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連携

競技は、一進一退だった。

玉入れは、接戦の末一回戦は青、二回戦は赤、三回戦はたったのひと玉違いで青が勝った。

それは悔し気にしていたのは、赤の方では焔だった。

思ったより思うように行かない事を、この競技で思い知ったようだった。

その後の競技はビーチフラッグで、青組からは素早い志心、志夕、誓心、英心、そしてイゴールとその軍神のアンドレイ六人が出た。

赤組からは彰炎、錬彰、英鳳、頼煇、レオニートとその軍神ヴィタリーが出た。

お互いに寄せ付けない接戦だったが、結局最後のイゴールとレオニートの対決で、レオニートが取ったので赤組が勝った。

プログラム番号3、大玉送りは何人参加しても良いという事だったので、赤組は数で押そうと思ったのか、12宮48人が全部出て来て構えていたが、こちらは維心が指示を出していたので、出たのは半分の24人だった。

ちなみに維心は、いくら神でも気を使わず体ばかりで動いていたら、慣れないのも手伝って必ず疲れると知っている。

なので、この競技には直前の競技に出ていない、高湊、紫翠、アルファンス、サイラスの宮からの16人と、志心の宮の軍神二人、誓心の宮の軍神二人、駿の軍神二人、ヴァルラムの軍神二人の24人だけを使う事にしていた。

というのも、この競技は一周400メートルのトラックを大玉を転がしながら一周しなければならない。

もちろん走りながらなので、普段から走り慣れていない神には結構きつい工程になるはずだった。

…この後は、熾烈が攻撃が予想される棒倒しが控えておる。

維心は、そう思いながら、もしこれが駄目でも棒倒しは取れるだろうと踏んでそう采配していた。

一方、赤組の方はといえば、炎嘉が采配しようとするのだが、焔も彰炎も口出しをしてくるので思い通りにはならなかった。

今回も、本当なら半分ぐらいにしたかったのだが、皆我も我もと出る事になり、出なければ責められるような空気が漂ってしまって、結局全員がフィールドへ出る羽目になった。

「昨日話し合ったではないか。」炎嘉が、不満げに皆を見回して言った。「この後の競技に誰が出るのよ。疲れてしもうて棒倒しに勝てるのか。見よ、あちらはこちらの半分ではないか。」

焔が、手を腰に当てて言った。

「こんな事ぐらいで疲れたりせぬわ。たかが大玉を転がして一周するぐらいであろうが。あちらが少人数で勢いがない内に、先に行ってしまえば良いのよ。」

炎嘉は、フンと横を向いた。

「玉は転がり出したらそれほど押すのに力は要らぬのだ。主、宮で鍛錬して来たのではないのか。人数が多ければ良いわけではないぞ。」

だが、出て来てしまった以上戻るわけにはいかない。

この400メートルのトラックの、ちょうど反対の位置になる場所に青組の面々が出て来て大玉の前に綺麗に並んで準備している。

ぐるりと回ってお互いに、自分のスタート位置まで戻って来る速さを競うということらしい。

「では、只今よりプログラム番号3番、大玉送りを開始致します。」

恒の声が響く。

炎嘉は、グッと口を引き結ぶと、目の前の大玉に向き合った。

…同族同士も、良し悪しだがこんな事で負けるわけにはいかぬ。

炎嘉は、自分一人で大玉を最後まで送ってやるつもりで、その時を待った。


「用意、始め!」

恒の叫びに、一斉に大玉が動き出した。

維月達が上から見ていると、大玉に蟻のようにたかった神達がそれを巣へと運んでいるように見えた。

赤い玉は、勢いよく飛び出したのだが、どうやら連携がうまく取れていないのか、最初のコーナーを大きく過ぎてしまって玉を追いかける羽目になってしまっていた。

紺色の玉の方は、最初はそれほどでもなかったものの、カーブを曲がってスピードに乗って来たら結構スムーズに進みだした。

赤組も、それを追うようにしてコースへと戻って進んでいるが、人数が多い分勢いはあるのだが皆の力の加減がまちまちで、しかも真後ろの者には前が見えないのでカーブ近くになってからの減速が上手く行かない。

