49話 大きい魔獣が欲しい
-----(清見視点)-----
結局、迷宮の入口を発見したが、迷宮自体が未踏破なので魔物が湧く。となると避難民が地下を移動すると言う案は没になった。
残るは俺の仏間に避難民を入れてニッポンへ向けて危険な地上の往復しかない。
地上を行くにしても、ミニバンの場合はコアラパンダに引いてもらえるので結構な速さで森を駆け抜ける。だいたい2日もあればニッポンへ着けるそうだ。
仏間だとそうはいかない。
仮りに自衛官のコアラパンダ5体に引いてもらうにしても、仏間に乗せられる避難民はせいぜい20人、多くて30人はいけるかな。いってほしい。
それでも、コアラパンダが引いても5日くらいはかかると思う。と言うのは、俺の自力走行がネックなんだよ。
仏間を引くのがコアラパンダでも、俺が横で仏間に触れていないとならないからだ。
なので俺も仏間と並んで長時間歩き続けないとならない。当然、途中休憩は必要だ。そんなわけでニッポンまで5日はかかると予測される。(もっとかかるかもしれない)
一度に30人(コアラに引けるか不明だが)運んだとしても、こっちの自衛隊を除いても150人くらいいたよな。30人突っ込んで、こっちの自衛隊員は徒歩で行くにしても、全員をニッポンまで運び切るのに、5往復は必要になる。
最低で5往復か。
え……、待って?
片道5日、往復で10日を5往復? ご、おうふくぅ? 50日?
俺、できる気がしない。自衛隊込みで200人を20人ずつ運んで10往復、100日無理ーとか考えていたが、真剣に考えていなかったな。100日どころか50日でも無理。
「やはり、清みんが仏間に乗っても動かせる大型魔獣が必要だな。清みんを連れて森の奥まで戻ってどこかで大型を狩った方が早くないですか?」
大島氏が打ちひしがれた俺の気持ちを察してくれた。
「そうですね。清見君が大型魔獣をテイムして仏間に乗ったままで森を移動するのが、1番の早道かつ安全策です」
仮に足の遅い魔獣をテイムしたとしても、俺が歩くよりはずっと速いし、長く移動できると思う。
うん、テイムするしかない。
「あ、でも怪我人は早くにニッポンへ輸送した方がいいですね」
状態の良くない怪我人が数人居たはず。そんなに薬とか持ってきてないよね?
あ、もしかしてミニバンで迷宮を聞きに行った時に薬もとってきたのか?
「実はミニバンで怪我人を運ぶ計画があります。長谷川さんも運転手として了承されています」
運転手と言うかコアラ使いとしての同乗だな。でも、怪我人全部は乗り切らないんじゃないか?
「重傷者が優先になりますが2往復を予定しております」
「凄いなぁ、長谷川さんだって民間人なのに」
民間人の、しかも女性でママさんが頑張っているのに、俺ってば……、押入れに入りたいとか、恥ずかしい。
いや、俺も民間人ですが、一応、男だし、未婚で子供もいないけど甥は居る。裕理君が恥ずかしくなる叔父さんではいけない。
でも100日とか50日歩くのは無理だから。
「俺、頑張って、大物ゲットする」
-----(大島視点)-----
清みんが大物ゲットを決意した。
ミニバンの空間スキル持ちの長谷川さんが、怪我人の送迎で車を出す話を聞いた清みんがやる気になった。
大物魔獣をゲット出来たら清みんも仏間での移動が楽になるからな。俺も協力するぞ?
