70話 バッタリ
-----(清見視点)-----
地下7階層のセーフティゾーンを出て螺旋階段を発見した。
地下8階へ降りる。
階段を降りた最初の穴を進んだ所で、出会った!
自衛隊に出会ったのだ!!!
ニッポンからの救出班。地下10階層から洞窟通路を進み、この迷宮に突入。下から上へと俺たちを探す予定だったそうだ。
ちょうどニッポンの視察に来ていたデスエのギルドが急遽依頼を出して、あっという間に冒険者3チームが集まった。自衛隊含めてダイソナーでこの迷宮へと走ったそうだ。
俺たちは迷宮で迷子になっていると思われていた。スマホがないために本当に大事になる。無事だったのにそれをとっとと知らせることが出来ないのだ。
俺たちが一度上まで戻った話を聞くとデスエの冒険者たちは仰天していた。
冒険者3チームのうち、ひとつはあの遺跡で俺ら地球人を発見してくれた人達だ。
相変わらずちゃんと着込んだ冒険者服だ。
アニメや漫画の、あのビキニアーマーは何なんだよ! どこのどいつだ! 大嘘つきは!
「清みん、どしたー? 大丈夫か? 何を怒ってるんだ?」
「いや、その……アレだよね。ビキニアーマーじゃない」
「ぶわははは」
突然大島氏が吹き出した。何だよ、同士だと思ってたのに。
「ごめ、ごめん。ぶはっ。いや、気持ちはわかる。俺もデスエに出入りする前まではムっとしてたよ」
だろ?だろ? そうだよね。
「まぁでも、よく考えたらあんなに肌を出して危険なダンジョンに入るわけないじゃん。日本人はすごいよなー。いい意味で能天気。自分も含めてだけどな」
「……まあね。でも、日本人だけじゃないじゃん」
「ん?」
「アメリカ人だってさ、ゾンビ映画でゾンビから逃げてるのにタンクトップとかさ」
「あはははは、うん、確かに。もっと肌隠せ、噛まれるぞって思ってたよ、俺も」
「だよなー」
結局、現実と物語は違うって事だ。
それはさておき、迷宮の地下8階での立ち話だ。冒険者達はかなり周りを警戒していたが、ポヨン君達がいると寄ってこないのだ。
3佐達はこの先どうするかを話していた。
救助に来た自衛隊としては俺たち4人の無事が分かればOKなのだ。俺たちも無事を知らせるために合流がしたかった。
つまりお互いに役目は果たした事になる。
迷宮の階段の謎について、3佐が冒険者に聞いていた。やはり想像通り……ではないか、踏んでいればいいそうだ。
冒険者は荷物とポーターを置いて迷宮内を移動するそうだ。戻らない場合は踏んでおく必要はない。進んだ先のセーフティゾーンを中心に動くそうだ。
地下10階層あたりは階段が出っぱなしのところも多く、あまり気にして進む事はないそうだ。
「踏んでおくとは? 自分達も地上2階で階段前を踏んでいましたが階段は現れませんでしたよ?」
「ああ。石段は◯◯の重い方を踏む必要があります」
えっ?聞き逃した、俺の自動翻訳。何が重いって? 体重が重い人が踏むのか?
「魔力……フロア魔力の差があるのか」
「なるほど。それで魔物も強いわけなんですね」
「ん? ごめん、何が重たいの?」
「フロアの魔力……俺の翻訳で一番近いのは『魔力』だったんだが、つまり地下1階と地下2階なら、最上階である地下1階の方がフロア魔力が強い。俺らが訪れた時に地下1階に階段が出現していたのは、俺らがそこを踏んだからだ」
「魔物を倒すと階段が出るんじゃないんだ?」
「いや、それも正解だが、魔物討伐が必要なのは魔力が低い方のフロアから階段を出す場合だ」
つまり、地下1と地下2なら、地下1の方が魔力が高いので階段は床を踏めば出てくる。けど地下2からは何かを倒さないといけないって事か。
「街の近くの迷宮で混雑しているフロアはだいたい誰かが踏んでいる。冒険者が少ないフロアへ行く時は、ポーターと荷物をそこに待機させるらしい」
「大体の都市は深さ100mくらいにあります。たとえばそこが地下10階だとして、迷宮はそのあたりからは下へ行くほど魔物が強くなる。つまりフロア魔力は下へ行くほど高くなる。なので、10階から11階に降りた地点にポーターを置くらしい」
「100mが一番魔力が少ないフロアかぁ」
「まぁ、絶対に100mとかではないですけど。恐らく魔力のゼロラインがそのあたりの深度なのかもしれませんね」
腰を折ってしまった話が戻る。
地下9階層の魔物は俺たち地球人にも倒せる強さだそうだ。しかし8階層になると、たまに強い魔物も出る。そこで冒険者の出番だ。地球人はまだまだレベルが低いからな。
急に迷宮へ潜る事になってしまったが、最低限の知識は貰えた。
お互いの無事を確認して俺たちは別れる事になった。俺たちはまた上に戻るのだ。
俺も早くニッポンへ戻りたい。裕理君や兄貴達と普通の生活が送りたい。そのためにも、まずは上に上がり、そして地上の往復を繰り返して皆をニッポンへ送り届けなければ。
「清みん、薬、塗ろうか」
大島氏がぶら下げていた荷物から軟膏を取り出した。ちょっとびっくり。何で大島氏が持ってるんだ。
「出発前に持たされたんだ。清みんの蕁麻疹が再発するかもってさ」
俺は無意識のうちにぽりぽりと腕を掻いていたようだ。あ、やだな。集合体になってる。ほんとくっつくのやめてほしい。
俺の軟膏が塗り終わるのを待ってから地上組は出発した。どの層でどんなやつが出るかわかっているし、ポヨン君達が強いので俺達は安心して地上へと戻っていった。
最後の地下2階も、上で踏んでいてくれたので階段はあった。
上から手を振っている。
「お帰りなさい」
「お疲れ様ですー」
「おう、そっちもお疲れ様さん」
「清みん、気を抜いて階段から落ちるなよ」
だ、大丈夫だよ。壁に手をついて進む。
「手すり欲しいよねぇ。せめて、ロープとかでもいいから手すりつけられないかなぁ」
「まぁ、この迷宮にまた来る事があるなら考えましょう」
そうだった。別に、この迷宮の地下に済むわけじゃないからな。
そもそも、避難民をどうやって無事に移動させるかで迷宮をチェックしただけだ。
結局避難民と共に地上を行くのが一番の早道だったとわかった。うん。
人ってわかっていても色々試して納得したいもんなんだ。




