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第1章 いつも留守番

四角い窓から見上げる空は、いつだって僕だけのものに思えた。いつものように学校から帰ってきて、いつものように床に寝そべって見上げれば、手の届きそうな気がして…。


 「腹へったなぁ。ママが帰ってくるまでもたないよー。・・・あの雲、綿菓子みたいだなぁ。夏祭りで食べた綿菓子うまかったよなぁ。」

僕は、目をつぶって夏祭りでの出来事を思い出していた。

 「・・・そういえば、あのばあちゃんちの近くに住んでた女の子、

名前なんだっけか?」

あの時は、忘れそうもないほど仲良く遊んでいたような気がするのに、今はなんだかあの子の顔もおぼろげだ。


「ん?」

 なんか物音がしたような気がした。今日はえらく早くにママの仕事が終わったんだなと思い、起き上がろうとしたら・・・!突然、目の前に小さな女の子が現れた。・・・それに浮いてる?心臓が口から飛び出しそうになるってきっとこういうことだったんだ。僕はびっくりしすぎておまえは誰だって聞く前にこう言ってしまった。

 「君、どうやって浮いてるの?」女の子はにっこり笑ってベランダを指さした。

 (ああ、そうか。この子はベランダからはいってきたんだな。)とりあえず落ち着こうと思い、僕は深呼吸をしてから本題に入ることにした。

 「君は、誰?」女の子は空中でクルクル楽しそうに回っている。

 「やっと会えたね。私のこと覚えてる?」僕が首を横にふると女の子は少し淋しそうな顔したがすぐに笑顔に戻り、「私はずっと君に会いたいと思っていたんだよ。でもね、今日は会いにきただけじゃないの。おばば様が君じゃなきゃダメだって言うのよ。村の男の子じゃダメなんですって。」おさげ髪をゆらゆら揺らしながら女の子は早口で言った。

「い、いったいなんのことさ。僕には君の言ってることがなんのことだかさっぱりだよ。」僕の頭の中は突然入ってきた理解不能な情報でグルグル混乱し始めていた。おばば様がなんだって?村の男の子がなんだって?この子の言ってること聞いてたら僕はこの子に会ったことがあるらしいけど…でも僕はそんなの全然覚えがないし…。女の子がふわりと着地した。「とにかく私と一緒に来てくれる?大丈夫よ、怖いことなんてないわ。」

 僕はちょっとムッとした。こんな小さな女の子になだめられてるみたいだ。「来てと言われたってダメだよ。だって僕は今、留守番してるんだから。ママが帰ってくるまで家にいなきゃいけないんだよ。…でも勘違いするなよ。僕は怖いから行けないってわけじゃないからね。」女の子はニッコリ笑って言った。「あら、留守番のことなら大丈夫よ。私に任せといて!」女の子はそう言うなりまた浮かび上がり、そして僕の腕を軽く引っ張った。すると彼女は少し僕の腕に触れただけのように感じたのに僕の体までが浮かび上がっていった。

 「ちょ、ちょっと待ってよ。いったいどこへ連れていくつもりなのさっ。っていうかなんで浮いてるのさっ。」もう僕は何がなんだかわからない。

 「大丈夫よ。怖くないって言ったでしょ。私の役目は君を村のおばば様のところまで連れて行くことなのよ。」そう言うと女の子はいつのまにか開いていた窓からベランダに飛び出した。もちろん浮かんだままでだ。そして僕も浮かんでいた。・・・よく考えたらウチはマンションの12階なんだ!僕は顔から血の気が引いていくのを感じた。

 「ギャ〜!やめろ、やめろ〜!落ちたら死んじゃうんだぞ!」

 僕は必死で女の子にしがみついた。女の子はプッと吹き出して「大丈夫だって言ってるのに」そう言って僕の腕から手を離してしまった。・・・落ちるっ!僕はぎゅっと目をつぶった。・・・でも、浮いたままだ。まるで、ピーターパンみたいだ。風に揺られてフワフワしながら、僕がポッカリ口を開けていると女の子が言った。

 「私の名前はセツ。じゃあ行くわよ、タカくん。」

 とりあえず、彼女についていくしかないらしい。だってもう僕にはどうやってウチのベランダに戻ればいいのかわからない。あんなに遠くなってしまっては・・・。




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