謎の少女 2
「まって!……ありがとう。助けてくれて」
エルが立ち去ろうとすると、その人は駆け足で近寄り、そう言った。
「俺は当たり前の事をしたまでだ、別にお礼される様な事じゃないだろ?」
エルはそういい、また歩き出す。
すると、今度はエルの後ろを歩きついて来る。
「ん?どうしたんだ?まだ何か用か?」
エルは立ち止まって、後ろをついて来るマントの人に向って言う
「いやぁ…お恥ずかしい話、ただいま寝泊まる所が無くて、挙句には不良に絡まれるし、お腹も空いたし…」
「はぁ……お腹空いたなら空いたと素直に言えよ…。俺も丁度今から飯食べに行く所なんだ、お前も一緒にくるか?」
マントから続くフードを深く被っているその人は、コクリと頷いた。
ひょんな事から人助けをしたエルは、その助けた人と歩きながらエルが最初から目指していたレストランへと足を運ぶ。
その道中、エルはマントの人に色々と質問をしていた
「お前名前なんて言うの?」
「えっ!?…な、名前…その、えーっと」
エルが名前を聞くと、マントの人は中々答えずに溜め込む
「あ、そっか、こういう時は自分から名乗るのが礼儀だよな。俺はエル。エル・ディークだ」
エルが名乗ると、マントの人は体をピクリと震わせた。まるでエルの名前を知っていたかのように
「エル…。よろしくね、ボクは…その答える事が出来ない…かな。その、ごめんなさい」
エルは不思議そうな顔をしてマントの人の顔を覗き込む
「んー、まぁ何か事情があるんだろ?じゃあ俺があだ名を考えてやるよ…」
エルは思った。このまま名前がわからないままだと何かと不便だと、なのでエルはとっさにあだ名を考える。
「よし、決めた。お前の名前はクロだ!」
クロ。マントの人にそう名付けたのには特に理由などなかった。ただ着ているフードマントが真っ黒に染まった生地で出来ていたので、率直にクロと名付けたのである
それを聞いてマントの人改め、クロはクスっと笑った
「可笑しな名前。でもボク気に入ったよ。ありがとうエル」
そんな話をしながら歩いていると、目的のレストランへと着いた。
エルとクロはレストランに入店すると、店員に連れられて、席に座る。
「ほら、遠慮しなくていいからな」
エルはメニューをクロに手渡すと、一応財布の中身を確認していた
このレストランは、エルにとって行きつけの外食店。自分の好きなメニューはだいたい把握しており、メニューを見なくても大丈夫なくらいだった。
クロがメニューを手に取り、決めると、店員をボタンで呼んで、注文する
注文して、料理が届くまでの間、クロはエルに質問した
「あのさ、エル。さっきの不良達がエルの事をバケモノだとか言ってたけど、ボクにはそう見えないんだよね」
確かにさっきの不良達はエルの事をバケモノと称し立ち去って行った。
その質問にエルは答える
「あぁ、俺は正真正銘のバケモノだ。この能力の所為で俺は子供の頃からの友達も少なかった」
エルは自分の左手を見ながらクロに答えた
「そう…それは可哀想だね」
なぜかクロはその答えを聞いてあまり驚きもせずに普通の返答だった
こうやって話をしている間に料理は届き、エル達は食事を取った。
この時でもクロは深く被ったフードを外さずにいた