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虜囚の人形師 共通①
――とある帝国を治める女帝がいる。
不可思議な事に真の愛を覚えなければ永劫を生き続けるという。
隣国の王子はその女帝を一目見たいと思うのだった。
「もうきいて!」
“どうしたのエレノイラ”
焦茶の髪をリボンで一つに結った少女は、小さなピエロの人形に話しかけた。
「お隣のリリーったら酷いのよ、私の髪は煤けた暖炉の焦げと一緒だっていうの!」
少女の目から涙の粒が落ちる。ピエロは物を言わぬただの人形。
「ねえロノワール、変だと思わない?」
子供と大人の境にいる彼女は、幼い頃に女帝として帝国ジュグに君臨していた。
10年国を任されて生家で不遇な後釜のサッシャという少女に立場を譲り、早期に隠居し何年もずっとこの姿のままだ。
「私は人間じゃないのかしら」
この国の外にはドラゴンと人間のハーフがいたりする。
魔法を使うことができるだけでなく、妖精がいたりもするのだ。
「でも私は魔法を使えないのよ。なのになんで不老なのかしら?」
コツンと指で人形をはじく。
「貴方は昔見た道化師さんに似ているわ」
――私は彼に導かれ、帝国を退いたのだ。