謎の少女 5
エルはクロが女の子である事を知った。クロの顔も見た。未だにクロの頬は赤く染まっている。
「あんまりジロジロみないでほしい……」
クロは小さな声でエルに向かって言う
「なんでだよ、いいじゃん。別に気にするような事じゃないだろ?左右の瞳が違っていようがクロはクロだ!」
「良くない!気にしてるから今までずっと顔を隠してたんでしょ!ボクの気持ち考えてよ!」
クロは、エルが自分の気持ちをわかってくれていると信じていた。だから余計に腹が立っていた
「隠すようなもんじゃねェだろ? 綺麗な良い眼じゃねェか、今まで隠してきた方が勿体ないだろ」
エルのその言葉にクロはピクリと肩を震わせた。そして、続けてエルは言う
「これからはフード禁止な! 綺麗な眼が見えねェだろ? 」
エルに言われてクロが言う
「わかった。ボクもうフード被らないよ……それでもしこの眼の事で笑われたらエルが責任取ってよ? 」
「あぁ、そんときは俺がぶん殴ってやるさ」
ーーーそれから、時間が少し経過した。 時間はもうすぐで日が変わる時間帯。エルとクロはまだ寝ておらず、夜の時間を過ごしていた。
そんな中、部屋の中にあるテレビで王国都市のニュースを見ていたクロが話題を作った。
「ねぇ知ってる?最近この学園街で無能力者が相次いで失踪してる事件」
丁度その頃、テレビではそのニュースが流れていた。ここ二、三日はこのニュースで持ちきりになっているらしい
内容は王国都市学園街。つまり、今エル達が住んでいる区域。そこで無能力者達が次々と姿を消して行くという何とも怪奇な事件だという。
「知ってるが、それがどうかしたのか?俺は無能力者じゃないから興味なかったけど」
エルはクロの出した話に乗りかかる。
「いや、特にどうもしないんだけどさ、怖いなぁって……ボクも今は一応無能力者だし」
ニュースでは今日で失踪者は百を超えたと報道されていた。そしてクロは自分が無能力者なので、怯えていた
「そっか……クロって無能力者なんだな、知らなかった。 じゃあなんで“武器”持ってないんだ?」
武器。つまり護身用の凶器のこと。無能力者には王国政府より護身用に武器を一つ所持する事が許可されている。王国都市には人口の過半数が能力者達の集まりの国。そして、その能力は使えば相手を死に至らす事ができたり、あるいは王国都市を滅ぼす事ができるかもしれないものがある。しかし無能力者ではそのような者に襲われたら太刀打ちできない、そこで政府は護身用にと武器所持の許可を出した
「いや、それは……えっとね。 エルがボクを守ってくれるからだよ! うん、ボクにはエルという武器があるから」
どこかぎこちない返答に、今考えたような台詞でクロは言った
「……嘘付け、お前俺と会う前から武器持ってなかったじゃん」
図星だった。それはクロの表情がそう言っていた。
「まぁ、そんな事どうでもいいんだけどな。クロが俺の事を武器だって言うんなら、守ってやるさ! 全力で!!」
エルはクロにそう言われて顔から笑顔が零れていた
そのエルが、明日の事について話を変えた
「明日の事なんだけど、これからクロはここで住むわけだし、何かとお金に困るだろ?食費とか…。 そこで俺の友達に会いに行きたいんだけど」
エルの話にクロは質問した
「会ってどうするの?」
「お金を借りるっ!!!」
エルは偉そうに仁王立ちをして言い張る。しかし、言ってる事は最低だった。
しかしクロは何も言い返せなかった。自分が居候する事で生活費が倍になるから、お金を借りるという手段に至ったわけだからである。そのため、クロは苦笑いをしてその場を凌いだ
ーーー明日に備えてエルとクロは眠りに付いた。その頃にはすでに日付けは変わっており、エルは部屋にあったソファーで、クロはエルが今まで使っていたベッドで眠った。
ーーーー場所は変わり、ここは王国都市学園街の一角にある今は潰れた廃工場。鉄筋コンクリートや重機が放置されたままの無法地帯になっていた。
そこに、座り込む百は超える人々。そして鉄筋が重ねられた上に立つ一人の男。
彼は高らかに笑い、言う
「ふははは……この俺こそが最強!そうだろ?お前らぁ!」
鉄筋の上から見下す男は地面に座り込む百人の人々に言い放つ
そしてその誰もが揃ってこういう
「はい、マスターこそが最強です!」