64話 可愛いは正義
-----(大島視点)-----
スライムが入っていたはずの清みんのリュック。
今、スライムは全員地面に居る。なのに、リュックはモゾモゾと動いている。
嫌な予感。
「清みん? 何か、持って帰って、きたのか?」
「えー、ええと?」
キョロキョロと目が泳ぐ清みん、怒られる事がわかっている。つまり、怒られるような事をしたんだな?
「ごめんなさい! ちゃんと面倒みますから!」
そう言ってリュックの蓋を開けた。
そこから出てきたのは、ウリ坊だった。
ウリ坊。
猪の子供。しかも5匹も。
「どこから攫ってきたんだあああ」
「清見君……、いったいいつ?」
「可愛いなぁ。地球のウリ坊ですか?」
「そ、そう、かなぁ?」
地球のウリ坊なわけがあるか! この世界に転移してどのくらい時間が経ってると思うんだ。
「地下2階層の魔物、マンモスに似たやつ、アレの子供だろう」
「ああ、そういえば、猪を巨大化させたような魔物でしたね」
「あの、あの、子供のうちから飼えば、ちゃんと言う事を聞くようになると思うんだ」
「清みん、あそこにいたやつくらいにデカくなるかもしれないんだぞ?」
「そうかもだけど、あ、あのだって、ほら。どうせ大きい魔物をテイムしに森に行くとこだったでしょう? 良かった。ゲット出来た」
「そうだが! 5匹だぞ? いっぺんに5匹!」
「うん、あの、兄弟が居て寂しくないね」
「魔物が寂しいかは知らんが……、そうだ、魔物! こいつ、大人になったら火を吹くぞ?」
「うん。凄いねぇ」
ああ、ダメだ。
俺にはもう説得は無理だ。
そもそも仏間を引かせるために大物の魔物をゲットしてもらいたかったのだ。
なのに、何だ、これは! せいぜいが10cmほどの生まれたてのようなウリ坊だぞ?
幾ら5匹いても仏間は引けないぞ?
「こんなに可愛いのに、捨てて来いとは言いづらいですな」
3佐が折れた。
自衛官達なんかメロメロだ。オヤツをあげている自衛官もいるぞ。
おい。今のでその自衛官がテイムしちゃってるんじゃないか?
「清みん、餌はもうあげたのか?」
「ううん、何ももってなかったから……」
「テイムはどうなってるんだ?」
「テイムすると姿がかわるのでしたよね?」
「コイツらの元の姿をしらないからな。変化あったのか、これからなのか」
さっき自衛官からオヤツをもらっていたウリ坊も他のウリ坊も区別がつかない。
「餌やって、名前を付けてみるか?」
「あ、名前はもう付けた」
早いな。
「うりゆ、うりい、うりま、うりり、うりっし」
また似た名前を、似たやつらに……。
しかし、清みんの声にウリ坊達が勢揃いをした。
しっかりテイム済みだな。
てか、何だそれ! ウリ坊のうりに語尾変えただけ?
「また……わかりづらい名前を付けたな」
「そうなんだけど……、でも俺だって急に5匹もに名前を付けるなんで、考え付かなかったんだ。」
「ウリィにウリシィだったか?」
「違う違う。うりゆ、うりい、うりま、うりり、うりっし」
「最後のはネッシーみたいですね」
「違うって。ウリ坊の『うり』に、思い浮かんだ子の名前の頭を付けた。裕理、郁未、まな、りり、翔洋」
なるほど、それで。
うりゆ(裕理)
うりい(郁未)
うりま(まな)
うりり(りり)
うりっし(翔洋)
しかし、顔、と言うか見た目は一緒じゃないか?
「区別は付くのか? 清みんも、本人達も」
清みんが一瞬たじろいで目を泳がせた。が、意を決した顔つきでウリ坊を呼んだ。
「うりゆー、おいでー」
5匹並んだ一番左端のウリ坊が短い尻尾をピロピロ振りながら清みんへと近づいた。
「こ、この子が、うりゆ君」
たった今、わかったな。
「うりいー、おいで」
うりゆの隣に並んでいたやつが清みんに寄っていった。
そうして5匹とも順番に清みんの下へと集まった。
「案外賢い魔物ですね。呼ばれたのが自分の名前だと理解していますね」
それに、さっきも呼ばれた順に並んでいたんだ。その証拠に二度目に呼ばれた時に、左から順にやって来た。
「こんなに可愛いのに賢いとは。清見君はスライムといい今回のウリ坊といい、凄いテイマーですね」
自衛官が心底羨ましそうに清みんを見上げている。清みんは照れくさそうだ。
「拾ってしまったものは仕方がないですな」
いや、3佐、デレデレなんだが。うり何かわからないが一匹を抱き上げて顔をグリグリ擦り付けている。
それ、一応魔物ですからね?
さっきの広場で火を吹いてたやつの子供ですよ?
代わる代わる自衛官に抱っこをされたウリ坊らを持って、俺たちは地上へと戻った。
ちなみに清みんはスライムを代わる代わるもちもちしていた。スライムがヤキモチをやかないようにとの事だ。
俺たちはようやく地上に戻った。




