表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇姫~Yamihime~  作者: ミゾレ
謎の少女
4/8

謎の少女 4




マシンガンによる弾痕が店内に無数に残り、窓ガラスが砕け、照明も割れ、無惨な店内となったレストラン。他の客や従業員達は、頭を抑えしゃがみ込み、この一瞬の出来事を理解する者はいない。




「……ふぅ。ったく、無駄に疲れた。よっしゃ!クロ帰ろーぜ!」




エルは深く息を付き、振り返り、クロに向かって言う




「あは、あははは…やっぱり凄いや鬼の能力って。……ん?ってどこに帰るのさ!ボクは帰るとこないんだよ?」




今のクロに帰る場所はない。それなのにエルは、笑いながら帰ろうと言っていた





「はぁ?何言ってんだよ、クロ。お前の住む所なら俺の寮だろ?ほら、行くぞ」




何食わぬ顔でサラッと口に出すエル。この時エルは全く気づく事はなかった。クロの両目から頬に伝う涙が零れた事を。





「うんっ!」




フード越しに笑うと、クロはエルの後ろを歩いて行った。







ーーー場所は変わり、エルの寮室。





「ここが、俺の部屋であり、これからお前の住む場所でもある。まぁこれからよろしくなクロ!」



エルの寮室は1LDKでできており、男子学生が一人暮らしするには十分すぎる部屋になっている。




「でも良かったの?ボクみたいに正体も隠してるような人を泊めても」




「あぁ、問題ないさ。今からその顔見せてもらうから。あ、嫌だっつっても無理矢理そのフード引っぺがしてでも見るからな!」




「うわぁっ!と、とんでもない寮に来ちゃったよボク!?ごめん、ボクここから出るね?」



そーっと廊下を歩き寮を抜け出そうとするクロに向かってエルはいう




「ほぅ、まさか飯の仮を返さないつもりなのか〜?」




「うわぁー!!エ、エル!騙したなぁ!ボクは一緒に来るか?って言われたから来ただけなのに!そんな酷い奴だったとは!」




クロは失望した。不良に絡まれていた所を助けてもらい、更には強盗犯も撃退してくれたエルが、そんなに卑劣な考えの持ち主だったことに




だが、エルはそのクロの言葉を聞いて、クスっと笑った




「ほんとリアクションが一々面白いよなクロは。俺が友達の嫌がる事をすると?クロが嫌なら別に正体分からなくてもいいよ」





「その方が酷い!ボクを騙すなんて!もういいよっ!お風呂借りるからね」





クロはエルにからかわれた事に恥ずかしさからイラ立ち、お風呂場に向かって歩いて行った。




「なんだあいつ?やっぱおもしれェな」



エルはもう一度笑い、自分のベッドへと潜り込む。



風呂場からはクロの鼻歌とシャワーの水音が床を弾く音が混ざり聞こえてくる。




「あ、そういやクロのやつ着替えとかあるのかな、まぁ最悪俺の服でもいいだろ」





エルは、クロでも着れるだろと選んだ服を手に取り、風呂場の脱衣所まで行く。



脱衣所には綺麗に畳まれたフードマントが置かれており、エルはその横に持ってきた着替えをそっと置いた。



その時にふと。フードマントの下に畳まれていた縞々の生地に目が行く。




「……まさか、いやいや、そんなわけないよな、うん。ないない……でも、気になる……」




エルは何度も何度も頭の中で否定し続けたが、遂にその生地を手に取り出した





先程まで頭の中で否定していたものが全て砕け散った。頭の中で否定し続けていたものが、そこにあったからだ。





「じょ、女性物の下着!?」




エルが手に取り出したのは確かに女性物のパンツ。ボーダの入った物だった




その時、運悪くも風呂場からクロが出てきた。湯気に包まれたクロ、さっきまで隠していた顔も全て露わにした姿でエルの前に現れた





「………」





「………」






エルとクロの目が合い、沈黙する事その間約5秒。




みるみる顔を赤らめて、真っ赤になった頃、クロはこれまでない程の声で叫ぶ





「きゃあああぁぁぁぁああーーーっ!!!」





「ち、ちちち違うんだ!クロ!これには深い訳があってだな」




「言い訳なんていらないからぁ!まずこっちを見るなぁ!そしてそれ返せぇ!バカエルぅ!!!」



エルが手にしていた縞々を奪い取り、そしてエルに向かって強烈なビンタを左頬に浴びせた






ーーーーそれから10分後。




エルは床に頭を付けてクロに謝罪しまくっていた。すなわち土下座




「ほんっとにごめん!まさかクロが女の子だったなんて知らなくて、着替えを起きに行った時にふと目にはいった縞々が気になって」





エルは土下座をしながら謝り、少し顔をクロに向けた




「もういいよ!まったく信じらんない!顔も見られたし……。ちゃっと謝ってくれたから許すけど、本来なら死刑なんだからねっ!」




クロが優しい女の子で、土下座で済んだエルは、先程クロが言った言葉を思い出す。



それはーー「顔も見られたし」の部分である




さっきまで謝る事に必死で顔などジロジロ見てる時間がなく、はっきり見ていなかったエルはもう一度顔を確認した。





白髪のショートカットに、左眼には綺麗な真紅の瞳で右眼には宝石の様に輝く金色の瞳。小さな顔立ちで可愛らしい少女にも見えるし、まだ幼い少年にも見える中性的な顔。だが、正式な女の子である。




「綺麗な眼だな…」



「んなっ!?か、勝手にボクの顔を見るなぁ!ボクはこの眼の所為でフードを外したくなかったんだ…他とは違う変な眼だから…」




「変じゃないさ、オッドアイ。かっこいいと思うぜ?」




「ボクは女の子!かっこいいなんて求めてないんだけど?」




むすっといた顔でエルに言うと、エルは直様言い直す




「ごめん!可愛いと思うよ」





「う、うるさい!バカエル!」







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