放課後
部室に入ると、まだ誰もいなかった。
誰もいないのをいい事に、触れもしないドラムセットに触る。
ドンッ!ガシャーン!
「何してるんですか?」
聞き覚えのある低いやる気のない声は、ドラム担当の中村だった。居たのか、お前。
「な、なんでもねぇよ!お、お前は、よくこんなの扱えるなぁ。俺はさっぱりだぜ」
声が震えた。
「そんな事より、昨日ギターの佐藤が抜けちまっただろ?だから、ギターできるヤツ見つけてきたぜ!」
ドヤ顔で言ってみた。
「は、はあ。仕事が早いですね。まさか、昨日の今日で見つかると思わなかったです」
相変わらずのテンションの低さで中村は言う。
「そうだろ!今日ここに顔を出すよう言っといたから、もうちょっとで来ると思うんだが…」
微妙な色の部室のドアを見つめる。
その微妙な色のドアから、今まさに加藤が入ってくるかと思うと少し胸が高鳴った。
「へぇー。どんなヤツなんです?」
「普段は地味なヤツ何だが、目の奥に光るものがあるような…。ないような…」
「どっちなんですか。 」
「どちらかというとある。ずっとやる気のないような風体をしているが…。俺もそいつの事はまだよく分かんねぇわ」
言い終わるタイミングでドンガラガッシャーンと微妙な色のドアが開いた。
加藤だった。
「加藤ー!よく来てくれたな!ありがと!中村、紹介するわ。こいつがギターできるっていう、俺と同じクラスの加藤…直樹だっけ?」
「加藤直樹です。初めまして、中村さん?」
畏まった口調で淡々と挨拶する様は、まるで昨日のカラオケの対応を連想させた。