表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/35

ティティ防具工房

「そんじゃあまた、何かあったら声かけてくれよな!」


クエストを受けた俺は三人に軽く手を振って店を飛び出した。目指すはティティの防具工房! シャンクは悪いが後回しにさせてもらおう。なんてったってもう大幅に遅刻してるからな。できる限り次への準備を整えた上で報告しようという腹だ。


狭い通りを走り抜け、少し広い道に出る。ティティの工房は俺のとこ程じゃないにせよ、町の奥まったところにある。

ぐるぐる同じところを回ったりはしないんだ。ただ、途中の曲がり角が一箇所、大きな木箱の影にあるってだけで。


うん、ここだ。見紛うはずもないぼろい看板。

俺のとこも大概だが。


「おーい、ティティ」


「いらっしゃー……いいぃ!? はー、きゃらめーくってすげぇや」


「なんだ? それ」


きゃらめーく? 伽羅名句? 伽羅を題材にした名句ということだろうか?


馨しき 伽羅の香りは 夢にのみ 現にあるは 防具のカビ臭


INティティ防具工房、とか。いや、蒸れたる防具、でカビ臭は聞いた人の想像に任せるって方がいいか?

……とりあえず名句ではないな。


「へ? 本気で本気のモノホンのジャック!?」


「おう。なんかバグ? みてぇなことになっててな。ちょっくら世界の最果ての塔まで行って来るからなんか適当に見繕ってくれないか」


「いやいやいやいや!」


「なんだよ、ちゃんと金はあるぞ?」


というかここまで拒否されると傷つくぞ?


「違うって! 何でそんなことになってるかの方が大事だろ!?」


「あー、それか」


結構かなり飽きてきたな、それ。


「それか、って! 重大だろっ?」


「いや、考えて解るのか? というより解らないから放置してんだよな、今。そんで解らないことは親父殿に聞くのが一番だろ?」


実際とは微妙に違うが、嘘はついてない。いや、嘘つけないってことはないけどな。

とりあえず議論重ねるより外行きたい。外。


昨日から見てきた外は広く、広く、美しかった。


あれ知ったら店に篭ってなんかいられないな。


「う、そうか、いや、でも、うーん……よし、客なんだよな、考えてるから適当に見とけ」


「おいおいおいおい! 見繕えって言ったよな!?」


「値見たらわかると思うから。……うーん、バグってあり、いや、御父上様の……」


なんか怖えぇ。交友値MAXまで上げててもこいつを親友と呼んだことがないっていうか呼ぶ気があまり、いや、かなりしないのは、この理屈詰めっていうか頭が固いあたりなんだよな。

シャンクも理屈好きだが適度に力を抜くことを知っている。


店主に見放された俺は仕方なく一人で防具を漁る。……カビ臭ぇな、ホント。蒸れることなんてあるまいに。


「情報よこせ」


考えてろよ、もうちょい。まだ見始めてから大して時間もたってないぞ。まあ、とりあえず気に入ったのはあるが。提示して値引き交渉。


「じゃあ、これと、これ、に……これか。定価の40%で売るならいいぞ」


長く使いたいんだよな。つまりしばらく買い換えずにすむような堅いやつ。で、それらは当然値が張る。


等価交換? 価値観なんて人それぞれだろ。


「よし、いつから、どうなった、なにした、なにができる、あと任意で全部話せ。推測はいらないからな」


「あ、そうだ」


ゴン


「よし、とりあえずいつも通りNPC同士なら触れるな。体力は減ってないんだろ?」


「んなわかりきった情報いらねぇ! 価格全部5割り増しだ!」


それは困るな。ジャッキー君に触れなかったりもするからこの情報がまったくの無価値とは限らないじゃないか。


ティティの機嫌をとるため、もとい安く防具を入手するため俺は、とりあえずのことをある程度(ある程度)詳しく話してやる。


それだけで気分をよくしたティティは防具を30%引きで提供してくれた。10%はさっきの慰謝料か? 総額がでかいから10%も結構貴重なんだが。


「ふんふん。あ、それと素材あるんだよな、五割り増しでいいからあるだけ売ってくれ」


なん、だと?


「うち、防具工房名乗ってるけどな、一回も作ったことないんだ。お前も似たような感じだろ? それでさ、売ってくれたらクエストも出すし、それでもっといいのも作ってやる」


どうするか。もちろん五割り増しの値段は魅力的だ。だが俺にも作ってみたいという好奇心がある。自分の工房じゃなくてもプレイヤー用のがあるしな。使えるかは知らんが。

だけど、


「頼む。暇なんだ」


その言葉で俺は今ある素材くらいなんだという気になった。


とにもかくにもこの閉じた町は俺たちを娯楽に飢えさせる。俺は楽しめるもの探しが得意だが、あそこで満足なんてできるわけもない。


大通りの店にならもう素材なんかも流通しだしているのだろうが、ここや俺の店みたいなところで素材<新しい娯楽>が入るのはいつになることやら。


どうせこの後も狩りに行くんだ。ホーンラビットの角の100や200、すぐに獲れる。

ストレージが99までだなんてケチな事はプレイヤーに限った不自由さ。


俺は今ある各種モンスターの角、皮、肉、目玉、等など血も滴るぐらい新鮮なやつを正規価格で売っぱらう。本当に血が滴るのは親父殿の趣味だ。鮮度とかあるし。このあたりがコンクリートワールド<具体的な世界>なんだろうが、うーん。


「うおぉっし! サンキュ! じゃあクエストの発注な! ひたすら軽いのと軽くて堅いのとひたすら堅いのとあと、ちょい変なのはそれ片付けたら出せるぜ!」


おお、……そうだな、軽くて堅いが無難か? だがこの手のクエストの防具はほかと劣れどもある程度の堅さは保障されるはず、ひたすら軽いにするか? いや、ちょい変なのが気になるので、


「ブルーリバーで採れる奴がいいな。そっちにいく用があるんだ」


「じゃあ堅くて硬いのだな。敏捷に劣るのは気にすんな」


【採取クエスト;ブルームッシェルの殻×20】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