謎の少女 1
人口約2000万人程の円形都市。そのうち約1500万人が超能力者という超能力発祥の国、王国都市。
都市の中心には、この国のシンボルでもある身上げるほど大きな城と、城を守るための憲兵達の基地などが配備されていて、ここを中央街と呼ぶ。
更に中心から離れるように、この国の学生に教育の場を作るためにたくさんの学園を設立させている学園街
能力者、非能力者を含めた成人達が主に暮らす一般街と三つの街に分けられ、それぞれ東西南北に一箇所の関門を建て区別している。
三つの街の一つ、学生が集う学園街に彼は住んでいる。
名前は エル・ディーク
短髪の黒い髪に、綺麗な黒い瞳。身長は172cmとそれなりに高い。この国の学生であり能力者である。
その日は星空が綺麗な静かな夜。学園街の頭上に建つ高速道路の高架下の歩道を一人で歩いている。
昼間は車の多く通る場所だけど、夜になると人気がなく静かで、耳を澄ませば虫の鳴き声も聞こえてくる。
この日は夕飯を外食で済まそうと決めていたエルは、その高架下の歩道を一人で黙々と歩いていた。
「さて、何にするか。麺は昨日食べたし、揚げ物も今はそういう気分じゃない」
エルはぶつぶつと呟きながらも、歩く足を止める事なく前へと進む。
歩道を歩いていると、エルの前の方でなにやら不良グループに絡まれている人が目に入った。
「君さぁ、今なにしたの?」
「だから謝っているじゃないか!」
不良グループは三人。リーダー格の金髪に染めた髪と両耳にピアスを付けた男と、その両脇に茶髪と赤髪に染めた、これまたピアスを付けた男二人が、その人に言い寄る。
絡まれた人は、フード付きの黒い生地でできたマントを羽織っており、フードを深く被っているため顔や表情を上手く読み取れない。
「んだぁ!?テメェ、俺の靴踏んで「ごめんなさい」一つで帰れると思ってんのかぁ?」
金髪の不良は、その厳つい顔を、フードを被った顔に近づけ、その大きな手で頭を鷲掴んだ。
「うぅ…はな、せ…触るな」
頭を掴まれたその人は嫌がり、頭を揺さぶり抵抗する。
「テメェ暴れてんじゃねェーぞゴラァ!大人しくしろってんだガキがぁ!」
金髪の不良は頭を鷲掴んだ手に力を込めて言う
「あ''あ''あ"あ"ーーっ 痛い、離せ」
痛み苦しむその人を見て、不良達は笑っていた。
金髪の不良は頭を掴んでいた手で、その人を後ろへと突き度ばした
「おい、それじゃあ金よこせ、それで許してやっからさぁ」
「き、君たちなんかに渡すお金なんて持ってないよ」
突き飛ばされ、尻餅を着いたその人は、今もなおフードを深く被って顔を隠しながらそう言った
その言動に、不良達は切れた。
「どうやら、本気で痛い目に会いたいようだなぁクソガキ」
ボキボキと指を鳴らして責めよる金髪の不良。ピクリとも動かないマントの人。
そして、遂に力強く握り締められた右拳を後ろに引いて、その人に向けて殴り掛かった。
「なっ!?」
だが、それは一人の少年によって、阻止された。
金髪の不良の右腕を少年は左手で掴んでいた。
その少年とは、エルの事である。エルは困っている人を見かけると無視できないタイプの人間であり、こういった厄介事には関わりたくないのだが、つい体が先に動いてしまう
「そこまでしなくてもいいんじゃないか?もうやめてやれよ…嫌がってるだろ」
エルは不良の右腕を掴んだまま不良の顔を見つめながら言う
「んだテメェ!?どこの誰だか知らねェけど、誰に言ってんのかわかってやってんのかぁ?」
金髪の不良は、エルに掴まれた右腕を無理やり離して、エルに視線を向ける
「知らねェよ。けどなぁ、三人で一人の人を襲うのって卑怯じゃないのか?」
「黙れクソガキ。俺がこいつに何しようが俺の勝ーーー「ア、アニキィ!!」」
エルの胸ぐらを掴んだ金髪の不良が喋っている途中に、その仲間である茶髪と赤髪に染めた不良が、リーダー格の金髪の不良を呼んだ
「なんだ?お前ら」
金髪の不良はエルの胸ぐらを掴んだまま顔だけを仲間の方へと向ける
「こ、こいつ例のバケモノっスよ!ヤバイっス引きましょうっス!」
「例の?……ま、まさか!?ーーーっち、クソがぁ!覚えてろよ!」
そのままエルを突き飛ばして夜道の奥へと消えて行った。
突き飛ばされ、尻餅を着いたエルはその場に立ち上がり砂埃を払うと、不良に絡まれていた子に手を差し伸べた
「大丈夫か?ほら、立てる?」
「えっ…、うん。ありがとう」
エルの手を取り、立ち上がると、エルと同じように砂埃を払った
「まぁ、気をつけろよ…学園街の夜は不良が多いからさ」
無事だった事を確認して、エルはそのまま踵を返して、左手を上に挙げて手を振り立ち去る