魚は美味しい
ーー「お…い…きろ…おき……トオル!」
その声で僕の意識は覚醒する、ドアの前でガリルが待っている、ブーツを履きドアを開ける。
「ごめんごめん。」
「おう、行くぞ」
階段を、降りて食堂へ行く
「おばちゃん、二人分よろしく。」
「あいよ。」
二つのお盆が出てくる、お盆にのせられているの、白米、魚の煮付け、味噌汁に……きんぴらゴボウ…?日本かよ!日本かよ?あれ、
「え、え、お、え、お、えあ、これはいったい?」
「何って晩飯だろ?」
ーーーーー「ハッ!夢か…さすがにこの世界できんぴらはないわ…」
独り言を呟いていると足音が聞こえる。時計を見ると二時間たっている。ガリルが来たのだろうか、ドアを開ける
「やぁ、ガリ……すいません間違えました。」
明らかにガリルじゃない、ガリルはこんな良い香りしないしこんなに小さくない。二周り、いや八周りくらいかでい。
無言で去って行く、これ以上関わるなということだろう。若干あたふたしていると、上から今度は本物がやってくる。
「よっ、トオル、行こうぜ」
「ああ。」
階段を降りるとそこにはすでに数名の先客が居た。
「おばちゃん、二人分よろしく。」
「あいよ。」
厨房から出てくるのは二つのお盆……あれ、これは正夢か?そんなことを思いながら、中身を見る、白米、まあこれはさほど驚くことではない。続いて魚の煮付け……スープ!サラダ!助かった!イェイ!、何を喜んでるかわからない僕はガリルと共に四台ある八人掛けテーブルの、うち一番近いテーブルの厨房側に向かい合ってすわる。要するに最短距離だ。
「旨ぇ。」
「ああ、旨い、良い宿紹介してくれてありがとう。」
「困ったときはお互い様ってな。」
はにかむガリル、おまえ良いやつすぎるだろ。
ーー「なぁ、この後時間あるか?」
嫌な既視感に襲われる……
「あーいや!その!ね?」
「別にどっか連れ回そうって訳じゃねえよ」
ああ、表情から察された、ポーカーフェイスは得意なのに。
「おまえポーカーはできるか?」
ポーカー、特にホールデムは僕の特技だ。
「どんなルールのやつ?」
「場に五枚手札二枚の5-2形式だ」
これは一気に金を稼ぐチャンス!!
「得意なやつだ、この後大会でも開かれるのか?」
「察しがよすぎんだろ、俺、ポーカーフェイスに自信あるのに。」
これで一勝一敗だ。
「何時にどこで?」
「九時から、カジノでだ。」
この世界ではカジノが合法なのか、良いことを聞いた。
あっ…しまった…軍資金がない…
「ああ、生憎…その…」
「軍資金くらい貸してやるから二倍にして返せ」
またばれた。一勝二敗。
「かつ保証は無いのに?」
「それこそギャンブルだ。」
ガリルは本当に良いことを言う……
ーーーーー一時間後の八時半、僕らは宿から徒歩十分のカジノの入り口に来ていた。
「しゃー稼ぐぞー!」
「まあ、参加者二百位は居るから安心しろ、最下位はない。」
ガリルたちを含む多くのプレイヤーは知らない、今夜の相手の中に確率論を頭に完璧に叩き込んだ、最強のプレイヤーが居るとは……。
カジノに入り奥に進んでいく、そこは大きなホールでテーブルが二十五台くらい置かれている。
「受付はあっちだ。ついてこい。」
あたりをキョロキョロしながらガリルについていく。エルフ、ドワーフ、獸人、もちろん人間も、その他諸々多くの種族が居た。
「ガリル=タイタンとエドワード=ストラの代理でトオル=タカサキだ。エドワードは風邪を引いたため代理で出場させてもらう。」
「はい、確認しました。では、お二人ともこちらのナンバープレートを胸元に。」
渡された番号はガリルが76僕が77、幸先の良いスタートだ。
「それでは、お二人は…あと二十分後にテーブルの抽選がございます。それまでしばしお待ちを…」
ーー「なぁ、ガリルところで優勝賞金で幾らだ?」
「ん?ああ、白銀貨十枚と言ったところか。」
硬直する…硬直する…硬直する…
