加藤君という人
高3のとある日の休み時間――。
「お前、いっつも寝てるな」
「お前はいっつも喋ってるな」
加藤直樹というクラスメイトと席が隣になって初めての会話。俺が話しかけると何故か、加藤は喧嘩腰だった。
加藤とは高校三年のクラス替えで、初めて同じクラスになった。廊下ですれ違った事はあるが、特に加藤の噂は聞いたことがない。
「ごめんね、ごめんね、何か、ごめんねー」加藤の顔が可愛かったので、ついうざったく言ってみる。
「…いや、ごめん寝かせて」
加藤がまるで、お前の相手してる暇は無いほどに眠たいんだ。と言っているようだ。
加藤は何故これほどまでに眠たい理由が気になった。
そういえば加藤は普段は眼鏡をしているが、寝る際に外した顔は、大きな目が目立って綺麗な顔立ちをしているがクマも目立つ。
「何で眼鏡してるの?」つい聞いてしまった。相当な愚問だ。
「眼鏡の機能知ってるか?」
苛立ちを通り越して、笑ってくれている加藤。何でも無いと笑ってごまかす俺。
「いや、お前って…意外と目デカイのに眼鏡してるし、勿体無いなーとか」思ったり。
「クマ酷いし目が悪いからしてるんだよ、悟ってくれ」気にしてるのか、クマ。
「なら、コンタクトにすれば?」
嫌な顔をして俺を見る加藤。
「コンタクト目に入れるの怖いし。それにクマ目立つし」
「あ、あぁ…そうか。怖いよな、クマも」苦笑いで、同意する。
「うん。怖い。もう、いい…?」
「はい?」
「もう用は無い?」明らかに苛立っている様子の加藤。
「あ、はい。無いです」
そう答えたとたん机にひれ伏す加藤。
何か悪い事をしたか、疑問に思いつつフェードアウトしていくしか無かった。