表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪ノ姫  作者: 岸野 遙
第二章 『三騎 駆け抜く』
8/40

4

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「なんと―――

 な、なんと言うことだ!」


暗い室内。

 巨大な詠晶石に映し出された光景に、その男は驚愕し呆然と呟いた。


「これが、これが我らが信じた守護神の正体であると言うのか!」

「……私にもにわかには信じられませぬが、恐れながら……」


杖を持った男は、驚愕する男に深々と頭を下げた。

 暗い室内では、俯いた男の表情までは伺い知ることはできなかった。


「ならば、契約とは、悲しみと苦しみからの救いとは……」

「おそらくは、自らを贄とし力として糧となる―――

 そういうことなのでしょう。」


杖を持った男の言葉に、わなわなと震える男。


「な、ならば、我が妻は、こんなことのために……

 魔物を生きながらえさせるためだけに生まれ、生き、子を為したと言うのか!」


詠晶石をがしっと掴む男。漏れ出る光景と光が男の苦悩を照らし出す。


「我が娘は、魔物のために生き成長し死すると言うのか!

 認めぬ、認めぬぞ!」

「王……」


王、と呼ばれた男は、一瞬だけ沈黙し。

 ゆらりと顔を上げると、杖を持った男を振り向いた。


「もはや一刻の猶予もならん。

 ベレンよ、エルの成人の儀より前に兵を挙げ、雪姫を―――

 この国に巣くう魔物を討つ!」


「はっ、仰せつかりました!」

「ただちに戦の準備をせい、明日の朝我がじきじきに国に声をかけ兵を募る!

 出立は、明々後日の早朝とする!」

「御意に。では各隊の長には今すぐ指示を出し準備を進めまする。」

「うむ、期待しておるぞ。

 よくぞ言いにくいであろうことを報せてくれた、ベレンよ。

 各隊に指示後、今宵は十分に休んでくれ。幻炎の帝の実力、大いに期待しておるぞ!」

「もったいなきお言葉。

 このベレン、我が命に替えましても我が国に巣くう魔物を討ち倒してご覧にいれましょ

う!」

「うむ。では行け!」


一礼し退出するベレン。

 王は手を突くと、詠晶石の中で繰り返される光景を涙さえ浮かべてじっと睨んだ。




―――詠晶石の中では。

 この世のものとも思えぬほど美しい女が、どこか自分に似た美女の腹を引き裂き、臓腑

を喰らっては隙間に詠晶石を詰め込み続けていた―――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