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エドアルド視点


ライリーが王都に居ると分かってすぐ、飛び出しかけた俺をオルガが止めた。

舌打ちを飲み込もうと思ったが無理だった。

オルガの冷たい視線を受けていくらか冷静になった頭で向き合う。


「良いですか、ハインツ侯爵様」



オルガがハインツ侯爵と呼んだ。

目を丸くする。つまりは領主として相応しい対応をしろと、そういう事だ。


「何日ここを空ける気です。やる事を全て片付けた後なら、文句は言いません」


まるで母親に叱られる子供だ。

俺はギリギリと奥歯を噛んで、もう一度舌打ちをして執務室に籠った。


扉越しに聞こえるオルガのため息はもうすっかり聞き慣れたそれだが、心做しか、どこか安堵したものにも聞こえた。


それから仕事を片付けて夜中に飛び出そうとした俺をまたもや、どこかから現れたあの執事が捕まえた。


「ちっ」


「せめて隠そうとしなさい」


五月蝿い、何故ここに居るんだ。


「夜はダメです」


「何でだ、文句を言わないと言っただろう」


「まったく、子供のような揚げ足取りをしないでください。

どうしても行くというなら馬車です。護衛を1人つけてくださいね」


馬につけた鞍に足をかけていたところを引きずり降ろされる。

それから笑顔で顎を動かして馬車を示す。


……お前、侯爵家の執事長がなんて下品な。


というか、馬車だなんて5時間もかかる。

今行ったら深夜じゃないか。

馬でならまだ、街の外に人がいるかもしれない時間だ。

聞いて回れる。


「ダメです、エドアルド様」


にっこり、隙のない笑みを浮かべられてどこから現れたのか屋敷の使用人が外套を着て現れる。

体格の良い真面目な男だ。


「護衛です。彼は騎士学校の卒業生です。では、頼みましたよ、この朴念じ………エドアルド様の相手は大変でしょうが」


「はい、……じゃなかった、いえ!光栄です!」


おい、なんだこいつ。そしてオルガ、お前が俺を馬鹿にしていることだけは分かった。



「仕方が無いでしょう、エドアルド様。そんな顔しないでください。彼は真面目なんです」


「…………」


………もう何も言わん。


にっこりと笑みを深めたオルガに辟易として、仕方なく馬車に詰め込まれてやった。


「では、行ってらっしゃい、お気をつけて」



俺は小さく頷いて扉を閉めた。


馬車は思いのほか安全運転で、結局王都に着いたのは日が変わってからで、俺は逸る気持ちが抑えられなすぎて一睡もできなかった。子供か、と自分で自分に呆れたわけだが。





ーーーーーーーーーーーーーーーー





「おい、そこの騎士」


ライリーが全く見当たらない。

金髪でライリーという名の少女を知らないか。

そう聞いて回るが、街の住人は顔を引き攣らせて、首を横にブンブン振るばかりである。


なんだ、どういうことだ。


護衛として着いて来た(ユーリッヒというらしい)は「エドアルド様、そんな顔して迫ったら怯えられて当然ですよ」と言っていたが、訳が分からない。


どんな顔だ。俺は悪いが生まれつきこの顔なんだ、放っておけ。


ギロりと睨んだら、顔を青くしてサッと顔を背けたが。


1日探して、遂に手がかりを得られず。

こんなことならあの日アルフレドをもっと締め上げておけばよかった。

ついつい、ライリーが生きている喜びでボケっとしてしまって、その間にいつの間にか消えているし。

やつの逃げ足が早いのはいつものことだが。


王都に行けばどうにかなるとも思ったがそうでも無かった。


なぜ、こんなに探して見つからないんだ。



日も傾いてきた頃。

道を歩く1人の騎士を見つけた。

紺色の騎士服に身を包んだプラチナブロンドの髪の男は「はい」と機敏に振り返り、それから僅かに目を見開いた。



「………僕に、なにか」



プラチナブロンドに翡翠の瞳。端正な顔立ちは青年と少年の狭間のような甘さがある。いかにも貴族といった感じの気品を纏った騎士だ。

まあ、この騎士服、王城騎士のものだ。

城の騎士や、近衛なんて貴族ばかりだろうが、それにしては貴族らしい嫌味さがあまりないな。


……というか、どこかで、見たことがある。


城で?いや、違う。


記憶を辿りながら口を開く。

とりあえず、アルフレドの居場所を聞き出すか。

あいつなら絶対に何か知っているだろう。


「アルフ……」


いや、待て。

珍しく態度も口も軽いあの男がライリーのことを隠そうとした。

全て話してしまう前に逃げ出したのもそうだ。


何か話せない事情がある? 理由があるのか。

だとしたら、アイツを呼び出したところで口を割るか?というか、逃げられそうだ。


開きかけた口を閉じ、怪訝そうな顔つきの騎士に向かってもう一度口を開く。


「王都に金髪のライリーという娘がいるはずだ。瞳は漆黒、背はあまり高くない。

髪も女性にしては珍しくそう長くないと思うのだが」


翡翠色の瞳は俺の顔をじっと観察して、それから瞬きをひとつした。


少し俯きがちに、小さく息を吐いて。


「居ましたよ。でももう居ません」


「………居ませんだと?」


ちょっと待て。

どういうことだ。たった、昨日の話だ。

というか、この男何を知っているんだ。


顔が険しくなるのがわかる。

騎士はそれを受け流して感傷を表情に乗せた。


「貴様、何を知っている」


「僕は彼女を匿っていたんですよ。貴方から逃げていました。一体何をしたんです。大層怯えていました」


敵意の籠った目。

じっと顔を見つめて思い出した。


「……アシュレイ・ダールトン」



ああ、そうだ、思い出した。舞踏会や夜会で何度か見かけたことのある顔だ。

確かダールトン辺境伯の末の息子。

オルガがライリーを探していたと言っていたのはこいつか。

だとすれば、確実に何か知っているはずだ。


それに、この目………。



「ご存知でしたか、光栄です。エドアルド・ハインツ侯爵」


明確な敵意のある翡翠の瞳。





こんにちは、

お久しぶりです。GW何かと忙しく、ストックがなかったこれは更新できませんでしたすみません……(´;ω;`)


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