「白銀貨十枚って、一千万ピコか?計算間違ってねーか?」
「いいや、間違ってねーぞ、ちなみに参加費は……」
その声を遮るようにナンバープレート50から100までのテーブルの抽選が始まる。僕は七番テーブル、ガリルは十三番テーブルだった。
「んじゃ、グッドラック!」
「おうよ!少なくとも一次は勝ち抜けよ」
ーーーーー「降りる」「降りる」「レイズ」「コール」「レイズ」……あっという間に七番テーブルは二人だけになった。
ーーside 豪運のハーバーー
「おい坊主、よくここまで残ったな。」
俺はこの方大事なギャンブルで負けたことがない、それは俺の異能〈豪運〉のおかげ、一日三回、任意のタイミング手で奇跡をもたらす。
「ああ、おっさん、おっさんもよくここまでこれたね。でもお疲れさん。ここで終わりだよ。」
「なめんじゃねーぞ。ガキが!!!」
おちょくった相手におちょくり返される、いかんいかん。とりあえず配られる前に三回の内の一回目を発動。ポケットカードにはハートのAとダイヤのAがくる。
「(来たっ!)」
実際にそれなりの強さを持つ俺はここまでその実力のみで戦ってきた、その俺が能力を使えば……最強だ。
「コール」「チェック」
フロップが開く、クラブのAとスペードとハートのQの二枚。
「(ナッツフルハウス!勝てる!確実に!)」
「レイズ」「コール」
双方のチップの半分をかける
馬鹿め…俺の勝ちは確実なんだよ!
ターンが開く
スペードのジャックか、ゴミカードだ。俺は勝ちを確信する。だが相手を逃がさないためここは慎重に…
「レイズ」「コール」
双方の残りのチップの半分ほどをかける、偶然にも残ったチップは同額だった。
馬鹿かこいつ、乗ってきやがった。
そしてリバー、スペードのエース。エースのクワッド完成!必勝!
「オールイン!」「ハァ、コール。」
どうやらここまで来たのは偶然だったようだなガキが!
俺の勝ちだ!
「エースのクワッド!」
そう言いながら俺は相手とほぼ同時に手元の二枚のAを場に突き出す、歓声が起きる。なぜなら七番テーブルの勝者が決まったのだから……
ーside トオルー
フリップが開く、おそらくこのゲームはこのテーブルさいごのゲームになる。何故なら相手の表情が一瞬緩み、強いカードが来て、最後までノリノリに来るときに見られる左の耳たぶを触る癖が出ていたことを後で指摘してやろう。
僕のポケットカードはスペードのKとスペードの10
相手はレイズする、僕もコール。
ターンが開く、スペードのJ、おそらく相手はフルハウスかツーペア。僕はこれでロイヤルフラッシュドロー、確率は四十六分の一、2%より少し高いくらいだ。相手はレイズ、ガリルには悪いが乗らせてもらおう。
「コール」
リバーが開く…スペードのA、昔麻雀で初めて役満そろえた時バリの興奮だった。最も表情には出さなかったが。
相手はどうもエースのクワッドが完成したのだろうかオールインしてくる、もちろん僕はコール、何故ならナッツ、必勝だから。
相手は自信満々でクワッドを見せつけてくる、同時に僕はロイヤルフラッシュ。
「フルハウスは降りられないってね」
最強の手を見せつける。どっと歓声があがる。そりゃそうだ。全ての組み合わせの中で四通りしかない超レアの役だ、ここに居るぼぼ全員が始めてみただろう。
「サンキューお魚さん。これだから魚釣りはやめらんない。美味しかったよごちそーさん。」
魚 海外では簡単にだまされる、所謂カモをフィッシュと呼ぶことから。
ホールデム ポーカーのルールの一種
フロップ、ターン、リバー ホールデムで開かれるそれぞれのカードの名前
チェック 特に何も居ないこと
コール 同額を賭けること
レイズ 掛け金をつり上げること
フルハウス ポーカーの役の一つ
クワッド フォーカードのこと
ロイヤルフラッシュ 日本ではロイヤルストレートフラッシュと呼ばれているポーカーでの一般的に最高役のこと。
ナッツ その時点で想定される最高手のこと。