エンプロイタウン
大きさは……そうだな正面から見て、ダーンタウンの0.85倍ちょっと。おんなじように石造りで、その石が赤っぽい。ダーンタウンのは少しコケっぽく緑がかってるんだ。
門をくぐる。おおお……なんか、うん、違う。
たとえばダーンタウン、俺の街だと入った瞬間に見えるのは花壇で縁取られた道。大通りの方は今の時期だとチューリップが咲いてるな。
ところがこの町エンプロイタウンだと、まず目に付くのは馬鹿でかい銀の時計。5mだぞ?何だってあんなにでかくする必要があるんだろう?誰だって正確な脳内時計を持ってるじゃないか。
ほかに家の並びだの、こっからでも見えるあの高い真四角の建物はなんだだの、違いや興味の対象は尽きない。
うーん、まずあの四角いのに行く……いや、全住人を回って話を聞く?交友値をあげるには時間が必要だが、うわさは拾えるからな。あと、食い物はどう違うだろう?全部食べたら金は尽きるな。素材の売却先……加工もしたいからどっかで場所を借りたい。
やりたいことをあげたらきりがないが、そのやりたいことにはもちろん、もっと別な広い世界を見に行きたいというのもあるし、一応の目標の親父殿に会いに行くというのもある。
とりあえず素材の一部を売り払って金を作る。その金でポーションの補給と、調理器具やら水筒やらほしいものを買う!
そうと決まれば探すべきは薬屋と雑貨屋だ。手当たりしだい店をのぞいていくか。そこらで訊いてもいいが、探検するほうが面白いじゃあないか。看板?んなもん見ない振りすりゃあいい。
と、いうわけで、一軒目。門から真正面に一本走っている通りの一番手前だ。隣は人家で、ダーンタウンと同じように看板のかかっている家は少しづつ間隔を置いてたっている。
チリリン
お、初めて効くベルの音だな。
「入るぞ」
「らっしゃい。好きに見てくんな!」
カウンターには気風のよさそうな男。これは魔道具屋か。この世界、明確に魔法というものは存在しないが、運がよくなるペンダントだの、探し物を見つけるためのL字型の金属棒だのがあって、実際に効く……俺はあいにくとその世話になったことがないが。
実際に買うかは別として、とりあえず売るか。たしかこういうところでは目玉とか爪の買い取り価格が少し上がるはずだ。
「すまんがこのあたり、買ってくれないか?」
ウィンドウを操作して現物を見せる。え?必要ないだろって?礼儀だろ、これは。
「お、あんちゃん、新顔だな。どれどれ、ほう、きれいにとってるな。だったらこのくらいでどうだ」
提示された金額は……うんうん、ティティのとこよりいいな。
「ありがとさん。俺はジャック、ティグレス通りで鍛冶屋をしている。あんたは?」
「リディック。見ての通りのしがない魔道具屋だ。よろしくな」
「ああ、よろしく」
リディックへの交友値は30。正常だな。
俺は軽く礼をして、彼の魔道具屋を出た。
さて次は……しまった、看板見ちまった。
誤字修正いたしました。
黄金拍車様、ご指摘ありがとうございます。m(_ _)m
また、「シ」で始まる名前が多かったため[次は]のシェファをファナに変更いたしました。
ジュニーとジェンは他によい組み合わせが思いつかなかったのでこのままで。