episode17-1『黒い魔女』
episode17-1
『黒い魔女』
[part1]
喫茶店の営業を再開。再びやってくる迷い人達を接客、現世に帰す。サヤ達のような強力なグリッチ因子の持ち主は現れず、nullの塩対応接客が繰り広げられる。ソラとウミは接客メインでrecefiaやnullがコーヒーを淹れる。
とある日に名無しの迷い人から尋ねられる。
迷い人「あの……ソラさん?この一体で魔女を見かけませんでした?」
ソラ「魔女ですか……見てないです」
迷い人は語り始める。
迷い人「私が喫茶店に来る時に見たんです……黒い三角帽子で黒い豪華なドレスの少女を」
ウミ「なんだそりゃ?多分化け物だよ」
迷い人は首を横に振る。
迷い人「化け物って感じじゃないんです……でもすごく重い空気感がありました」
ウミ「空気感?」
迷い人「はい。身体がすごく重くなって……すぐに逃げたんですけど……」
ウミ「ふむ」
そんなこんなで営業を終えて一同はコーヒーとお菓子を摘みながら今後の方針を語る。
null「第1に現世及び人類の復元、再建。第2に『しあわせさま』の正体解析と阻止、第3に現世に砂糖税を導入。第4に君達の帰還」
ウミ「は?砂糖税?」
null「うん。僕が復元に協力するんだからそれくらいのリターンは欲しいよねー」
ソラ「具体的にどのようなプランですか……?」
null「僕を神と崇めて、僕が砂糖を自由に使える権限を持つ制度。人類は僕に対してお布施をしてもらう」
ウミ「はー……ロジカルじゃないだろ……」
ウミは呆れる。
null「僕は良いんだよ。僕、最強だから」
ソラ、ウミ「…………」
null「まー話は半分にして、第1の条件はとにかくDDの回収。有益からゴミ……いや、何気ないDDを集める。DDは喫茶店から現世に還元させる」
ウミ「俺達はDDを集めるだけでいいのか?」
null「そ。あとはrecefiaが勝手にやってくれる」
ソラ「なるほど」
null「第2条件の『しあわせさま』というクソ神を暴き、阻止」
ウミ「そもそも『しあわせさま』今、どこにいるんだよ?」
null「知らない。これから調べるんだよ」
nullは続ける。
null「『しあわせさま』関連の情報を集めて、ソレの対策を練って……」
ソラ「練って……」
null「ボコす」
ウミ「わかりやすいな」
null「第1、第2条件をクリアしない限り、君達は永遠にブラック……あ、いや、やりがいのある仕事を続けるハメになる」
ウミ「絶対イヤだ……」
null「(ウミを無視して)これらの条件クリアには君達は強くなるしか方法はない。よって迷い人を今まで通り帰還、アベンドのバグフィックスは続行」
ソラ「確かにDDSに来た頃より、傷の治りも運動神経も上がってます」
ウミ「一応聞くが……俺達はグリッチ因子に耐性あるんだろ?侵食は大丈夫だよな?」
nullはああ……って呟きながら答える。
null「侵食は大丈夫。メンタルが折れない限り……」
ウミ「やっぱソレか……」
ウミは何故か納得する。彼は勘が鋭い。
null「話を戻すけど……ようするにドンドン戦ってドンドン助ける……これに尽きる」
ソラ「そうですね……あとは私達の記憶も戻れば言う事なしですが……」
null「まあ、そのうちわかるんじゃない?」
nullは軽く返答をした。
null「他に質問は?」
ソラは手を挙げた。
null「激重感情オタク君」
ソラ「わぁっ!!ちち、違います!!じゃなくて……サヤさん達は明確にロストという死がありましたけど……私達グリッチ因子適合者は死ってありますか?」
null「ないよ?」
ソラ「そうなんですか!!?」
するとウミがソラを言う。
ウミ「でも死なねーってコトはずっと苦しむってことだぞ?俺はイヤだね」
ソラはスカートを強く握る。
ソラ「私……盾になりますよ」
ウミ「?」
ソラ「再生するから大丈夫です。そんなに痛くもありませんし。赤い液体しか入ってないので……」
ウミは心配そうにソラを見つめる。
ウミ「そこまでしなくても……」
ソラ「いえ、迷い人達を助けられるなら……心地良いんですよ……助けるのが……自分を肯定できる気がして」
するとnullが。
null「マゾなの?」
ソラ「違います!(断言)」
ソラは恥ずかしそうに言う。
nullは淡々と返答。
null「まあ、いいけど……ほどほどにね」
[part2]
『深度1・夜の住宅地エリア』
静寂に包まれた戸建てが並ぶ住宅地。築は古く、外壁の汚れやアスファルトのヒビ割れが目立つ。街灯は普通に点灯しており、民家も生活臭が漂う明かりが照らされている。丘の上に建っているのか遠くに夜景が一望できる。しかし、景観はデート向けではなさそうだ。
ウミ「不自然なくらいフツーな場所だな」
ソラも同意する。
ソラ「今までの廃墟や廃村よりは大分マシですね」
null「まあ、君達も慣れたんだね」
nullは淡々と呟きながら先陣を切る。そして、民家の玄関を調べるが……。
null「開かない」
ドアノブを回しても開くことはない。
ウミ「家の探索は無理か……」
ウミがため息をした直後。
女性「どなたですか?」
ドア越しから聞こえたのは女性の声。
ソラ「え?」
ソラやウミは一瞬戸惑いを隠せなかった。
null「喫茶店の『ほう』から来ました……今すぐ開けてくれない?」
女性「なに?勧誘?やめてください……警察呼びますよ?」
この会話のやりとりにソラ達は得体のしれない嫌悪感に襲われた。あまりにも現実すぎる光景だからだ。
