助け
持っていた肉を焼き終え、どっこいせと腰を上げたとき、緑の草地の彼方に人影が見えた。
うーんすごいな。あいつ、三十体くらいの鶏や猪、ブルーリバーから引っ張ってきたらしい蟹に囲まれて戦っているのだが、きちんと正確に攻撃を当てている。上手い。
ただ、五分はもたないだろうなぁ。なんたって数が多い。興味深く見ていると、ばちりと目があった。
「く、そっ……。頼む、そこのっ、助けてくれ」
うん? そこのって俺か? だよな。辺りには他にプレイヤーもNPCもいないし、モンスターに助けを求めることはないだろう。
けど、これって、手出ししていいんだろうか?
いやな、ヤマダから教わったMMOのマナーに、横殴り禁止ってあったんだよ。他人の戦ってるモンスターに手を出すなって。パーティ組んでたらいいらしいけどな。
確認したほうがいいか。ウィンドウからぱぱっとメールを送る。『助けを求められたんだが、手出しをしてもいいか?』っと。
「頼む、お願いしますっ」
……返信来るまで保つだろうか? ちょい微妙……攻撃しなきゃいいのか?
ストレージから最後のシャンクのポーションを取り出し、プレイヤーに向けて放る。おし、ナイッシュー。
「つっ、サンキュっ」
彼はちょうど足元に落ちたそれを拾い上げて、ぐびりとのどに流し込む。ちゃんと味わえ……って、んな余裕ないな、すまん。
次からはトットのポーションだ。モンスターたちの攻撃を見ながら、間隔をあけて投げる。うんうん、俺のコントロールはすばらしい。今度投石なんかも試してみよう。
「ぶっ、く」
トットのポーションを飲んだ彼は、一寸噴出しそうになったが、何とか堪え、一気に飲み干す。
おっと、ヤマダからの返信が来ている。五十六秒前か、音を消しているとこういうときは困るんだな。メール受信通知だけは残すか。それで、内容は、と。
『はかいますぐたすけろ』
はか? なんのことだろう。とりあえず今すぐ助けろとある。手出しOKと言うことだろう。基準はわからんが、とにかく行くか。
まず、囲いの薄いところに踏み込んで彼と合流。当人は俺が急に戦闘に参加したことに驚いた様子だ。……まずってないよな?
「っ助かる。後ろ、任せていいか?」
「おう」
よくわからんが、背を向けて戦うらしい。鋏を振りかざす蟹を叩き潰す。斬るって感じじゃないんだよ、これ。
うん? なんか、これ、すごい。彼の動きは知らないが、これだけの量を相手にしているのに後ろからの攻撃がまったくない。全部殺ってくれてるんだろう。これは俺もがんばらないとだな。
前面だけに集中。俺を飛び越えていこうとする鶏に容赦なんかいらない。
敵の群れは見る見るうちにその数を減らし、新たに加わるより消えるほうが多くなり、とうとう俺は自分の向いている方向のモンスターをすべて切り伏せた。




