46話 上より下
-----(大島視点)-----
「ここらの下に地下都市、ないかな」
清みんの発言に、俺も、絹田3佐も他の自衛官も、目から鱗が落ちた瞬間であった。
確かに、もしも、この下に地下都市もしくは地下通路があったなら、確かに民間人の移動もかなりラクになる。
絶対に地下を進んだ方が安全だ。
どうして思いつかなかったんだ。危険な地上の森を5日間も行くより断然マシじゃないか。
「けど、どうやって地下都市を探せば……」
「いや、ここまでの地上の地図をデスエに持っていけば、地下の情報と照らし合わせられるんじゃないか?」
「そうですね。となると、まずは一度『ニッポン』街かデスエへ戻らないと」
会議が盛り上がり始めた。
清みんは一瞬オロオロしたが、もう意見を出す事もないとばかりに静かに静観する態勢になった。つまり膝を抱えて目立たないように小さくなっている。
地下情報を取りに行くなら仏間よりももっと小回りがききスピードも出る方がよくないか?
絹田3佐もそこに気がついたようだ。
「ミニバンで行きましょうか。仏間が通った跡地ならミニバンも進みやすい。出来るだけスピードを上げて森を抜けましょう。長谷川さん、是非、同行をお願いしたい」
「え、はい。いいですけど、息子はどうしましょう」
「息子さんはキッズルームでお預かりしますよ。お母さんが居なくて泣くかしら、でも他にも子供が居るのでお子さんの気も紛れると思いますし」
「では食糧を積んで、同行は私絹田、それから安全確保のためスライムとコアラパンダ持ちの隊員も連れて行きます」
「隊長、気力持ちはふたりともですか? ここの防御を考えると1人は置いていってほしいです」
「うむ、それもそうだな。清見君のスライム達もいるが、5体の方を残そう。多すぎると逆にスピードが落ちる原因になりかねん。あと1人、物理攻撃でレベルが高い隊員が同行してくれ」
『ニッポン』街へ戻るのは清みんの仏間ではなく、ミニバンの長谷川さんになった。
清みんはホッとしつつも申し訳なさそうに長谷川さんをチラチラと見ていた。
「絹田3佐が戻るまで、このあたりの魔虫掃除と魔獣探索をしておきましょう。清みんがテイム出来そうな魔獣がいるといいな」
清みんはさっきのホッとした顔から悲壮な表情へと変化した。
スライムを一体持っていた自衛官がコアラパンダを5体テイム出来たんだ。異種魔物を合計6体だ。清みんはスライムを4体持っているが他もテイム出来るはず。
3佐達が戻るまでに何度かトライはすべきだ。
仏間を引くマンモスを欲しがっていたが、まぁ、木の上にマンモスは居なそうだがな。
さっそく翌朝、ミニバンが出発した。
残った避難所では持ってきた食糧は避難民を優先に配られるが、早々になくなるだろう。
毎朝再生する清みんちの仏間の防災食糧は、乳幼児や子供に優先される。
電車の車内で過ごしていた避難民達も、仏間と車両に別れる事で若干ゆとりのある寝場所が確保できた。
正確なスキルについては後に測るとして、スキルの情報や他の話をこちらの自衛官から聞いた避難所の自衛官達は、少しだけやる気が復活しているみたいだ。食事を摂れているもの関係しているだろうが。
残った気力持ちの自衛官のコアラパンダの活躍で大物の魔虫もゲット出来て、食材として重宝している。
カニ(蜘蛛)とウナギ(蛇)は人気だが、ムカデとアブラムシは不人気だ。
ムカデもアブラムシも中身の見た目が悪い上に食べられる部位が少ない。処理をしてくれている自衛隊でも手を焼いている。
清みんの食欲がかなり減退してしまった。わからなくもない。が俺は芋虫とムカデならムカデを食う。ただし毒がない限りだ。
ポヨンさん達が清みんを心配してカニをよく獲ってくる。調味料が少ないのも食が進まない原因かもしれない。
向こうにいた時、キッチンでも機体でも調味料は別保管にして再生に励んでいたが、元が少ないのでそれほどの量が貯まらなかったのだ。
あっちで再生する食糧は、飛行機のギャレー飯といい、産院のコンビニカートの弁当といい、味がついてる物が多かったからそれほど困らなかったんだ。
「大島氏……、こっちの調味料事情ってどうなってるんだろうね?」
「こっちのって、この世界のって事か?」
「うん。ほら、ラノベとかだとさ、胡椒とかは高額で取引されるとか、甘味が無いとかさ、この世界の塩、胡椒、砂糖ってどうなんだろう」
「ああ、そうだな。その辺も聞いてみたいな。色々と学びにデスエの街に行く必要があるな」
仏間、車両、託児所を密着させた。空間スキルの中は安全なので、3箇所の出入りをなるべく外に出ずに済むようにとだ。とは言え全員が中に入る事は出来ない。
自衛隊員は全員外での生活になる。民間人も多くは車内で座って寝るか、車両の下に入りこんだりして寝ているらしい。
「今までもそうでした。お気になさらずに。それよりもコアラパンダやスライムのおかげでこのあたりに魔虫がくる事はなくなりましたね」
車両2台の避難所本営も150人もいるので、全員が車内に避難しての生活は無理だったそうだ。危険時に車内へ全員が避難する事はあったが、大抵は外でのごろ寝がほとんどだったそうだ。
「早く街に行きたいな」
「安全な場所で手足を伸ばしてぐっすり寝たい」
「ラーメン食いてぇ。ハンバーガーでもいい!」
「バカ、あっちの避難所でも流石にラーメンやハンバーガーはないだろ」
「この世界は街でもやはり虫が主食なんだろうか……」
夕方、車両と託児所、仏間の集まった真ん中の空間で食事をとる者達の会話が弾んでいる。自衛官がそれに丁寧に答えていた。
「ラーメンは流石にありませんが、ハンバーガーはあったんじゃないか? ほら、ギャレー飯のランチボックス」
「ロールパンとおかずのセットでしたよ」
「いや、俺が貰ったやつはハンバーガーとポテトが入ってた。何種類かあるって聞いたぞ?」
「カップ麺なら産院のコンビニカートにありましたよ」
「近くにデスエヒンイーンという地下都市の街があるんですが、そこのレストラン……食堂か、虫以外のメニューは普通にありましたよ。牛や豚に似た生き物を育てているって聞いたな」
「ラーメンに似たのも、もしかしたどこかにあるかもしれませんね。今回はニッポン街に留守番中の仲間ですが、やつがスープパスタのような物を食べて美味しかったと言ってました」
話を聞いていた民間人や自衛官から「おお!」という歓声が上がったりしていた。
何故か清みんも一緒に歓声を上げて目を輝かせていた。
やはり清みんを連れてデスエツアーに行くべきだな。
いや、その前に魔獣テイムツアーだな。




