよう。

 まず、人を構成する物質を再確認する。

 俺の知識と相違はなさそうだ。

 次に塩基配列や遺伝子を解明、DNAの複製を試みる。よし、少年マザーのDNAもミトコンドリアも問題なく複製できたな。続き、染色体やゲノムも問題なく複製できた。

 血管の配置の把握はちょいと手間取ったが、血液や骨といったものの複製は余裕だな。

 後は次の作業が失敗しないようにちょいと実験して………

 うし!駄目になった細胞を慎重に取り替えていこう。



極限まで集中する。

外では体の不調に気づいた者達がすこし騒いでいたが、そんなものは聞こえていない。


長く…重たい時間が続いた。



 ……成功、か。


「はぁ…無駄に疲れた」


 人のためにここまでやんないといけないとか、今考えると馬鹿みたいだ_


「だれ…?」


 な?


 これは…やらかしましたな。調子に乗って喋ったのが悪かったか。いや、勝手に人体いじくったんだ。脳みそがなんか命令でもだしたのか?

 何にせよ、起きてしまったのなら仕方がない。ここは動揺せず、淡々と"嘘"をつこう。


「こんばんわ、勝手に入り込んで申し訳ない。私は医者をしているものでして、貴女の息子であるクライム君から依頼を受けてここにいる次第であります。何故、寝ている内に治療しているのかと言いますと、私の治療は極秘なもの故誰にも認識されたくないからであります」

「そう…ですか…」

「ええ、その証拠に手足が動きますでしょう?」


彼女はその細い指を何度も折り曲げたり伸ばしたりしたりした後に、


「確かに…。ありがとうございます。これでまた、あの子を抱きしめられます」


そう言ってぱぁっと笑顔の花を咲かせた。


 これはこれは、マスターにも是非習得してもらいたい技能だな。


「それでは私はこれで」

「待ってください!あの子は…クライムは帰ってきているのですか!?」


 クライム少年かぁ。きっと今頃、ダンジョンで野垂れ死んでいると思うが……


「クライム君なら、私に報酬を払うためのお金をダンジョンで必死に稼いでいると思いますよ」

「あの子は…無事なのですか?」

「……死ぬことはないでしょう。さにせ、クライム君が挑んでいるダンジョンは唯一死者のでないダンジョンですから」

「村に寄った冒険者の方が言っていた…」


 これ以上長居するとボロが出そうだ…とっとと帰ろう。


「クライムは…けんめい…ために…」「それじゃあ私はここらへんで、良い人生を」

「わたしも……あっ!そうですね。引き止めて申し訳ありませんでした。それと、本当にありがとうございました。私はもうてっきり…」


 また何か話し出しそうだったので笑みで答えつつ、さっと部屋を出た。

 にしても小声でぶつぶつなんか言ってたけど、大丈夫か?少年マザー。



「くあぁぁぁあ…なにはともあれ状況終了。他の村人の症状は軽度で処置する必要もねぇし、三郎の死体回収してダンジョンに戻りますか」



★どこぞの悪魔



「ただいまぁー」


 帰ったか…って!三郎の上半身ないんだが!?


「何が起きた?」


 いくら劣化悪魔とはいえ、人やそこらの魔物にやられる程弱くはないと思うのだが…。


「口で言う必要なくね?俺の記憶読めよ」

「それもそうだな」


四郎がダンジョンを出てからの記憶を閲覧する。


 少年マザーは無事、村人への被害もほぼ無い。

 問題は…魔王、か。俺が知らんだけでシステムの改変があったのか、もしくは神が手を加えたとかか?


 …まぁいい、考えるだけ無駄だ。

 どうせ答えは分からない。答えがなければ対応もできない。

 そんなことより…


「お前さぁ、隠蔽魔力使えないからって堂々と首もってダンジョン入るのはどうなのよ。しかも、止めに来たギルド職員らしき奴らを返り討ちにまでして」

「仕方がなかったじゃねぇーか。つか、これくらい本体がどうにかしてくれるだろう?」

「お前のせいでするしかなくなったんだよ。もう少し考えろ。陽動とか、なんかあったろ。」

「あったか?」

「少なくとも堂々と入るよりかはいい案があったと思うぞ」

「確かにな。つか、さっさとしないとギルド職員とやらが報告書とか書いちまうぞ?余計な仕事は少ないほうがいいだろう?」


 コ!イ!ツゥ…!


 はぁ…まさか昔に作った魔法がここまでウザくて使えないものとは…完成して満足したな?過去の俺よ。

 おかげでやらなくちゃいけないことが無駄に増えた。


「ダンジョンには結界をはっておくが一応、お前とのパスを繋げておく、何かあったら報告しろ」

「うーい、いってらー」




 ……はぁぁ、このちょっとしたことのために一々腰を上げんのがひたすらに、めんどくせぇ…


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