episode15-2『バグフィックス』
[part4]
『深度2・固有空間、書庫』
アベンドであろう固有空間の中は下から上までびっしりの本棚と本で埋まっている異常空間だ。天井は100m……いや、天へと続いている。3人が歩いても一行に本棚には近づけず、実質無限の空間が広がっていた。
ウミ「なんだよ、本だらけだな……」
ソラ「…………」
ソラはもう覚悟を決めている。
null「気を抜かないで……警戒して」
nullも真剣な表情だ。
「ヒカルー?どこー?」
勝ち気な少女の声が書庫に響き渡る。
「どこにいるのー?もう!ほんっと……できない子……!」
少女は姿を表す。
ハンチング帽を被った茶髪のショートヘアーでインナーカラーは青。服装は探偵のような格好の私服を着込んでおり、右手に……ルーペを所持。しかし、ルーペが異常に大きい。おおよそ3mはある。巨大なルーペを引きずりながら……こちらを覗く。
「あー!!ソラ!……来たんだね〜!!ずっと待ってたよ〜!!ヒカルが見つからなくてさ〜!犯人どこだろう〜?あはは!!」
あの頃とまったく変わっていない探偵かぶれの少女は狂気な笑みを浮かべる。
「犯人どこっ!!?本当にミステリー!!」
null達にルーペを構えてニヤニヤ笑う。
ソラ「サヤ……さん?」
ウミ「ロストでもアベンドになるなんて……」
null「……このケースは初めてだよ……ロスト後のアベンドはね」
nullは説明をつけ足す。
null「想いが強すぎたみたいだ……」
サヤ「この世は謎だらけ!みーんな!解析!弟も……犯人も探すぞ〜!!!あは!アハハハアハハハ!!!」
null「サヤ・アベンド……バグフィックス、開始」
nullは資料の文字を読むように淡々とした声で呟いた。
ソラはカメラ、ウミは剣を構える……がその準備より早くサヤは接近!巨大なルーペで2人を薙ぎ払う!!
2人は宙に浮くほどにふっ飛ばされて吐血する。すかさずサヤはルーペをかざしてソラを解析。
サヤ「少女、15歳、151cm、華奢で膨らみなし!中身も見せてっ!!」
サヤはルーペにエネルギーを集結させる。ルーペが白く光輝いて振動する。
null「サヤ、TPOわきまえて?」
nullから波紋状にノイズが広がり、空間を全てを支配する!
ウミ「『不可侵領域』か!?」
サヤはノイズに飲み込まれて、口から激しい赤いノイズをまき散らす!
サヤ「ゲホッ!ゲホッ!」
ソラ「サヤさん……!!」
地面に叩きつけられたソラはサヤに対して叫ぶ。
ウミ「ソラ!ダメだ!離れろ!!」
ソラの感情が前に飛び出し、咄嗟の思考が働かない。その隙をサヤは見逃さなかった。
サヤ「隙だね!おりゃあ!!」
彼女はルーペを縦に叩きつけて、その振動から地面に衝撃波を放つ!!しかし、nullが衝撃波に対してナイフを振るとソレは打ち消した!
サヤ「厨二病君!ちょっとー!はははー!」
サヤは近所の友達のように接してくる。
ウミ「くそ!喋んなよ!!」
ウミは決死の一撃をサヤに入れる!サヤの胴体を貫く!
ザシュ!
サヤの身体から赤いノイズが溢れ出す。
サヤ「モヤシ君!痛いんだけどー!?セクハラ!」
彼女は笑顔でウミに伝える……と同時にルーペが発光!
null「ソラ!避けて!!」
ソラ「え!!?」
ドシュゥン!!!
巨大なルーペから真っ白の光線、ビームが放たれてソラの腹部を貫通した!
ソラ「あがぁっ!!!」
口元から溢れる血とともに白いロリィタ服が一瞬にして真っ赤に染まる!!
ウミ「ソラ!!!」
ウミが叫ぶ。サヤはウミに頭突き、彼を吹っ飛ばし、自身に刺さっているウミの剣を引き抜いて捨てる。そしてソラへ急接近!ルーペで彼女の傷口を覗く。
サヤ「ソラの中身……真っ赤しかない!ミステリー!!」
ソラは態勢を大きく崩すがすぐに離れようとする!しかし、サヤはルーペを横に薙ぎ払うようにビームを放った!!ソラの足首と太ももに被弾!!ソラのロングスカート、ドレスが更に赤くなる。
サヤは大きく楽しく笑い飛ばす。
サヤ「ソラ!ソラの中に犯人いる!!今、取り出してあげる!!」
彼女は更にルーペを構えて追い打ちをかけようとするが、nullが先回りをしてサヤの右目をナイフで刺しこむ!
null「人の身体を解析するのは、サイコパスすぎない?探偵業じゃなくて解剖科じゃん」
サヤはnullの重い一撃に大きく怯む。nullはその隙にソラを抱えて距離を取り、負傷を確認する。
null「再生してるね……じゃあ働いて」
ソラ「は、はい……」
ウミ「うぉぉぉぉぉ!!」
サヤが怯んでいる状態で追い打ちをかける!