長谷川さんがこことニッポンを2往復する間に、清みんの狩りを決行する事になった。時間は無駄に出来ないし、清みんの気が変わらぬうちにだ。
ところで、長谷川さんは結婚前、若い頃はヤンチャで走り屋をしていたらしい。どこぞの峠を攻めていたそうだ。
「久しぶりに思いっきり走らせられて楽しい! エンジンは桜さんだけどハンドルは渡してないわ」
嬉々としていた。
清みんには黙っておこう。
怪我人を乗せたバンがニッポンへ向かい出発した。
倒した後部座席に寝かせてとりあえず3人。助手席は自衛官、運転席はもちろん長谷川さんだ。
俺たちは少し移動をした。自衛官のコアラパンダ達に車両を引き摺ってもらう。車両はスキル持ちが見つかっていない。万が一スキル期限切れだとただの車両になる。なので乱暴に引いて壊したりしないようにスピードを緩めて運ぶそうだ。
車両を引いた自衛官達が向かったのはこの林から出て少しだけ森に入った場所だ。
そこは地下に迷宮があるあたりに近いそうだ。おおよその場所ではあるが。
真上は危険なので少しずらした場所に車両を置いた。それから次に託児所の移動、最後が仏間と民間人だ。
短い距離とはいえ、やはり上空の木々から魔虫は落ちてくる。清みんのスライムが活躍していた。
森の中に車両、託児所、仏間が集合する。早速ポヨンさんはその周りと木の上の虫退治をしてくれている。
コアラパンダを連れた自衛官は数名の隊員と一緒に迷宮の入口を探しに行った。
地下迷宮は、天辺が地上に出ている場合があるそうだ。この世界の人は地上に出ないので、確実な情報ではないそうだ。
今回は地下からの移動はなくなったが、デスエで仕入れた情報により、迷宮の方角と出来れば確実な位置を把握しておきたいそうで隊員達は探索に出たのだ。
イチロー、ジロー、サブローの3体を連れていき、シローとゴローは森の中で自由行動(魔獣退治)だそうだ。
「シローとゴローだけ自由行動?」
「食事調達らしいぞ? 交代で自由にさせているらしい。それにしても安直なネーミングだな」
「……パンパンよりはいいんじゃないか? シャンシャンとかメイメイとか、あの国って何でダブルんだろう。人の名前もダブってるのかな?」
「さあねえ。どうだろね。動物園的にも覚えてもらいやすくて良いと思ったんだろうな」
「そっかぁ……。でもせめて、俺はパン君って呼んであげようかな」
「いや、パン君はよせ。別の動物っぽくなる」
「えっ、そうなの? じゃあ、パンさんにしとく。あ、ほら、あそこ。シローかゴローのどっちかじゃないか?」
清みんが指した方角に目を向けると木によじ登るコアラパンダが目に入った。
俺らも清みんのテイム目的で森に入っていたのだ。
「もう少し移動するか。シロゴロの食事の邪魔したら悪いからな」
「そうだね。シロー!…………ゴロー! またね、バイバイ」
シローで振り向きもしなかったコアラパンダが、ゴローで反応した。
魔獣は俺らの言葉を理解している気がする。思っている以上に賢いのかもしれない。
そういえば清みんも言ってたな、ポヨンさん達は言葉を理解していると。
「首にさぁ、色違いのリボンとか付けてほしいよね。飼い主以外は一から五までの区別がつかないよ」
「清みんとこの押入れになんか無いの?」
「うーん、カラフルリボンなんて無かったなぁ。何か探して良いのあったらあげよう」
「俺から言わせて貰うとポヨンさん達も区別つかないけどな」
「ええっ! 色も少しずつ違うし、キリっとしてリーダーっぽいのがポヨン君で、お茶目なのがプルン君、おっとりしたのがフルフルさん。末っ子気質なのがパミュンちゃんだよ。パミュンちゃなんてまさに1番下の妹って感じでわかりやすいよ?」
いや、全くわからねえよ!
そもそも妹とかって性別どこで判断してんだよ!
色なんてほぼ一緒じゃねえか! 並べてみて初めてほんの僅かの違いに気がつく程度だ。お茶目って? お茶目って、スライムのどんな行動です?
物申したい気持ちをグッと抑えて微笑んでおいた、俺。
大人だよな。
清みんと森の中を進んでいると、少しだけ開けた場所に出た。
何故か、木の生えていない空間。
地面は乾いた土と石が転がっている。広場は中央に向かい緩やかな斜面だ。
「何だろ……隕石の、クレーター、とかかな」
「んー、干上がった湖か沼の跡っぽいな」
「昔この森に湖があったのかな」
「どうだろな」
一応強く足でダンダンと踏みつけてみる。
そこが抜ける感もない。これが砂地だったら砂地獄とか蟻地獄がありそうで怖い。
清みんは魔虫や魔獣は怖がるが、こういう場所は気にせずズンズンと進んでいく。見ているこっちが怖くなる。




