埋め合わせと待ち合わせ
昨日の一件で僕は何もできなかった、あの後主催者が参加者全員に参加費を返した後、僕たち五人に対してお礼という形で追加で金貨十枚ずつくれた。
引け目を感じ、断ろうとしたが、残って戦う意思はあったのだからと、強引に渡された。
その後五人目の異能者が香りで数時間前にドアをぶつけた少女だと気づく、謝ろうとすると、向こうから一方的に港公園の噴水前に午前十時、とだけ言われ、その少女はかえってしまう。
仕方なく僕は言われた場所に言われたじかんにやって来た。
しばらくすると少女がやって来た。
「お、おはよう。」
「ええ、おはよう、今日一日女の子の顔を傷つけた償いをしてもらうからね?」
最初出会ったときは後ろ姿だけ、昨日はローブで顔が見えない、初めて正面から見るその姿は身長150位、茶髪の髪を肩まで伸ばしていて、かわいい感じ、この間のカフェの子よりもかわいい。
一目惚れというやつかもしれない。しかし僕はそんな考えを、全力で否定しにいく、元いた世界では普通に友達もいたし、何かトラウマがあったわけではないが、恋愛というものがあまり好きでなかった。
そのため僕は恋は科学で説明つくと自らを納得させるためありとあらゆる人の思考に関する知識を身につけた。その課程でポーカーも覚えたし、外国の論文を読むために英語も突然英語が公用語の国に放り出されても何不自由なく生きていけるくらいには身につけた。
そんな僕が一目惚れをしそうになった、これは目隠しして素人がジャンボジェット機を着陸させる位あり得ない。
「ところで、自己紹介がまだだったわね。私はカレン=ホール、カレンってよんで。」
可憐なカレン…いかんいかん。
「僕はトオル、トオル=タカサキ、よろしく。」
「それじゃあ、トオル、今日は一日私に仕えなさい」
「え?」
「え?じゃないわよ。はいでしょうが、はい。」
仕方なく俯きながら「はい」という、見た目とは裏腹に高飛車なのかもしれない
「それじゃあ、荷物持ち君行くわよ。」
早速荷物持ちに格下げされた僕は彼女について行く…
ーー「さーて荷物持ちさん、もうお昼よ?」
「おなか減ったの?」
「私はパスタが食べたいわ」
「ウィーッス」
まあ、昨日もらった金貨十枚もあるし全然大丈夫だろう。
あるいて適当な店を探す。
「このお店に入りましょ?」
「え、あ、おう。」
立ち止まったその店の名は「薄暮れの茶屋」例のカフェだった。
「こんにちわー」
「いらっしゃいま…!あ!昨日の!えーと確か…」
「トオルです、トオル=タカサキ」
「ああ、そうだったわね、トオル君、それと横にいるのは彼女?」
「まさか〜違いますよ、今日の僕はただの荷物持ちです」
席に座るとメニューとしばらくにらめっこした後、カレンが海鮮パスタを頼む、偶然にも僕も同じものを頼んだ。小さい舌打ちが聞こえたが気のせいだろう。
「今さらだけどカレン、たんこぶは大丈夫?」
「ええ、もうなお…いえ、とても重症よ。」
「え、あ、えーと、本当にごめん、この後薬局にでも寄ろうか?」
「いえ、それほどでもないわ、それにトオルだって…大変でしょ?」
「お金なら昨日もらった分でしばらくは安泰だからね平気だよ?」
また小さな舌打ちが聞こえたが空耳だろうと無視する。
ーー「はい、お待たせー海鮮パスタ二つー」
「わぁー美味しそう!!」
カレンが子どもみたいにはしゃぐ、僕が料理の見た目よりそのカレンの行動に驚いていることに気づくと、一瞬でもとのカレンに戻る。
「何こっち見てんのよ?」
「なんでもなーい。」
別に見とれていたわけじゃないんだからね。
ごまかすようにフォークに一巻き、そして口に運ぶ、芳醇な海の香りが口全体に広がる。
「「何これ旨っ」」
二人の声がシンクロする。はにかむカレン、マジかわいい。
ーー「ごちそーさまー」
「ここ、チーズケーキが美味しいんだ、食べる?」
「食べる!チーズケーキ大好き!」
甘いものについて話してるときの女の子はやっぱり素に戻るんだな。本日二回目の素のカレンに満足しながら、チーズケーキを二つ、僕はブルーベリーのジャム、カレンは蜂蜜入りのを注文する。
「この後はどこ行くの?カレン」
「トオルはいきたいところ無いの?この街に来たの最近でしょ?」
「え?なんで知ってるの?」
「いや、あれよ、足取りが田舎者みたいだからよ。」
確かに僕の住んでいた町は地方都市だったけど足取りでわかるものなのか。
「はい、お待たせ、私お手製ブルーベリージャムのチーズケーキとメイプルチーズケーキだよ!」
「え、アンジェリカさんがこれ作ってるの?」
「おとうさんがこんなの作ってるところ想像できる?」
最後の一言のなるほど、と思わせる感じはすごかった。
ーー「トオル、はい、あーん」
目の前で赤面しながら食べかけのフォークであーんをしてくる天使が居る、さっきまでの態度はいったい何だっんだ、あれか、少しあげて思いっきり落とす、少しあげて思いっきり落とすの繰り返し的なあれか、あれなのか?
そんなのことは置いといて今を生きる僕は顔を突き出し口を開ける。
「何だろう、普通の五倍くらい美味しいんだけど。」
思ったことが口から出てしまう。やばい…舌打ちが来る…
「なら、よかったわ。」
そういうと何事も無かったかのようにカレンは食べ続ける、舌打ち抜きで。
僕らはそのあと中々目を合わすことが出来なかった。
ーー「それで、カレン、次はどこ行くの?」
「だから、いったじゃない、あんたのいきたいところに行こうって。」
「いや、その、カレンの言ったとおりさ?僕さ?」
「ああ、そうだったわね、じゃあ行きたいところとか、やりたいことを言ってくれれば案内するわよ?なんなら荷物は一度宿に置いていってからでもいいわよ?」
しばらくなやんで結論づいた。芝生のある公園に行ってお昼寝でもしたい、と。
「変わったやつよねあんたって、せっかく私が案内してあげるって行ってるのに……」
「まあ、いいじゃないか、ゆっくりした休日ってのも」
本当はガリルと行くはずたったクエストはカジノの修復の方を手伝うように頼まれたガリルのおかげで中止となった。そのおかげで僕は今を彼女と街を歩いている。
それに彼女は今はどこのギルドにも入ってないらしく、帰り際にでも誘うつもりだ。
「ついたわ。」
宿から徒歩十分の場所にあるその公園はブロックで作られた港公園とは違い自然あふれる作りとなっていた。
「おおー!そこの木陰にでも行こうか」
「ちょっと本気で寝るの?」
「ああ、ごめん、これで解散する?」
「別に良いわ私は本でも読んでるわ。」
木陰で二人で木によりかかる、僕は昨日は買った汚れてもいいクエスト用の服だが、カレンはお出掛け着を着ている、冷静に考えれば、僕も少しくらいおしゃれするべきだったかもしれない。
「それじゃあ…おやすみ。」
「ええ。」