彼女に向かって袈裟斬りを行う!
null「ルーペから離れて!!」
ウミはnullの助言の歴戦の勘でサヤを回り込むように回避する!
ドシュゥン!!
ウミは一瞬、理解に拒んだ……。視界の全てが真っ白になったからだ。
ウミ「なっ!!」
サヤの反撃でのルーペビームはその書庫空間の3分の1範囲に照射されたからだ。
理解が追いついたのはウミの右腕と右足を失ってからだった。
声にならないほどの絶叫を上げるウミ。視界が血飛沫で何も見えなくなる。
ソラ「ウミ君!!」
null「一旦距離を置いて!再生を優先!」
nullは大きな声で鋭く指示する。その間にnullはサヤを陽動させて時間稼ぎをする。
null「(不可侵領域を使用してもまだ、活動が止まってない……このまま、力を使いすぎるとスリープ状態に移行する可能性がある)」
サヤ「厨二病君!私達、お揃いだね〜!!」
null「いや、君ほどド畜生じゃないから……」
サヤが笑いながらルーペを振り回し、nullのナイフとかち合う。傷が再生したソラは望遠レンズでサヤを撮影する!!
サヤ「解析!!ほれー!」
nullを振り払った後、ルーペを盾にして撮影攻撃を防いだ!
ソラ「え!?」
ソラは持ち前の人外的な動体視力で事象を確認する。なんと自分の事象消去が自分にふりかかってきたのだ!!ソラは判断が遅れて事象消去浴びそうとしたその時!
目の前にはnullがソラを庇う。
ソラ「null君!!」
nullは口からノイズを吐き出す。
null「僕はいい!ウミの状況を!?」
ソラはウミを視界に入れる。彼は息を切らしながら無くなった腕を押さえている。
ウミ「シャレになんねーよ……」
ウミは腕と足を失い立つことができない。
ソラは正常、nullは軽い負傷。
すぐさまnullはルーペビームを撃たせないように接近戦に持ち込む。まず、ルーペを持つ右手を切断、次に左手も切断……しかし2つ目の切断が負える頃にはルーペの手は再生している!
null「(一気にバラバラにして、とどめはソラに……)」
サヤ「あははは!!厨二病君!君の行動パターンも解析できちゃったー!!」
サヤはnullから離れて、負傷しているウミに一点集中型のビームを照射!!nullは黒い手を生やしビームを打ち消すが、サヤは更に発射!!このまではウミが焦土に……!
ドシュゥン!!!
咄嗟に動いたのはソラの撮影だった。撮影でビームの事象を打ち消したのだ。しかし、ファインダーを覗いたことそのものが視界を遮ることに……。
目の前にはサヤが立っており、笑っている。サヤの手はソラの胸部を貫き、直接鷲掴みにされる!!
ソラ「サヤさん……!や、やめて!!」
サヤは手を引き抜く。しかし、手には赤い液体だけ……。
サヤ「あああっーーー!!!ない!ない!ないー!!いない!!犯人いないよぉ!!!」
血塗れの手を見つめて絶叫するサヤ。
血飛沫を上げて倒れるソラ。
ウミ「サヤ……!てめぇ何やってんだよ!!!」
再生を終えたウミが剣を振りかざし衝撃波を繰り広げる!!が巨大なルーペで弾かれ、衝撃波がウミに返ってくる!!
ウミ「クソッ!」
ウミは跳躍で回避!
nullは手短に長考する。
null「(ソラ、ウミの戦力じゃ押される……僕がスリープ覚悟で逆転するしかないか)」
サヤはソラの血浴びた状態で狂い笑う。
サヤ「どうして!?いないの!!犯人はぁ!!?ヒカルはぁ!!どこ!!?お姉ちゃん……辛いよ……あ!」
サヤは何かに気づき、そして自分の手で自身の頭に無理矢理つっこむ!!
サヤ「ここだぁ!!この中だぁ!!いたぁ!!犯人!!!見つけたぞーー!!…………いない……いない!いないよぉ!!!」
null「うわ……」
nullもさすがに引いてる。ウミは怒り散らかす。
ウミ「どうすれば止められる!?」
null「僕がビームを事象で消しながら、彼女をバラバラにし続ける……君は拘束された彼女を徹底的に攻撃して……情けはかけないでね」
ウミ「わかってる!」
再びサヤはルーペをかざし空間を埋めるほどのビームを放つ!!nullはサヤに接近しながら黒い手でビームを打ち消す!恐らく次の行動はソラにビームを放つだろう。サヤがソラに急接近を予測してnullは先回りでサヤにナイフを刺しこむ!!怯むサヤに間髪入れずにメッタ刺しにする!!
