55話 迷宮(の、魔物)
-----(大島視点)-----
洞窟の先、通路に照らし出された魔物は3体。
声をあげた3佐が魔虫でもなく魔獣でもなく『魔物』という言い方をしたのは、それらが二足歩行で立ち上がっていたからだ。
獣といえば獣なのだが人に近い。
人型の獣で、かつ体毛も薄い。
ファンタジー小説では『ゴブリン』と称される事が多いが、ここでその名称が使われなかった理由。
それは、そのサイズだ。
物語の中のゴブリンは割と小柄、小鬼と言われる事もあるくらいで、人間の子供サイズで語られる事が多い。
だが目の前のそれは、洞窟の天井に頭がつきそうなくらいに大きかった。
「高身長のゴブリン? 痩せたオーガ? どっちだろう」
横から清みんのおっとりとした声が聞こえた。だが真をついてるなと頷けた。
そう、身長からするとオーガっぽい。しかし筋肉質ではなく痩せて猫背だ。しかしゴブリンにしては縦に育ちすぎ……、いや、ゴブリンやオーガの現物と会った事はないので知らないが。
「オークで……ない。オークはもっと肉付きがあって、あと豚っ鼻?」
そうだな。背の高さからオーガよりもオーク寄りかも知れないが、目の前のアレらは痩せすぎだ。
「あ、腰蓑。やっぱゴブリンっぽいね」
清みん、余裕がありすぎるぞ? 虫系や化け物系でなく、顔見知り(?)系だから落ち着いているのか?
「どうします? さがりますか?」
切羽詰まった声で3佐が振り返った。
「ふるふるさん、プルン君、ちょっと威嚇してみて?」
清みんがスライムに指示を出すと、清みんの前と横に居た2体のスライムが、ボヨンボヨンとその場で上下した。
天井にぶつかる勢いの、力のこもったジャンプだ。
すると、目の前の3体がびくりとした後、背を向けて洞窟の奥へと逃げ去っていった。
「逃げましたね……」
「そうですね。とりあえず助かった。清みん、ありがとう。ふるふるさん? とプルンさんもありがとう」
どっちがどっちか不明だがお礼をいった。
「地上に近い層の魔物は強いと聞きましたが、清見君のスライムの方が強いという事でしょうか」
「そうだな。ポヨンさん達は少なくとも地下一階よりも上、地上にいた魔物だからな。かなり強いはずだ」
「もしかすると、このまま行けますかね? どうします? あ、時間を考えると一旦戻った方がいいのか」
そうだ、1時間で戻る予定だった。
「逃げたあれらが仲間を連れてくる事も考えられるし、他の魔物もいるかもしれない。が、階段の状況も知りたいし一旦戻りましょう」
「うん。あの……、ポヨン君達を近場で放っていいかな?」
「ああ、食事か。魔物を倒すところを見たい気もする。敵の強さが知りたい」
「良いのではないでしょうか。さっきの魔物を食べ尽くしたとしても。迷宮は定期的に魔物が湧くと聞いていますから」
「そうだな。清みん、ポヨンさん達に食事に行ってもらえ。ただし交代で、誰かが必ず清みんと残るように」
「うん。わかったー。ぱみゅんちゃん残って。他のみんなはご飯に行ってー。遠くにいったらダメだよー?」
ポヨン氏と他2体のスライムがあっという間に洞窟の奥へと消えていった。ほんの少し不安を感じたが、清みんが普通にしているので安全に問題はないのだろう。
俺も欲しいな。テイムスキル。




