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6話 その名はニッポン

 -----(清見視点)-----


「土建はわかったわ。他には? 私たちの今後の衣食住」


「住はわかったけど、衣と食ねぇ」


「カニは最近は食べ慣れたし、結構美味しいのもわかったけど、近所の迷宮にもカニは居るの? それを獲りに行く事になるのかしら」


「農業と酪農も計画をしているようです」


「酪農……。この世界にも地球と似た動物がいるのかしら。牛とか豚みたいな動物」


「居るそうですよ。自分は見ていませんが3佐らが見学をしたと言っていました。大島君も見られたのでは?」


「ああ……はい。まぁ」



 大島氏にしては珍しく歯切れが悪いな。



「牛に似た動物は居ました」



 何だろう……、怪しいな。



「それ、目はいくつ?」


「ちゃんとふたつだ。鶏に似た動物も居た」


「……目は、いくつ?」


「ふたつ、だ。………が、たまに光線を出す、そうだ」


「どこから?」


「……目から光線を出す」


「それ、光線に当たると石化したり?」


「そう言う事もあるそうだ。だが、小さいうちは大丈夫だそうだ。小さいうちに食えと言われている」



 育てたらアカンやつだ。

 大人になったらバジリスクとかコカトリスって名前に変化するやつじゃないか?





「ところで大島君、私達が住む予定の迷宮って名前はあるの? ほら、迷宮だと紛らわしいじゃない? デスエみたいに名前ってついているのかしら?」


「ああ、はい。一応、ついていました。迷宮名は『チンジュマ・イィゴン』だそうです」



 あーやだ。

 言いづらいやつきた。チンジマ……なに?


 俺、ドド、クサの3人が部屋の隅で壁に向かって膝を抱え無言になった。日本語以外に自信のない3人だ。



「ちんじま……珍島遺言?」


「この世界の言語、変じゃないっすか?」


「変だよね?」


「おかしいよね?」


「オサレじゃないよね?」



 壁に向かい俺たち3人は小声で会話をした。


 背後から俺の背を叩いた大島氏はスーパーエリート営業メンだったから(勝手な決めつけ)きっと英検とかシュレックを持っているに違いない。



「清見……トーイックな。TOEIC」



 兄貴も持ってたな、そのイック。いいんだよ、トレックでもシュレックでも。

 自動翻訳が付いているのに言語の壁を感じる。結局は本人の資質も大きく関わってくるのか。



「シショー、ここは俺たちで力を合わせましょう!」


「力を合わせても言語能力は上がらないんじゃ……」


「違いますよ! 自衛隊に進言するっすよ。チンゴンじゃなくてもっと良い名前をつけるように!」


「だよな、だよな!」



 おお、そうだな。壁に向かい並んだ3人は、膝を抱えた状態で向かい合った。

 間に裕理君や郁未君達も入ってきて、輪が広がる。

 いつの間にかママさん達や兄貴、大島氏も俺たちの背後にいた。



 仏間会議で決まった、迷宮『チン……ゴン』の新しい名前、それは『ニッポン』だ。


 今のところ日本人しかいないし、全国から集まった避難民なのでわかりやすい名前がいいんじゃないかと意見が一致した。


 日本……にっぽん。いつか地球に戻れる時まで自分達が生まれ育った場所を忘れないように。(もう無いけどね。by神)

 隊長が遺跡の本部へとこの件を即持っていった。




 すぐに隊長が戻ってきた。


 ダメだったのか?

 えっ? あっさり了承された?


 そんなに簡単に決めていいものなの? あっちの避難民さん達とか自衛隊の中で、揉んで捻って絞り出さなくていいの?


 自衛隊でも、遺跡の避難民達の間でも、『チン……ゴン』は発音しづらいと文句があがっていたそうだ。

 そこに仏間会議から持っていった『ニッポン』がストンと落ちたそうだ。日本人の街、ニッポン。



 仏間では、デスエや迷宮の話に盛り上がる大人と、話に飽きた子供に別れていた。



「きーたん、だっこ」

「きいちゃん、あれやってー」

「だめぇ、きーたんだっこ、だっこして」



 幼児合体ロボが出来た。すぐ潰れた。


 ごめん、デスエツアーで使い切った体力がまだ復活してないんだ。そう言えば、『体力』のスキル石って余ってないかなぁ。

 今度自衛隊で聞いてみよう。

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