58話 帰還……石?
-----(大島視点)-----
迷宮の地下一階層から階段を下り、地下2階層に降り立つと螺旋階段が消えた。
上へ戻る階段がない、俺たちは迷宮に閉じ込められてしまった。
しかし、消えたと思った階段が再度現れて、そしてまた消えた。
生きている迷宮を侮っていた。
階段は一定時間ごとに出現するのかと思ったがそうではないみたいだ。そこで俺と3佐が同時に閃いた。
「そうだ、石だよ! この世界に有り余るスキル石。スキル石の中に迷宮からの帰還に使う石があるんじゃないか?」
だが、閃いたから帰れるわけではない。
「仮に魔物を倒して石をドロップしても、石は直ぐには何の機能を持つかはわからないのですよね」
「数日待つ、と聞きました。しかも、だた待つだけなのか、待っていれば石が自然に変化するのか、それともギルドで何かをしないといけないのか。私達は本当に勉強不足でした」
またしても場の空気が沈んだ。が、その中で清みんがスライムをもちもちと揉んでいた。
清みんが言いたい事を我慢している時によくやる癖だ。
「清みん、何か他に方法はないかな」
追い詰めないようにやんわりと話の水を向けた。
「うん、あの、うん。あのさ、スキル石の事はよくわからないけど、子供達が沢山いた迷宮に入ったじゃん?……混んでいて、普通に螺旋階段を上り下りしてたなって。あの……石が帰還石なら、行く時はどうするの? 行きの階段。行きも石?」
俺も3佐も雷に打たれた。実際には打たれてはいないが、まさに打たれた気持ちだ。
そうだよ、帰りは石でいいかもしれないが、階段がランダム出現だと行きも階段を使うのは難しくなる。
それに清みんが言ったとおり、見学でいった迷宮は沢山の人が普通に螺旋階段を上り下りしていた。狭くて落ちるやつがいるんじゃないかと不安に思ったのを思い出した。
そうか、清みんが階段を怖がっていたのも、あの混み具合を覚えていたからだ。
「……石ではないとしたら、やはりランダム出現でしょうか」
「もしくは階段の出現時間が決まっていて冒険者達はそれを知っているか」
清みんがポヨン氏をもちもちする手を止めない。
このままではポヨン氏が別の物体になってしまう。別の物体=餅だ。わらび餅からただの餅に。
いや、それはともかくだ。
「清みんは、他に階段についてなにか思いつく事あるか? 階段以外でも思いつく事なら何でもいいぞ?」
「関係ないかもだけど。階段が出たのでって40分くらいって言ってたでしょ? 関係ないかもだけど、ちょうその頃に俺らゴブリン倒してた。関係ないかもだけど」
確かに、そろそろ戻るかって頃にゴブリンと遭遇した。倒した後は早足で戻ってきたんだ。
「魔物を倒すと階段が出現する?」
「関係ないよね。ただ、そんくらいの時間だったなぁって、思っただけ」
もっちもっちもっち
やめてあげて。
「それだ! それだよ、清みん」
いや、考えはまとまっていないし、清みんの発言もよく理解していなかったが、ポヨン氏が餅ン氏になりそうで、とりあえず同意をした。清みんの顔がパァっと明るくなり、揉んでいた手が止まった。
「なるほど? 魔物を倒すと階段が出現する?」
3佐も言葉にしながら一生懸命把握に努めようとしていた。
「まぁ確かに、あの混み合っている迷宮なら、いつもどこかで誰かしらが倒していますから、階段は消えにくいし消えても直ぐに出現しますな」
「3佐、けれど、最後のひとりは出られなくなるのでは? だって倒してから階段までいどうする間に消えちゃいますよ?」
「う、うむ、それもそうか」
清みんはもうポヨン氏を揉んではいなかった。




