60話 戻りたいのに
-----(大島視点)-----
消えた螺旋階段の復活方法が解明した。
本当にあっているのかは不明だが、確かに階段は出現したのだ。
再度、ポヨン氏達の力を借りて検証をしてみた。
地下2階層に限る場合も考えられるが、とりあえずこの階層の螺旋階段の出現条件と時間も検証出来た。
しかし、階段付近の魔物で検証を続けたせいか、いざ、上の階に戻ろうと思った時には魔物がつかまらなくなった。
「参りましたね」
「通路内に居た敵を倒し切ってしまったのか」
「でも、リポップはするんだよね? 待っていればまた沸くんじゃない?」
子供らが居たような弱い魔物の階層はリポップも早そうだが、ここはどうだろう。
例えば地下10階層よりずっと下の方の魔物も、そうそう復活はしなそうに思える。
ボスは一度倒したら終わりだ。迷宮を踏破した事になるからな。
地下10階層あたりを境に地上に近づくと魔物も強くなると聞いた。
地下1階層は魔物と出会わなかった。全ての道を網羅したわけではない。どこかの行き止まりには居たのかもしれない。だが出会えない程度には個体数が少ないという事だ。
ここ、地下2階層も、そこそこ強い魔物だ。スライムだからこそ倒す事ができたが自分たちだけならまず無理だったろう。
それを検証のため、この近辺の魔物を倒してしまった。もしかするとリポップまで時間がかかるかもしれない。
「すぐにはリポップしないかもしれませんね」
「もっと奥に行く? まだ行ってないとこには居るかも」
「問題はここまで引いてこれるかです。例えば奥で10体倒して階段が30分出ているとして、そこからここまで30分で戻ってこないとならない」
「奥から引いてこれないかな」
「どうでしょうねぇ。最後の検証の時は、ついてこない個体もいました。途中で数が減っていた」
「やつら案外賢いのか、それとも移動距離が決められているのか」
「移動距離に制限があったら奥の魔物を引いてくる作戦は不可能ですね」
「としたらリポップ待ちか……」
「階段復活の謎が解けたのに、今度はリポップ時間検証ですか」
自衛官のリュックに入っていた水と非常食を4人で分け合った。
が、そんなに長くはこもっていられない。ここ泊まりになるとしれみ食糧が無い。
「ここで獲れるのって二本足ばっかじゃん。食べれないよ。まさか、元は人間とかじゃないよね……、ないよね?」
清みんが泣きそうな顔になった。
「リポップ待ちの時間が惜しい。少しだけ奥まで行ってみませんか? 帰りにリポップしていたら儲けもんです」
3佐の言葉に全員が頷いた。
左手を壁に付けて進んでいく。穴に印を付けて、行き止まりなら戻るを繰り返す。途中まで付けた通路を通り越してもっと奥へ進む。
「ここから先は足を踏み入れていないので、どんな敵が出るのかわかりません。できるだけ大島氏の防御内に密集して進みましょう」
検証のために引き寄せたここら辺の魔物は全部二本足だった。
高身長ゴブリンに、普通の身長ゴブリン、低身長ゴブリン。成長途中の同じ種じゃないのか?
『腰蓑を付けてるやつはゴブリンだよ』とは清みんの言葉だ。
背筋の伸びたオラウータンみたいなやつもいた。やはり体毛が薄い。腰蓑は無かった。ただ、腕が異様に長い。
ゴリラのような威嚇ポーズをするやつにいた。やつも毛が薄い。腕は筋肉質だが身体は痩せていた。
『陽が当たらないと毛の発育が悪くなるのかな』
清みん、それは地下で生活をしている人達に失礼だぞ?
デスエの彼らにはちゃんと頭髪はあったと思う。いちいち頭を気にした事がなかったからよくは覚えてないが。
清みんの言葉で3佐が震え上がっていた。
大丈夫、まだフサフサしていますよ。
「時々、地上へ行こう……ぶつぶつ……陽にあてないと……ぶつぶつ」
3佐……。
結局リポップを期待してそれまでの時間をただ潰すのも勿体無いので地下2階層の洞窟を奥へと4人で進んでいる。
地下2階層がどのくらいの広さなのかは不明だが、このまま行き止まりを避けながら進むと地下3階層への階段の入口へと到着するはずだ。
だが、自分達が今どのあたりまで進んでいるのかはわからない。
清みんが抱えているポヨン氏が縦に伸び縮みをして何かを伝えてきた。




