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「なんと―――
な、なんと言うことだ!」
暗い室内。
巨大な詠晶石に映し出された光景に、その男は驚愕し呆然と呟いた。
「これが、これが我らが信じた守護神の正体であると言うのか!」
「……私にもにわかには信じられませぬが、恐れながら……」
杖を持った男は、驚愕する男に深々と頭を下げた。
暗い室内では、俯いた男の表情までは伺い知ることはできなかった。
「ならば、契約とは、悲しみと苦しみからの救いとは……」
「おそらくは、自らを贄とし力として糧となる―――
そういうことなのでしょう。」
杖を持った男の言葉に、わなわなと震える男。
「な、ならば、我が妻は、こんなことのために……
魔物を生きながらえさせるためだけに生まれ、生き、子を為したと言うのか!」
詠晶石をがしっと掴む男。漏れ出る光景と光が男の苦悩を照らし出す。
「我が娘は、魔物のために生き成長し死すると言うのか!
認めぬ、認めぬぞ!」
「王……」
王、と呼ばれた男は、一瞬だけ沈黙し。
ゆらりと顔を上げると、杖を持った男を振り向いた。
「もはや一刻の猶予もならん。
ベレンよ、エルの成人の儀より前に兵を挙げ、雪姫を―――
この国に巣くう魔物を討つ!」
「はっ、仰せつかりました!」
「ただちに戦の準備をせい、明日の朝我がじきじきに国に声をかけ兵を募る!
出立は、明々後日の早朝とする!」
「御意に。では各隊の長には今すぐ指示を出し準備を進めまする。」
「うむ、期待しておるぞ。
よくぞ言いにくいであろうことを報せてくれた、ベレンよ。
各隊に指示後、今宵は十分に休んでくれ。幻炎の帝の実力、大いに期待しておるぞ!」
「もったいなきお言葉。
このベレン、我が命に替えましても我が国に巣くう魔物を討ち倒してご覧にいれましょ
う!」
「うむ。では行け!」
一礼し退出するベレン。
王は手を突くと、詠晶石の中で繰り返される光景を涙さえ浮かべてじっと睨んだ。
―――詠晶石の中では。
この世のものとも思えぬほど美しい女が、どこか自分に似た美女の腹を引き裂き、臓腑
を喰らっては隙間に詠晶石を詰め込み続けていた―――
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