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プロローグ『女神との出逢い』

クラリスと申します。

初めての投稿で拙い文かと思われますが、読んでくださると嬉しいです。


「シャロンさん、おめでとう! あなたは、1000ポイント以上の徳を貯めたので再び生まれ変われます!」

「……は?」


ポカンとして目の前のやたらキラキラとした、しかし胸のない美女を見て。

周りの上も下も横も真っ白の空間を見て。

さらに自分の体が全盛期の若いときの素っ裸なのを見て。

今度こそ、大きく口を開いて叫んだ。


「はぁあああああ!!!?」


話は、私の前世に遡る。


私は、月城朱里。普通の女子高生だった。

私立の女子高で吹奏楽部に入り、習い事では柔道と合気道を嗜むような音楽好きの男勝りな女子だったが、女だけの女子高では王子様のように崇拝され、ファンクラブも知らないところでできていたらしい。


家族がいて、友達がいて。


本当に、幸せだった。


ある日、車に引かれてあっさりと十七歳でその命を散らすまでは。


目覚めたらシャロンという名前の女の子になっていて。そこは下民街と呼ばれる、前世でのスラムーー無法地帯だった。

言語も通じない。ご飯もない。頼れる人もいない。明日生きている保証なんか、もちろんない。

そんな逆境でも、必死に必死に必死に必死に。

ただ、自由に生きることを考えて生き延びて。

いつの間にか、仲間と呼べる人ができて。

寿命を迎えられるくらいまで、大人になったの。



「……シャロン、死なないでよぉ……! まだ魔導極めてないんでしょ……うぅっ」

「ダリア、……そんなこと言うな。……極めたかったけど……十分幸せだったから、それでいい……」


ぐずぐずと泣いて、ベッドに寝ている私の首もとにポフッと顔を伏せてくる銀色の小さな狼をぼんやりとした視界でとらえ、その頭を撫でようとする。

しかし、手が麻痺していてすでに動かないことに苦笑を溢した。


「なぁ、……アフロディーテ、ギルバート。おまえたちがこの子を……見てくれよ?」

「……っ!」

「わがっでる……!!」


そばに立ち、涙をこらえている若く美しい容姿の二人に笑いかける。


「もう、私も87歳……人族ではよく生きたほうだよな? アフロディーテ……」

「……そう、よ……! よく、がんばったわよ、シャロンは……」


スッと左手を両手で握られ、ふわりと何時もの笑みで微笑んだ。

そうして、声が出にくくなっている喉を無理やり動かし、最後の声を絞り出す。


「……な、私が死んだら……、私の楽器と相棒たちは……お墓の近くに……ゴホゴホッ!」

「わかってるわ! わかってるから、無理しないで……!」

「うわぁん! 死なないでよぉ!」


泣きそうな顔も美しいアフロディーナとダリア、その上からギルバートに見つめられ、シワだらけの顔で微笑む。


「ほら、笑え。……私は、おまえたちの演奏が聞きたい。私たち『ミューズ』は……音楽で繋がったんだろう……?」


コホコホと咳き込みながら言うと、みんな泣きそうな顔をしながらも自分の楽器を取り出して構えた。


「曲は……私たちが初めて作った、“ミューズの翻弄”」


アフロディーナの言葉で柔らかな演奏が始まる。

アフロディーナのハープにギルバートのチェロ。それに、アクセントのようなダリアのオカリナ。

その音に、私のピアノがないことにちょっとだけ悲しみ、でも優しい素敵な演奏とともに天へと逝けることを嬉しく誇らしく思った。


(……さよならだ)


その言葉は、麻痺してきた舌で発することができず、口を動かすことだけとなったが。

みんなわかったように頷いたのを視界に捉える。

そんな満ち足りた気持ちのまま、ゆっくりと意識を暗闇に沈めていった。


そうして次に重い瞼を上げると、不思議な白い空間にいた。


「シャロンさん、おめでとう! あなたは、1000ポイント以上の徳を貯めたので再び生まれ変われます!」

「……は? はぁあああああ!!!?」


ここで話は、冒頭に戻る。


「おまえ誰だよ! え、もしかしてなくても神様? え、神様なのか!? ミューズ!?」

「はい、女神なのです! なので、その手は下ろしていただけませんか!?」


バッと自称女神様に向けていた手を渋々下げる。

もちろん、この手は魔術を展開するためで、相手は自称神様だ。


(空間魔術と結界魔術の組み合わせかと思ったぞ……)


「空間魔術でも、結界魔術でもないので安心してください! と言っても、ここは世界の狭間なので魔導という力は使えないのです!」

「……え? あ、私今……声に出したか?」


キョトンとして口を手で塞ぐも、唇が開いた様子はない。


「心の声は女神には聞こえちゃいますよ!」

「へぇ、そうなのか?」

「はい!」


心なしかない胸を張った貧乳女神様に、はぁ、と頷く。


(……ひょっとして、男? あれ、私、裸ってヤバくない?)


