53話 迷宮(の、螺旋階段)
-----(清見視点)-----
「ほら、清みん。生きた迷宮の螺旋階段見たいって言ってただろ?」
大島氏にグイッと前に引き出された。
そうだった。これが、そうなのか。
迷宮の螺旋階段。
踏破済み迷宮の螺旋階段は、迷宮の中央に出来る石の螺旋階段だ。
最下層から地下一階層までが、巨大な穴の壁面に渦巻く階段になっていて、そこを自由に上り下りできる。ニッポンもそうだ。
しかし、未踏破の迷宮は違う。
今、目の前には巨大な穴が存在する。底が見えない巨大な穴だ。
その壁に、石段がある。あるが繋がった螺旋階段ではない。
壁のところどころに石段が現れているが、どこにも繋がっていない。まるでトリックアートの絵画のようだ。
「我々がいるこの階段が、唯一あそこに繋がっている……」
「あそこが次の階層、地下2階層か」
あ、そうだった。スマホで写真撮らなきゃ。
「大島氏、あそこの石段を入れて撮ってもらっていい?」
ここから繋がった不思議階段の先、地下2階層の入口をバックに撮ってもらった。
まだ敵に出会っていないのでとりあえず2階層に進もうと階段を降り始める。
「……あそこに着いたら、この階段が消える、なんて事はないよね?」
ふと頭に浮かんだ事を口にすると、皆の足が止まり、全員が俺を見た。
「えっ、なに? なに? まさか、消えるの? 誰か踏んどく? ひとりでも階段を踏んでいれば消えないんじゃない?」
とは言え今いるのはたった4人。3佐と自衛官と大島氏に俺。自衛官がひとりここに残ったら、3人で進む事になる。
「踏んでいれば消えないでしょうか?」
「どうだろう」
「自分がここに残り、皆さんが2階層に入った途端に奈落へ落ちるとか、勘弁願いたいです」
「そのケースもありそうだな」
「全員で、進みましょうか」
「うん、そうしよ?」
螺旋階段と呼んでいるけど、巨大な穴壁に沿っての螺旋だから、正直壁沿いに一直線の石段と言えなくもない。
3佐も大島氏も左手を壁につけて降りていく。俺は両手で大島氏のズボンのベルトを掴んでいた。
「清みん、ズボンが股に食い込む。肩、肩に手をおいてくれ」
「あ、ごめん」
慌てて肩に手を置いた。
うん、平地を移動する時は腰のベルトを掴んでも問題はないけど、階段だと一段ずつ降りるたびに大島氏のズボンを後ろにいる俺が上に引き上げる感じになった。
それでズボンが股に食い込んだみたい。股……というか、危険だったな。男にとって。
しかし肩に手を置くも階段を下る前の人の肩を掴んでいるのも難しい。ってかこの石段がね、日本のようなサイズが統一された綺麗な階段ではないのだ。
ちゃんと程よく統一された階段とは違う。高さも幅もまちまちだ。
前の遺跡やニッポンの石段もそうだったな。
高さはバラツキがあるし、ここの石段は前後の幅も広いんだ。一歩では遠すぎるけど二歩では狭い、そのくせ横幅は狭い箇所もある。中途半端。足元に気を取られると大島氏の肩を離してしまう。
「清みん、横に来い。横で俺の腕掴め」
大島氏が気を使ってくれるが、この石段、二人で並ぶにはちょっと狭い場所もある上に、手すりが一切ない。ちょっと足を滑らせたらうっかり落ちそうで怖い。
俺の後ろを歩いていた自衛官がスッと俺の右側に来てくれた。
「自分が清見さんの横を歩きます」
すみません、ご迷惑をおかけします。
長すぎる石段がようやく2階層の入口に到達した。
怖かったから長く思えたのか?
2階層の通路に入り一安心して、こちら側から螺旋階段の写真を撮ろうとして振り返ると、階段の足場がなかった。
階段の、足場がなかったああああ。