ソラは目を擦る。
ソラ「夢じゃないですよね?」
ウミ「そうだったらこんなロジカル野郎いねーだろ?」
ソラ「確かに」
null「ひどいね」
nullはため息をする。
結局、警察を呼ばれても(?)困るので喫茶店メンバー一行は家を後にする。
一行が細い裏路地を歩いていると、犬の吠える声が民家から響いた。
ウミ「なんか調子狂うな」
ウミが文句を垂れていると十字路にたどり着く。どの道も薄暗い道路だ。
ウミはとりあえず前方を確認した。すると背の高い黒い女性のような影が奥に佇んでいる。
ウミ「……またか」
ウミが目を逸らしているとnullとソラは気にせず前に進む。
ソラ「とりあえず、前に行きましょう」
ウミ「おい!ちょっと!」
null「なに?」
ウミ「奥に何かいるぞ……!」
nullとソラは前方を確認するが。
null「見かけないね」
ソラも頷く。
ウミ「いや、居るだろ!見えないのか!?」
ウミが再度確認してもソレは立っている。
nullとソラは黙々と進んでいく。ウミは恐る恐る視界に入れないようについていくが……。
null「何もないね」
nullが呟くと同時にウミは前方を確認。黒い影の女は消えている。
ウミ「……俺がおかしいのか」
ウミは自身を疑問視していると背筋に寒気を感じた。
ウミ「……クソ」
決して後ろを向かなかった。絶対良くないことが起きるからだ。彼はいつも通りを装ってnull達を追う。
[part3]
null「この家、ドア開いてるよ?」
nullの言葉と共に一同は足を止める。その家はごく普通の木造住宅であり、玄関のドアが全開している。
ウミ「一応さ、遠くから確認してみようぜ?人いるかも知れないし……」
null「さっきのおばさん、人じゃないっしょ」
ウミ「い、一応な……」
部屋の中を確認。思いのほか、真っ暗だ。nullはライトを持ち出し奥を照らす。なんの変哲もない2LDKの部屋だ。2階もある。一同は家に侵入する。
null「2階の部屋に行こう、黒いノイズの痕跡がある」
ソラ「DD……?」
null「そう」
2階の部屋のドアには張り紙がある。
『勝手に入るな!』
ウミ「なんだぁ……?ワケアリか?」
null「勝手に入るよ」
ガチャン。
ドアはすんなりと開く。そこには。
美少女のフィギュアが飾ってあったりポスターが大量に貼られている。
null「おー」
nullは感心している。ウミはなんとも言えない表情だ。
ウミ「ソラの部屋もこんな感じか?」
ソラ「この前、来たじゃないですか……もう少し落ち着いてます」
null「モニター……電源ついてるね」
nullはモニターを調べる。大手の検索サイトの画面だ。試しにnullがマウスを使い検索ボックスをクリックする。すると。
『小規模汚染 対策
小規模汚染 対策 被害
小規模汚染 対策 ない
小規模汚染 ひとりかくれんぼ
小規模汚染 ひとりかくれんぼ 効果』
null「ひとりかくれんぼ?」
ソラ「あー幽霊を降臨させる儀式の都市伝説ですよね?多分」
ウミ「それより……確か『小規模汚染(20xx-5から20xxに発生した集団不審死)』って警察の極秘情報だったはずだよな?なんで漏れてるんだよ……」
null「さあ?……モニターに漂うDDを発見したよ」
DD
『ひとりかくれんぼ』
伝承型、動画ファイル
・都市伝説でも有名なひとりかくれんぼ
・実は謎の現象、小規模汚染に抵抗できるというデマが広がっている
ソラ「デマ……」
null「小規模汚染の情報は漏れるし……なんかデマ流すし……人間って業が深い生き物だね」
nullはマウスやキーボードを触りながらボソボソ呟く。
ウミ「人間臭い……だろ?」
これは皮肉発言。
nullはウミの言葉を聞き流して、マウスをクリックした。
null「『WHITE』……SNSアプリ。この部屋の主のアカウントを見てみよう」
白い小鳥のイラストのSNSアプリ『WHITE』を開いた。
プロフィールなどは流し見して、最新のポストを閲覧。
『ダブチ好き、通称ダブチニキの『カプチーノ(ユーザー名)』さんって男?いつも『ダブチうめぇwww』か『っぱダブチよ』しかポストしてないけど』
null「ふーん」
ウミ「あーダブチニキかー。確かフォロワー3万人超えてたよな?」
ソラは抑揚を抑えた声で返答する。
ソラ「あ、知ってます。この人、結構ネットじゃ有名人ですよね?」
ウミは頷く。
ウミ「そうそう。ダブチや新作のマッ◯の写真投稿してるやつ……あとはV……◯◯?『歌枠助かる』とか」
ソラ「……言ってましたね。ウミ君、結構知ってるんですね」
ウミ「だってオススメでバーン!と出てくるし」
null「まあ、脱線した話はそれぐらいで……」
nullはホイールをスクロールする。
null「20xx-3の情報だね。最後のポストを見る限り、何かが原因でSNSをやめた可能性がある」
ウミ「まさか、『ばいばい病』とかを発症したか?」
null「……にしてはネガティブポスト少ないから、単に飽きただけかも……もしくは」
nullはソラに顔を近づける。
null「『ひとりかくれんぼ』が原因……とか?」
ソラはむむむといった顔をする。不安と歓喜(nullの美)が同時に襲ったからだ。nullは離れる。
null「ま、考察しようがないけど……」
その後、その家に情報は見つからなかったため、一行は離れる。
episode17-2へ続く




