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番外編 王妃広報室より:戴冠翌日の始業メモ

配布物:広報室・朝礼メモ(対内)

作成者:王妃付広報官(臨時)セシリア・アルテン

目的:戴冠翌日に想定される“問い合わせの奔流”を手続で受け止めるための即応指針。

補注:素敵な感想は脚注に。本文は事実に従う。


0. はじめに(三行)


前例は成立。壁は増設。愛は継続審議、のち採決見込み。


本日の王宮は“祝い”と“問い合わせ”が同時多発。先に問い合わせから火を消す。


口癖の再確認:「比喩は節約、数字は簡潔、人には礼」。


1. 速報整理(昨夜〜今朝)


判示全文:王家記録庫に正本掲示、外庁掲示板に要旨。写しは寺院保管(聖務封緘)/公証官室。


宰相:職務停止のまま臨時監査聴取へ移行。扇は提出済み(記録上は“携行品”)。


王弟:印差止・公務停止・行動記録の任意提出開始。


側室費:暫定停止。再開は「明細の公共性確保」を条件。


後援会資金:経路の精算命令。寄付の逆流は寺院会計を介して処理(※現金は跳ね返りやすい——比喩ではなく事務)。


2. よくある質問(街・貴族・記者向け)短答


Q1. 王冠は“政治”の前に降りたの?

A1. いいえ。透明の上に降りました。順序は判示→王印→戴冠。


Q2. 二重押印って何が“二重”なの?

A2. 公証印(手続の壁)+王印(主権の重み)。混ぜずに隣り合わせ。


Q3. 王弟は“国のため”にやったと言っていたけど?

A3. 動機はあと、行為が先。行為は原本性欠落と資金迂回。


Q4. 冷遇妃からの“ざまぁ”は痛快だった?

A4. 痛快の採否は読者に委任。こちらは手続で勝つ恋物語を運営。


Q5. 王妃は数字ばかりでロマンスが足りない?

A5. 愛は脚注に、責任は本文に。脚注は増刷予定。


3. 広報の運用(本日)


一次窓口:外庁掲示板+魔導掲示板の固定投稿。ハッシュは

 #王冠は透明の上に #二重押印 #公証ざまぁ


映写:糸図は縮小版を三連掲示。転倒対策に支柱・楔。


声明テンプレ(短文化・60字):

 「王家は財と印の透明を王冠の重みに等置します。判示全文は記録庫。要旨は外庁掲示」


4. 内向けミニ練度(3分で上がる“手の力”)


紙の角をそろえる——世界の輪郭が一段そろう。


固有名→職名置換の癖付け——個人攻撃を避け、行為を射抜く。


一行要旨から言う——「要点一:〜」で始める癖。


ミーナ(補助書記)より:


「“素敵”は脚注、“すごい”は差分表、“えらい”は判示に。覚えました」


5. 聴取・進捗(午前の部)


刻印師ギルド:刃の癖の特定により、外扉損壊の“使用工具”を絞り込み。市場の研ぎ直し記録と照合へ。


楽士会:契約違反の自主申告が相次ぐ。仕組みの是正を条件に起訴猶予の運用検討(法務庁と連携)。


香油商組合:香油の異常消費を自己申告。礼節の費への付替えを停止。


6. 王妃業務(午後の部の段取り)


王妃就任の誓い:夕刻、外庁バルコニーで短い文を朗読予定。


指針文(案・120字)

 「王冠の重みは、透明で受け止めます。壁は紙と蝋と手続で作り、維持は人で。恐れは記録に埋め、噂は要旨でほどきます。王妃の務めは飾りでなく、公共の世話です」


7. 個別メモ(人が動くところには人の言葉を)


王太子ローレント:

 合図は二度ノックのまま継続。疲労対策に“読み上げ分”は600字以下で刻むこと。


公証官:

 杖の一打で時制が整う。会議が “過去形”に逃げたら一打を依頼。


寺院の若僧:

 封緘の赤がうつくしい。褒めるのは仕事。今日も彼の蝋はよく冷える。


ミーナ:

 脚注は増やしすぎない。素敵の過剰は事実を甘くする。昼は食べること。


8. しめ(愛は脚注か、それとも本文か)


 午前の問い合わせは、ざっと千通。返信の定型を簡潔にしても、言葉は増える。

 けれど、増えていい言葉がある。

 「ありがとう」は、その一つだ。これは手続の外に置く。外にあるから、長持ちする。


 王冠は金で、金は重い。透明の上なら、重さは支えられる。

 手続は壁で、壁は隣り合って強くなる。

 愛は脚注でも本文でもよい。版を重ねれば、正本になる。


付録:午後の“短い朗読”台本(持ち時間90秒)


皆さま。王冠は透明の上に載りました。

財と印は公共のもの。壁は紙と蝋と手続で作ります。

噂は要旨でほどき、恐れは記録に埋めます。

王妃の務めは飾りではなく、世話です。

今日から毎日、小さな前例を積みます。

それを愛と呼んでも、構いません。


本日の提出物


広報室・朝礼メモ(対内)


対外固定投稿文(60字/120字/90秒台本)


聴取進捗・午前の部(要旨)

次回更新:夕刻の誓い朗読後、**“王妃広報室からのお知らせ”**第1号を発行


バルコニーへ向かう前、机の角をつい揃え直す。

角が揃えば、視線も揃う。視線が揃えば、言葉は届く。

そして今日は、届いた言葉に——愛を一行、脚注しておく。

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