鍛冶師ジャック
まあ、目に入ったものはしょうがない。俺はリディックの店から大通り沿いに奥へ進み、トットの薬屋、次いでキリィの雑貨屋で用事を済ます。
ポーションの補充と調理器具、水筒に釣竿なんていうのも買ってみた。
売却のほうは結局、クエストの分を残してほぼ全部って感じだな。俺は鍛冶屋だから、ここいらのだと使えるのは貝殻とかソリッドストーンぐらいだった。皮は多少使うけどな。
使えないものを残すよりどっかで旨いもの食うほうが建設的だろ。
買い物を済ますと、次はあの四角い建物だ。
近くで見るとまた迫力があって、何だってこんなにぴっちり四角なんだとか、時計といいこれといいこの町はでかいものが好きなんだなとかいろいろ思うところがある。が、考えても仕方ない。親父殿にあったら聞くさと思いつつ……うわっと、なんかドアが勝手に開いた。
「邪魔するぞ」
「はい、いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか?」
「ここはなんだ?それがわからねぇと、どうにもしようがない」
「はい、お客様は初めてでいらっしゃいますね?ここはギルドホール、皆様の職業のサポート、及び、クラン結成、クラン限定クエストの斡旋などを行っております」
職業のサポート?つまりここなら鍛冶場を借りれるのじゃないだろうか。それにしても何で俺のAIにここの情報がないんだ?別な町だからか?
まあとりあえず、
「頼んでもいいか?」
「はい」
彼女の許可と同時に申請の画面が現れる。うん、これ、でよし、と。
「ではどうぞごゆっくり」
建物内の案内が手に入ったので、それに沿って……うお、階段がない。いや、この小さい部屋の使い方はわかるんだけどな。扉に取っ手がないのにものすごく違和感がある。
長くてまっすぐな廊下を歩き、指定された部屋へ。
「お、ちゃんとそろってるな」
やっとこに鎚、砥石、忘れちゃいけない炉だってある。
「んじゃ、やってみるか」
初めてなんだけどな。まあ、知ってる。なんたって俺は鍛冶師なんだからな。
さて、何を打つか。材料的に<スチールソード>……いや、でも注文しといてナニか?だけどほかに出来るもんもないしなぁ……よし。
【スチルソード作成】
まず、ソリッドストーンからインゴットを作る。
形は両手剣……ん?
【失敗】
……いや、ま、まあ、初めてだしな。材料はまだあるし。一本につき石二つだから、あと二回!
【スチルソード作成】
インゴットを、両手剣の形に……よし。
んで、炉で熱して、取り出して金床へ。
カン、カン、カン、カン、カン、カン
もっかい。
カン、カン、カン、カン、カン、カン
もっかい火に。出して水へ。
ジュワァアァァッ
もっかい火に。さめたら研ぐ、ひたすら研ぐ!
【スチルソード作成成功】
「いよっしゃあぁあぁぁぁぁ」
ここには交友値の低い相手もいない。……喜びを分かち合う相手もいないが。とにかく叫べるんだ!
俺は、町の外へ出た喜びも、初めて敵を倒した興奮も、初めて自分の成すべきことをしたという達成感も全部ひっくるめて、長いこと叫び続けたのだった。