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冒険だ!

「おおっ! ジャック師匠、レベルが上がりました!」


ヤマダが興奮気味に言う。


「おめでとさん。レベルが上がるとステータスポイントが入る。ステータスについてはわかるか?」


ステータスポイントを振れるのは攻撃、防御、敏捷、知識、幸運の五つ。説明が要りそうなのは知識かな。


特殊攻撃に対する防御と攻撃にかかわる部分だが、これだけ上げてもあまり意味がなく、防御や攻撃自体の値がある程度ある上での話だ。

つまり今狩ってるホーンラビットみたいな実態のあるものに対しては無関係だが、どこかで出るであろうゴーストやドラゴンに対して必要な値。


「それについちゃ問題ねぇ、です。俺は防御と敏捷っすね」


Lv.2か。そういやこいつは今日始めてこの世界に来たんだっけか?


今一番強いのって何レベくらいなんだろう?


俺は初まりの町のNPCらしくLv.10だ。これは生まれたときから変わらない。モンスターを相手取ることがなかったからな。だが今は、ごくわずかながらも経験値がたまっている。


ちなみに各種スキルについてはプレイヤーのレベルやステータスとはまた違う扱いになる。


すなわち、使えば使うだけ、倒す敵にかかわらず上がる。ようは慣れだ。


俺の場合一時剣を振るのにはまっていたころに伸ばし、各種剣について15くらいある。片手剣、今使っている両手剣、その他にも斧とか槍とか……剣じゃないな。そして素材のなさから鍛冶師としてのスキル値が剣の類のスキル値より低いという……。俺って何なんだろう?


ところで……、さっきホーンラビットLv.1ってでてたよな?


俺の経験値のたまるのが遅いのってそのせいじゃ……。


「師匠! あれ、なんすか!?」


叫んでヤマダが指差したのはホーンラビットの群れの中に踊りかかってく一頭の黒い狼、レベルは……なんで見えないんだ? ちなみに俺のAIに詳細データがあるのはこのあたりで出るモンスターについてだけだ。


一応全部の名前だけは入ってるんだけどな。


「ナイトウルフ」


そしてそいつは俺の発言に釣られたかのようにこちらを向き、戦闘の体勢に入った。


「おわぁっ、ジャック、師匠、どうにかしてくれ、して下さい!」


おい、言いつつすでに遠く離れているじゃないか。つまりは俺がどうにかするよりない。


もちろん望むところであるのだが。


狼が俺に向かって飛び掛ってくる。


迎え撃つ俺はまず、発動に時間のかかるスキルを選択、


【フロントスラッシュ】


真正面から切りかかる。


一撃では倒せないらしい。そのまま普通に切りかかる。いや、続くようなスキルがなかったんだ。

それでも当てた俺はえらいと思わないか?


次の瞬間やつの牙でダメージ受けたけどな。


初めて体力ゲージが減るのを見て、驚きと興奮を覚える。これが弱肉強食の世界というやつなのだろうか?


次は小技、多少攻撃を受けるのは仕方ない。気にせず次、今度は避けてみる……、


狼が倒れたころには俺の体力ゲージは半分ほどになっていた。


経験値は……お、かなり上がったな。ホーンラビットのみを相手していたらまだレベルアップには時間がかかるだろうが。


シャンクにもらったヒールポーションsをありがたく使わせてもらう。スキル用のマジックポイントも回復したほうがいいな。


それにしてもこれ美味いな、良薬とやらは口に苦いらしいからこれは悪薬……冗談でも殺されそうだ。ダメージはしっかり受けることが確認できたわけだし。


「師匠! さすがっす!結構攻撃受けてたみたいですけど……」


体力についての台詞ってないんだよな。お、これならよさそうだ。


「ぼちぼちだな」


「ぼちぼちって……、なぁ、NPCって死んだらどうなるんだ、ですか?」


「すまないが、それについちゃわからねぇんだ」


普通は死なないし、死んでも元の場所にポップするだけらしいけどな。親父殿のお慈悲か手抜きだ。


だがこのことは言ってはならないことになっていてテンプレにないし、そもそも今の俺に当てはまるかもわからない。


「は? ……だったら! 何でそんな平然としてんだよ!? 本気で死ぬかもしれないんだぞ!?」


(死んだらどうなるんだ?)


この質問に答えてほしい、ふと思った。


「死にたくねぇ! なんで××××はこんなこと、なんで俺がこんな目に!」


この質問、血の通った人間は好きなんだな。親父殿は遊んでるだけだよ。


とりあえず死は避けるべきものらしい。具体的には体力ゲージを空にしないようにすることだな。


「あんたは腹立たねぇのかよ! こんな命を勝手にかけさせられて、……そうか、NPCだもんな、わかるわけねぇよな、所詮AIなんだから」


この言いようには腹が立った。だが、なぜか、反論できないのだ。

システム的にではない。反論が浮かばなかったのだ。


「開発者に会わせろよ! んで直接聞かせろよ、なんでこんなことすんのか」


親父殿に、会う? そして直接聞いてみようか。死んだらどうなるのか、どうして命を賭けることになった血の通った人間が怒っているのか。


それはとてもいい考えに思われた。


世紀の大天才である親父殿ならきっと答えを知っているはずだ。


ヤマダや、ユウヒでもいいのだが、親父殿のほうがきっとすばらしい答えをくれるに違いない。


「よし、いこう」


「なんっ―――……は?どこへだ?NPC」


「俺はジャック、偉大なる親父殿の作った、自分で状況を理解、分析し、行動するAIだ」


だから、わからないことがあるという現状に親父殿に聞くという判断を下した。


まず朝一番でラディンのとこへ行って金を作る。次にティティのところで防具をそろえて、シャンクのところでポーション類だな。今度はちゃんと金を払う。


確か親父殿は世界の最果ての塔でプレイヤーが倒しに来るのを待っているはずだから、そこまで行けば確実に会えるだろう。


レベルも、あと数値にないが多分技量も、今のままじゃそこへは到底行き着けないだろうから戦闘あるのみだな。


やばい、わくわくしてきた。


NPCの俺が訪ねていったら親父殿はどんな顔をするのだろう?大天才が驚きほうける顔。

やばい、見たい。


だがそれ以上に、この世界を見たい。この衝動は多分、町の外に出たいと思ったのと同じ類だ。


もう、そうするしかない。


バグにせよ、親父殿の気まぐれにせよ、何だっていい。

いつまでこれが続くかわからない。


だったら、行けるところまで行ってみようじゃないか。


「あんたは、開発者に会いにいくのか?NPCなんだよな?」


「おう」


さすがに町を出たときと違って装備を整えるくらいはするけどな。

とりあえず朝まではこのあたりでホーンラビット以上、ナイトウルフ未満の敵を探して狩ろう。ナイトウルフ相手じゃポーションが足りん。


「なんでだ? ―――いや、自分で行動するって……本当なのか?」


「おう!」


というか今まで信じていなかったのかこいつは。師匠とか呼んだくせに。


まぁ気にすることでもない。


俺はほうけた状態のヤマダを放って、真っ暗な草原を、強くなるために、敵を倒すという確かな目的を持って、走り出した。

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