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異世界ギルドは当然歩合制  作者: Whale
僕らのプロローグ
2/20

気まぐれな神と怠惰な少年

「ああ〜死んだ〜。弱っ!弱っ!たったの2カ月!今までで最弱!しかも!引きこもって!ばっかだし!寝込み!盗賊に殺されるとか!なめてんのか!」


世界最強の創造神は一つの命の灯火が消えたことをなんとも思わない。唯々自分が楽しければ良い気まぐれな神は暇な時間の大半を自らが管理する世界から他の世界、所謂、異世界トリップをさせて、その光景を見て楽しんでいた。


先ほど死んだ男はアルガステラという世界に居た人間でその世界では大気汚染のせいで地下暮らしを余儀なくされていた、そんな太陽を見たことがない彼が突然一面が砂漠の世界デストラテに転送された。


全く逆の性質を持つ世界で2カ月を生き抜いたことは十分賞賛に値するのだが神は満足しなかった、なぜなら気まぐれだから。


「あ〜次だ、次だ。今度は…う〜ん…平凡な世界から異能者たちの世界なんてのはどうだうか!そうだそれが良い!」


しばらく、正確には十年近く切ってない銀髪を揺らしながらその神は宇宙と呼ばれる世界で一番平凡な惑星地域の生命体、つまり地球の人間をすべてが異能者たちの世界イグニオンに送ろうとしていた。


「テテレレッテレー七十億面ダイス〜」

これは全地球人の名前が書かれたサイコロ、神が即席で作った。


「さあ〜私の新しいおもちゃよ楽しませてくれよ?」


サイコロを振る、ひたすら回る、なぜならほぼ球体だから。やがて静止する。


「ん〜と、日本ていう国の、おお学生か!高崎徹君、おめでと〜」


ーーーーー「そんでさ〜孝彦がさ……」


僕の視界が突然暗転する、一瞬の完全なる闇、その後あたりが明るくなる。もしかして夢でも見ているのか?そうでもなければこの状況は説明がつかない。何故なら昼休みの教室で昼飯を食べていたのに突然、見慣れない森で。自分より大きい黒い狼の群れに囲まれるなんてあり得ない。


「ちょつとまった。夢だろこれは。あり得ない、あり……」


頬をつねる、痛い、おかしい、再度つねる、痛い、これは現実なのか、僕の頭は今までにないほどに回転する、回転する、回転する、まるでオーバーヒートしそうだ。


「冗談だろ?おい?」


圧倒的な知能を得た僕らは常に捕食する側だった、だが生憎、こいつらを知能なんてのでどうにかする術はない。肉体ではまず無理だつまり、勝てない。直感でわかる、僕はここで死ぬ。それは揺るぎない事実。


人は極限状態になると案外冷静になると何かの本で読んだことがある。僕のこれはきっとそのことだろう。


「グォーーーン」「グオーーーーーン」「ガゥガゥ」……


終わりだ、回りには見たことのない木々、足元は泥濘んで走れそうにもない、五体の中で一番大きな個体、おそらくこの群れの長だろう、そいつ以外が四方から詰め寄ってくる。


「ああ、母さん、父さん育ててくれてありがとう、忠司、お前は僕の分を生きろ、ああああああこんなことになるなら美紀ちゃんに告白すればよかった!あああああ!くそがぁあああ」


咆哮虚しく、奴らの叫び声にかき消される。じりじりと圧倒的な力の差を見せ付けるように詰め寄ってくる、おそらく直ぐに楽には殺されないだろう、遊ばれてから殺される。余計つらい。


「ガォーーーン」

向かって左側から比較的明るい色の黒さの狼が飛び出す、それを合図に四方から一斉に飛びかかってくる。


「さよなら、世界……」



その一瞬が永遠に感じる、十七年間の思い出が次々蘇る。ああ遠足、また行きたかったな。修学旅行楽しかった〜、去年はキャンプもしたっけ、今年の夏もする予定だったのにな〜。ああくそったれ…あれ、思ったより長…い…?


僕はふと閉じていた目を開ける、そういえば誰かが言ってたな、奇跡ってのは限りなく起きる割合が低い現象のことを言うけど、いつか誰にでも起きるチャンスはあるって。




ーーーーー「わぁお!死に際に異能が発現したか〜楽しませてくれるな、こいつぅ!」


神の部屋から見ていた彼は新しいおもちゃは楽しませてくれる、そう確信し特別ボーナスとしてプレゼントを贈る。


金貨三枚。イグニオンにおける大人一人が三ヶ月暮らせるだけの価値がある。イグニオンには銅貨、銀貨、金貨、白銀貨があり、それぞれ一ピコ、百ピコ、一万ピコそして百万ピコ、一ピコは大体日本で言う十円だ。



ーー「生きてる…!」

僕の回りには四つの無機質なサッカーボール大の球体が浮いていた、狼たちの牙や爪を受け止める形で。


「グルルルル」「ガオーン」…


四匹のうち二匹が交代する左右に若干のスペースが生まれた。何が起きたかはわからない。だが僕は生きている!


僕の頭の中でこの後どうするべきが討論大会が開かれる、博識な彼らの決着が直ぐにつくわけもなく。再度四方から、今度は高さもタイミングもあえてバラバラに第二波が来る。


止めてくれっ!そんな言葉が条件反射で声に出る、するとどうだろう先ほどの球体が再度彼らと僕の間に入った。


「そういうことか……」


主催者の都合で無理やり終了となった討論大会はたった一つの結論のみを導き出した……なんとかなる、と。


一つの球体の制御に集中する、すると数秒のラグをおいて思い通りに動く、要練習と言った所か。操ったその球体を最も弱そうな左側の、現在は左斜め前にいる狼の眉間を狙って加速させぶつける。


「ワオーン」

それは小さく悲鳴を上げながら後退しようとする、しかし生憎地面は泥濘んでおり後ろ足を滑らす。転んだところに他の球体を操作し再度眉間をめがけてぶつける。


さっきよりは威力も精度も少しばかり上がったようだ、さらに、右側にいた個体、現在は背後にいる狼の右前足による攻撃を最初の球体を飛ばすことで防ぐ、防戦一方ながらも様になってきた。



その時一筋の弾丸がその狼のこめかみを貫く、誰かが来たようだ。いい人なら助けてもらおう。


左からの狼のかみつきをアッパーのような形で遮る。ずいぶん様になってきた、だがなんだ眠たい……


遠くから声が聞こえる……「だ……じ…う……か…」


安心したその瞬間、僕の意識途絶えた。













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