「ひどっ! 胸がないのはわかってましたが、男に間違われたのは初めてなのです! 女なので、あなたの裸見てもなんともないですから!」

「あぁ、聞こえたのか」

「イヤでも聞こえちゃうのです! もう! ともかく……」


貧乳女神様が言うには、私は生涯かけて様々な良いことを行ってきた。決してやったつもりはないが、それを女神の部下である天使様たちはポイント制でキッチリと見ていたのだ。

普通の人間は100ポイントを満たせばいいほうなのにも関わらず、私は1000ポイントも貯まったため、女神として何かしらのプレゼントをあげようかということになったらしい。


「……一ついいか?」

「いいですよ!」

「天使、俗っぽ!!」


なんだよ、ポイント制って! 天使何やってんだよ! と心の底から叫ぶ私を見て、女神様はカラカラと笑った。


「それのお陰で生まれ変われるならいいじゃないですかぁ! もっと喜んでください!」

「まぁ、そうだが……あれ? いや、私って一回生まれ変わってるよな? それに、私って今死んだとこだぞ? また、すぐに生まれ変わるものなのか?」


私の疑問に、キョトンとした女神が目を丸くする。そして、あははは! と豪快に笑われた。


「なーに言ってるんですか! 異世界からの生まれ変わりなんてよくあるものですよ! それに、シャロンさんが亡くなってから、すでに500年経っているじゃないですか!!」

「え、……はあああ!?」


まさか、死んですぐ目を覚ました気がしていたのに、500年も経っていたとは。

500年ってどんだけだ、とブツブツ言いながら頭を抱える私に、女神様が新たな爆弾発言を落としてくれる。


「150年くらい前の大陸大戦争でなーんにもなくなっちゃいましたしねー。人族は相変わらずズル賢いので栄えてますけど、種族もずいぶん減ったものです」

「は!? アフロディーテは? ギルバートは!? ダリアは!?」


ちなみにだが私は傭兵という職についており、私をリーダーとした仲間に、私以外の人族はいない。

アフロディーテはエルフ、ギルバートは半竜人、ダリアはシルバーウルフだ。ダリアだけ動物だが、幻獣という人語を喋ることのできる種類だったため、娘のように可愛がっていたものだ。

三人とも、千年は軽く生きることのできる種族だが、戦争で殺されたら話は別だ。

必死な表情で問い詰める私に、女神様は「うひゃあ!」と驚いて慌てて答えた。


「ぜ、全員生きてます! ちゃんと、大陸にもいますから!」


ホッと安心し、真っ白な床にズルズルと座り込む。

そんな項垂れた私に、女神様は恐る恐る言ってきた。


「私が管理している地球にも転生できますが……どうします? シャロンとして生きた世界は、戦争で魔法や魔術とやらも衰退しているようですが……」

「いい、シャロンとして生きた世界に生まれ変わらせろ! 私の故郷はもう、あの世界だ!」


フンッと胸を張って誇るように言うが、女神様の目線が私の顔より下がった気がしてハッと胸を隠した。

「……しかし、さすがに素っ裸で言うのはなんだがな……」


肌寒くはないし、差恥心なんて可愛らしいものも下民街での経験で消滅しているが、素っ裸で女神様と話すなんて、さすがにいたたまれない。


「そうですね。私の服でも着ます?」

「いや、どう考えても胸が入んないだろ……」


女神様の手に出現したのは、前世でも良く着たタイプの部屋着のようなもの。しかし、女神様の慎ましい胸元と、腕で隠してもポロリと溢れ出そうな私の胸元を見て、首を横に振る。

女神様がいささか傷ついたような表情をして言った。


「……そうですよね。シャロンさんの服を私が着ることはできても、逆はできないのですよね……」

「ま、まあまあ! とりあえずこのままでいいから!」


ズーンと沈んでいった女神様を慌ててフォローする。


「……とりあえず、色々決めていくのです。新しい身体になるとき、何か希望はありますか?」

「……うーん。特には……」


そう、答えようとしてハッと気がつく。

更年期で悩んでいたことを、ここで解決してもらえばいいのではないかと。


「ある、希望ありまくるぞ!」

「は、はい。どうぞ!」

「まず、肌は真っ白プルプルツヤツヤを保てるように! 髪もサラサラに! それに、顔や身体が弛みにくくなるように……あとは、ーーー」


ぐちぐちと細かく、しかし、ほとんど若いときには問題ないところを挙げていく。

あまりの多さに、慌ててメモを取り始めた女神様の目が回った。


「つまり、年老いたら問題になるとこをできるだけ改善してくれ!」

「一言で終わるじゃないですかぁああ!!」


頑張って真面目にメモを取っていた女神様がわああっと泣き出した。

それに構わず、あと一つと言って付け足す。


「精霊眼が欲しい!!」

「ぐすっ……精霊眼、ですか? 精霊が見れるだけですよね。魔導師として戦うのに、何ら問題ない気がしますが……」

「何言ってるんだ! 精霊を見るっていうのは、魔導師のロマンなんだぞ!? 数万人に一人だけなんだ、精霊なんてじかで見れるの!!」


興奮し出して、魔導の概念から説明しようとした私を、あわあわと女神様が止める。


「わかりました! わかりましたから! はい、転生しますよ! 生まれ変わり先は運ですから! いってらっしゃーい!」

「え? は? ちょ、ちょっとー!! 私……!!」


カクンといきなり床がなくなるような感覚。

運ないんだがー!! と叫びながらどこまでも白い空間を落っこちて、そのまま意識を失った。




読んでいただき、ありがとうございます。

投稿は少しずつ行っていくつもりです。これからも、この世界観をお楽しみください。

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