サヤ「やめてぇ!!やめてよ!イタいよ!イタいイタいイタい!!」
ウミは苦虫を噛み潰したような表情をしながら剣を振り下ろす!!
ソラは仰向けに倒れている。全身が赤い海に沈み、生温かい。……死に向かっている感覚はない。痛みを受け入れている自分がいる。
奥で剣戟音が聞こえる中、ソラの目の前に現れたのは……黒いノイズ……DDだった。
DD
・『サヤ』
思念型、動画ファイル
・7歳程の髪の長い内気な少女が泣いている。となりでルーペを持った6歳の少年が寄ってくる
少年『お姉ちゃんないてる……はは!ミステリー!!』
少女『うわーーん!!』
少年『イジメにあったの?』
少女『アイス……落としちゃって……』
少年『あはははは!!アイスおとしちゃったんだ!!あははは!!』
少女『うう……』
少年『ぼくがかってあげるよ?』
アイスを購入して少女に差し出す少年……だが。
少年『あっ……』
またしてもアイスを落とす。
少女『うわーーん!!』
少年『アハハハ!!アハハハ!!!これはじけんだねー!!アハハハ!!』
・別のシーン。神社探索をする姉弟。
少年『こわいか?姉よ?ふはは!』
少女『暗いよ……怖い……寒い……』
少年『ミステリー!!』
少年はふらふら、ふらふらと周りを走り回る。
少女『ヒカル……?離れないでよ……?』
ヒカル『だって……たのしいんだもん。この世界は謎だらけ!!お姉ちゃんいくよ!!』
・別のシーン。泣き崩れる両親とやるせない警察の方。少女、サヤは放心している。
サヤ『私の……せいだ』
・別のシーン。短髪になり、ハンチング帽を被ってルーペ持つ10歳のサヤが友達と遊んでいる
友達『サヤちゃんってカッコいいし頼もしいし、明るいし、ほんとうにリーダーだよ!!』
サヤ『当たり前!!私は陽キャでみんなを束ねるリーダーなんだから!!』
遠くで見守るサヤの母親。
サヤの母親『あの子もしゃんとするようになってよかったわ』
・別のシーン、15歳になったサヤがグリッチ因子を発現する。危険が赤い線として可視化された。
サヤ『危険な所に真実あり!』
サヤはあえて危険な地帯に踏み込むようになる。しかし、両親はサヤを心配し、精神病院に受診させる
・別のシーン、学校での優秀なリーダーとして周りから憧れの対象になるが、とある友達が。
友達『サヤ?またグレーな所行ったの?危ないからやめようよ!?』
サヤ『大丈夫!いざとなったら逃げるから!!』
友達『最近、サヤ……様子、変だよ?ずっと誰かを探してる……』
サヤ『この世の真実を探してるの!変じゃないって!!』
友達『サヤ、多分、疲れてるんだよ……?休もうよ?』
サヤ『そんなことないってー!大丈夫だよ!!それより今日も赤い線が見えた!放課後行ってくる!!』
友達『……おかしいよ……『狂ってる』』
サヤは表情が固まる。
サヤ『……狂ってる?』
友達『もう無理……』
サヤ『狂ってる……?狂ってるの?……私、狂ってるの?……なんで?なんで?なんで!!?』
DD解析終了。
ソラはゆっくり、起き上がる。
nullとウミはサヤに行動させないようにずっと彼女の身体を刻んでいる。
ウミ「倒れろ!倒れろ!倒れろ!!」
ソラも彼らに加勢する。
ソラ「サヤさん、狂って……ないですよ」
3人が集結したその時!
サヤ「私は……狂ってない!!!!!」
ドシュゥゥゥゥゥン!!!
サヤのルーペから全方位に高出力のビームが書庫全てに照射した!!!
null「『不可侵領域』展開!!!2度目だよ!!」
全方位レーザービームは容赦なく3人に襲いかかる!!当たったらひとたまりもない……nullのシールドでビームを相殺している!!
サヤ「違う違う違う違う違う違う!!!」
書庫は廃墟化した。
3人は不可侵領域のおかげで耐え忍ぶことができた。
サヤは漠然としている。ソラとウミは息切れしている。
サヤ「……結局、見つからなかった。何もかも……」
サヤはルーペとハンチング帽を地面に置いた。
サヤ「でも……」
サヤは天を仰ぎ、溢れる感情を抑えながら……溢れる液体を流しながら呟いた。
サヤ「よかった……これで……ほんとうに……よかった」
この言葉は誰に向けて言ったのかは定かではない。だが、null、ソラ、ウミが今の地に立っていること……それが彼女にとって救いだったのかもしれない。
サヤは全身がノイズになり、ゆっくりと消えていく。
null「……終わり。バグフィックス……終了」
null「全員、生還」
episode15
END




