謎の少女 3
届いた料理をクロはお箸を使い、黙々と食べる。エルはそんなクロを見つめながら、ゆっくりと食事を進めていた。
「よっぽどお腹空いてたんだな」
エルの問い掛けにコクリと頷きながら料理を食べるクロ。一通り口に頬張ると、ゆっくりと噛みながら一気に飲み込んだ。
「ふぅ……。美味しかった、ありがとねエル。そういやボク、もうかれこれ2日も何も食べてなかったんだよね。あははは…」
正直にエルは驚いた。見た感じエルと同じくらいの学生が2日も食事を摂ってない事に
「なんで?なんで何も食べなかったんだ?お金なかったのか?」
「そうだね、そうなるかな。それに住む所も今は無いわけで、そうすると必然的に食べるものも無くて」
いったいクロに何があったのか、何故この学園街で学生がこんな不自由な生活をする羽目になるのか分からなかった。
この学園街は、その名の通り、学生が勉学に励むため、必要最低限の物以外の施設がなく、学園街の殆どが学生達の住む学生寮となっている程の街。しかもその学生寮の寮費は無料。すべて王国都市が出しており、本来ならなに不自由なく生活できるはず
なのにクロは、それに全く当てはまっていなかった。
「どうしてこんな事になったか教えてもらえるかな?」
「えっ!?どうしてって何がなの?」
クロは全く話を理解していなかった。今の話を考えると、クロが2日間もの間こうなった理由をエルが聞きたい事くらい分かったはずなのに。
そこでエルは言葉を付けたした。
「この2日何も食べれずに寝泊まる所もなかった理由だよ」
「あぁ、その事ね。……本当に言っても大丈夫かな?知らないよ?エルも巻き込まれるかもしれないんだよ?もう二度と今までの様な普通の生活が送れなくなるかもしれないよ?それでもいいんだね?」
「あぁ、上等だ。最初から俺は普通の生活なんてしてなかったし、どんな事があっても俺は困った奴の味方なんだ!」
「……そう。じゃあ言うね…」
今一度エルの心意気を聞いて、クロは言い出した。
ーーー「ボクね。今この王国都市に命狙われているんだ」ーーー
それ聞いた瞬間、エルの頭の中が真っ白になっていった。
「嘘、だろ?命狙われている?王国都市に住む人間が!王国都市に狙われるなんて可笑しいだろ!」
バンッと強くテーブルを叩き、声に出して言った
「ちょっ!?エル!大きな声で言わないで!」
その次の瞬間だった。レストランの窓ガラスが激しく割れて、そこから黒い目出し帽を被った6名の強盗が、マシンガンを構えて現れた。
「よーし、大人しくしろ!今からここは俺たちが支配する。殺されたくなかったら大人しくしろよ?言っとくけど、俺も能力者だ」
強盗犯のリーダーはマシンガンを構えてそう言いふらす。
そして、部下にレストラン客及び従業員の携帯電話など通信機を回収するように指示した。
「ど、どうしよボク携帯電話とか持ってないよ」
「安心しろ、俺が片付ける」
強盗犯の部下達は次々と通信機器を回収し、遂にエルの前まできた
「ほら、寄こせガキ」
「すみません、俺今携帯電話持ってないんですよ」
エルはそういうとニヤリと笑った。そして
「いや、持ってるには持ってるんですけどね?…テメェらに渡す携帯電話が無いって言ってんだよぉ!」
椅子に座っていたエルはそのまま回収にきた強盗犯の顎にアッパーを繰り出した
「ぐはぁ!このクソガキがぁ!」
飛ばされ倒れた強盗犯はすぐさま立ち上がり、手に持っていたマシンガンを乱射しようとする。
が、すでにその間合いにはエルがいて、殴り飛ばし、その先に居た二人の部下にぶつける。
その間約5秒程の出来事だった。
そして、それに気づいたリーダー含め3人は一斉にエルに向けてマシンガンを撃ち出す
ガガガガと鳴り響く銃声に客達は悲鳴を上げる。
「へへっ、バカな子供だぜ、能力者だったんだろうが、呆気なかったな」
「正解だ、俺は能力者だ。けど少し違うんだよ…俺はバケモノって呼ばれてたんだが、その理由わかるか?」
銃弾を撃ち込まれて尚、その場に立つエルはバケモノそのものに見えた。そしてエルはゆっくりと強盗犯に向けて歩き出す
「バケモノめっ!」
強盗犯達はそういうと全ての弾を撃ち出した。
弾切れになると、マシンガンをエルに投げつける。その一つを受け取り、軽く握り潰した。
「へへへっ、残念だったなぁ。まさかこの俺がいるレストランで強盗起こすなんて不運にも程があるんじゃねェか?俺の能力は鬼そのもの。力も瞬発力も肉体の強靭差も全て鬼そのものなんだよ。つっても鬼がどれほど強いのかわからねェよな?教えてやるよ、今すぐ立ち去らねェならなぁ!」
エルに恐れを為した強盗犯は気を失った3人を連れて店の外に逃げ出した。しかし店の外では既に王国都市の秩序を守る騎士団、治安隊が囲んでおり、直ぐにお縄になった。