結局、コースアウトして戻ってしまうので、ロスばかりになってしまうのだ。

対して、青組の方はサイラスが玉に触らずに前を走っていて、皆にカーブが近付くと指示を出してうまくカーブを曲がり切ることが出来ていた。

前が見えない者達への配慮だった。

この案は、イライアスが出したもので、サイラスが玉を押しながら走るなど無理だと案じて咄嗟に出した案だったらしいのだが、それが功を奏していた。

「…これはいける。」維心が、玉がぐるりと回ってこちらを向いた時に、言った。「赤は余程上手くやらねば追いつけぬ。あやつらは玉を転がさせたら右に出る者はないの。」

義心は、維心がそれを感心して言っているのは分かっていたが、そんな褒め言葉をもらって果たして嬉しいのだろうかと首を傾げた。

フィールド上では、わあわあと歓声が鳴り響く中、青色の玉が最終コーナーを曲がったところだった。

「…青の勝ちですわね。」

椿が、上から見て残念そうに言う。

考えたら、椿は兄は青組だが、夫は赤組なのだ。

維月は、笑った。

「サイラス様が前で指示をお出しになっているのが良かったようですわね。玉が大きいので、後ろに回って押しておる者達には先が見えぬので、どうしても方向がおかしくなってしまうのですわ。」

言った通り、青色の玉が先にゴールテープを切った。

そこで、恒の声が言った。

「青、ゴール!青組の勝ちです。」と、まだ転がっている玉を修正している、赤組を見た。「もう少しです。不戦勝になれば二位の点も入らぬようになりますので、最後まで頑張ってください!」

翠明が、プログラムを見た。

「ほほう、これは負けても二位の点が入るのだな。プログラムによると、一位10点、二位7点、三位5点、四位1点、五位以下点無しとある。」

維月は、頷いて言った。

「はい。ですので、借り物競争などはそれが適用されるので、一位でなくとも点数が多く取れる可能性があります。仮に、一位が青であっても、二位、三位、四位が赤であったら多くなるのですわ。赤組は、後の点数争いを考えても、ここは放棄せずに最後までゴールした方が得なのですわね。」

だから維心様もご自分が出ずでこの競技を捨てても良いと思われたのでは。

維月は、そんな事を思っていた。

翠明は、ふむふむとプログラムを見ながら続けた。

「では、最後のリレーは荒れるのでは。赤組が二組、青組が二組で走るのだろう?とういうことは、それぞれの組の順位で点数が決まるゆえ、接戦のまま行くとかなり熾烈な戦いになりそうよ。」

維月は、それには頷いた。

「誠にその通りかと。どうあっても一位は欲しいところですが、二位と三位を独占したら、勝てる可能性があるわけですわね。なので二組ともに、上位を目指さねばなりませぬの。」

翠明は、ふうと息をついてプログラムを下ろした。

「出ておらぬで良かったことよ。そんな気の重い事に付き合わされるのは真っ平ぞ。だが、見ておるのは面白い。紫翠も頑張っておったし…おお、赤組がゴールしたぞ。」

遅れること数分、赤の大玉がやっとゴールを通過した。

「赤組、ゴール致しました。では、プログラム番号4番、棒倒しの準備に入ります。」

恒の声が言う。

月の宮の軍神達がわらわらと出て来て玉を片付けて、棒を持った軍神達が飛んで来るのが見える。

玉入れの時に書いた丸い円を、踏まれて消えかかっているところを補修している軍神もいた。

その手際は大したもので、何度もデモンストレーションを繰り返したのだろうな、と維月は思った。

翠明が、フィールド上を引き揚げて行く赤組の、疲れきった面々を見下ろしながら顔をしかめた。

「大丈夫なのかあれは。入れ替えが速いゆえ、すぐに次の競技であるのに。」

維月も、下を見た。

むっつりと不機嫌な炎嘉の後ろを、項垂れた焔、彰炎達がとぼとぼと息を上げながらついて歩いて待避壕の方へと歩いている。

…内輪揉めなんか無ければ良いけど。

維月は、それを見ながら思っていた。

競技をおこなっている神達はそんな感じだったが、観客達はそんなことにも気付かず、楽しげに話しながら次の競技を待ちわびていた。

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