初投稿です。ずいぶん昔に書きあげた長編小説を、分割してアップする予定です。
更新頻度や読みやすさなどは手探りで模索していければと思っております。
読みにくいかもしれませんが、気軽に手に取っていただけるよう頑張ります。
どうぞよろしくお願いします。
遠き昔、この地に雪姫なる1人の魔女があった。
魔の肉と人の心を持つ雪姫は、この地で1人の男性と出会い、恋に落ちた。
雪姫に見初められたゼルデア王は、彼もまた美しい雪姫に心奪われた。
想いは通じ合い、ともに王宮で暮らす二人。
二人は子をなし、穏やかで幸せな日々を送っていた。
誰もがこの幸せと繁栄が永久に続くと、そう信じて疑わなかった。
けれど悲劇は、すでに幸せな日々のすぐ背後にまで迫っていた。
常に雪姫が放ち続ける強大な力に、王の身体がもたず、ついに彼は倒れた。
辛さを隠し続けた王、その無理がたたってか、彼は数言の後に息を引き取った。
悲しみにくれる雪姫。
彼女の慟哭は荒れ狂う吹雪となり、辺りを、城を、国を包んだ。
彼女の涙は、吹雪は止まず、誰も近寄ることもできず。人々はただ震えた。
その時、一人の少女が吹雪をものともせず雪姫に歩み寄った。
少女は小さな手を伸ばして雪姫の―――
母親の涙をぬぐうと、こう囁いた。
「私がお母さんを悲しみと苦しみから助けてあげる」
「私が無理なら私の子が、孫が、子孫が。必ず救ってあげる」
「だから、これ以上、お父さんを悲しませないで」
娘の言葉に―――吹雪を納めようと、けれど号泣し。
雪姫は、泣きやむこともできずに、ただ一人城を飛び出した。
たった一つ、娘の言葉だけを希望と抱きしめて―――
この時よりゼルデアは、強大な守護神に護られた雪の国として。
また、女王国家として、新しい時を歩み続けることになる。
この伝承詩は、今から八百年ほど昔に―――
本当に起きた、悲劇を元にしていた。