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7話 お金要りますか

 -----(大島視点)-----


 気がついたら仏間会議の輪から清みんが離脱していた。

 さっきまでその辺で遊んでいた子供達も居ない。さては押入れか。俺も入りてぇ。



 デスエの話題は通貨の話へと移っていた。

 この世界の通貨は金貨っぽい物一択だった。ちゃんと調べると他にもあるのかもしれない。


 そしてその金貨はかなり雑な作りだとか。隊長からの情報だ。



「とても日本と同じ金貨とは思えない作りでしたね。それに庶民は日常で使用したりしないようです」


「宿や食堂の支払いはどうしたんですか?」


「3佐から聞きましたが宿屋はこちらの支払いでは無かったですね。借金なのかデスエ側のおもてなしなのか。ちょっと自分にはわかりませんでした。食堂は、いわゆる……ツケ的な感じでした。冒険者の登録証を見せてほしいと言われましたので、それを出したらチラリと見ただけで貯まってからでいいと」


「金貨分貯まるまでツケになるのかな」


「清見の分も隊長さんのツケになってしまったのでは? 申し訳ない。仏間から何かを持っていってください。売り払って食事代を捻り出せないだろうか」


「いやいや、橘さん、大丈夫ですよ。清見君には無理にお願いして参加をしていただきましたし、元から自衛隊で全て支払う予定でした」


「冒険者はツケがきく、という事だろうか?」



 服の下のしまい込んだ隊長の冒険者証を取り出して見せてもらったがIDのようなものは記載されてはいない。素材は不明だが小さなメダルのような物だ。どこかにバーコードでもあるのかと思っていたのだが無いな。QRコードもない。



「レジのような物にこれを当てたりしたわけじゃないんですよね? 地球でいうところのスマホ決済とかカード払いみたいに」


「いえ、ただ手に取っただけですね。特殊なスキルでも持っていたのでしょうか」


「宿屋スキル……あ、いや、清見あたりが言いそうだと」



 橘さんが少し恥ずかしそうにしていた。

 確かに俺もちょっと思った。スキルがあるこの世界。職業にマッチしたスキルがあっても不思議ではない。知りたい事が次から次に出てくるな。



「それにしても金貨一択って、大きな買い物にはいいけど日本の感覚に慣れている私たちには取扱いが難しいわねぇ」


「何を買うにもツケが発生するとなったら、家計簿をしっかりつけないと大変な事になりそう」


「そこらへんは自衛隊がしばらくは舵をとると思います。デスエからの買い付けは自衛隊がして、それを国民に配給する感じなるでしょうか」


「ああ、なるほど。自衛隊を通して全てをやりとりして貰えるほうが俺たちは助かりますね」


「ニッポンを代表して自衛隊がデスエとやり取りをする。私達は個人的に買うとしても自衛隊から小売りしてもらう形になるかしら」



 この世界で暮らす以上、こちらの『通貨』に慣れるしかない。しかしそれはもっと先の話になるだろう。

 そう言えばこの世界や都市デ・スェ・ヒンイーンには銀行や為替はあるのだろうか?


 俺たちは今はまだ誰もが無職で無貯金だ。

 現在、財布内にある日本円は当然この世界では使えない。



「3佐から、正式にニッポンの皆さんに発表をされると思うのですが」



 そう前置きをして隊長が話を続けた。



「皆さんが現在持っている日本のお金は、できるだけそのまま持っていてほしいそうです」



 皆がゴソゴソとポケットを探り出す。

 うん、あの日あの時間、通勤途中のサラリーマンなら当然財布は持ってるよな。


 けど最近は電子マネー化が進んでいたから小銭なんて持ってるやつ少ないんじゃないか?もちろん紙幣もだ。



「私お財布なんて持ってないわ。あの時トイレに居たんだもの」



 トイレママさんがぼやく。もっともだ。自宅でトイレ掃除をする時に財布を持っている者は少ないだろう。



「それは、何か理由があるんですか? まぁ使いたくても使える場所がないでしょうけど。せいぜいが国民同士のやり取りくらいか」


「はい、その国民同士のやり取りでの使用を控えてもらいたいみたいですね。持っていないかたもいらっしゃるので、不公平感をなくすためかな」


「けど、日本の金貨と比べてみたいですね。こっちの世界と同じ金属なのか」



 うーん、普段金貨を持ち歩く日本人は居なそうだけどな。



「お財布に記念金貨入れてる人いるかしら。ほら、昔、金貨が発行された事あったわよね。って、私は知らないんだけど父が10万円金貨だぞ、俺が死んだらお前にやるからなとか言って見せてもらった記憶があるわ」


「10万円は知らないけど、1万円の記念金貨は地域限定で出たりするみたい。ただ、それを今回持ってる人が居るかどうか」


「いなそうよねぇ」



 俺は記念金貨を買えるほど暮らしに余裕はなかった。資産として海外の金貨を持っている自慢をしていた上司はいたな。あの人、こっちの世界に来ただろうか?

 仮に来たとしても金貨は自宅の金庫の中じゃないか?



「この世界と地球の『きん』を比べるのは難しそうですね」


「あら、でもアクセサリーなら普通に居るわよね。ピアスやネックレス、指輪。女性は身につけていた人は多いんじゃないかな。私のピアスは18金。24金じゃないから金貨とは比べられないかな」



 なるほど、24金、18金のアクセサリーを持っている女性は多そうだ。

 しかし、日本の物は大事に取っておきたいだろう。潰すために貸してください、とは言いづらそうだな。



「あ、再生は? 傷を付けて再生しませんか?」


「それがねぇ、ダメなの。元から空間に置いてあった物は再生可能みたいだけど、自分が身につけていたものはダメだったわ」


「やってみたの?」


「うん、そう。傷が残っただけだった」


「残念〜」


「まなちゃんママ! リビングにアクセサリーボックス置いてなかったの?」


「それがねぇ。寝室だったのよ。金庫や私のジュエリーボックスも。寝室にメイク台があったし。あー、もう、マンションのうちごと全部こっちに来ればよかったのにー」


「そうだ! 飛行機の乗客の荷物、どうかしら?女性の荷物ならアクセサリーは入ってないかな」


「なるほど。機内の荷物は確認をした方がいいですね」



 機内の荷物、乗客が行方不明の荷物か。着替えや食料系のチェックを優先していたな。

 まぁその辺も、3佐が考えているとは思うが、後で声をかけてみるか。

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