44話 本営会議
-----(清見視点)-----
仏間から物資を出したので、ようやくガランとした和室が現れた。
とは言え、仏間の中に怪我人は並んでいる。
荷物が崩れないように包んでいたシートや毛布、布団なども車両内や電車と仏間の間の空間で役立っている。
明日の再生も考えて押入れの一部は空にしてあるし、怪我人が寝ていないスペースの畳も剥がして傷を付けてある。
押入れも完全カラにしてきたわけではない。
再生の仕組みが完全に解明されたわけではないの。
押入れから出した物を『ニッポン』に保管して、あっちで『傷』をつけてもこちらで再生は起こらないかもしれない。
なのである程度の分別はして今後も必要そうな物は押入れに突っ込んできたのだ。時間が無かったのでかなり大雑把な仕分けだ。
こっちに持ってきた物は、傷をつけて再生を促す必要がある。
『空間スキル』の空間内で確実に再生するのは、あの災害が発生した瞬間に仏間にあった防災用の食糧と水だ。
それ以外、例えば、押入れに入っていた着物や雑貨、布団などは傷が付いた時に新しく再生する。ただし、押入れから出しておく、というルールがあるみたいだ。だが、押入れから出して仏間から遠すぎる場所に置くと再生はしない。色々難しいルールで細かい点はまだ未解明のままだ。
仏壇の蝋燭も線香も、使った分が伸びるのでは無く、使う=傷とカウントされるようで仏間から持ち出した場合のみ、翌日には新しくあらわれる。まだまだ検証途中だ。
なので、現在ある畳も布団も着物も、あちこちに傷をいれておく。明日、新しく増えていますように。
絹田3佐達が向かったこの近くの避難所は、本当に近かったようで、日が暮れる前には戻ってきた。
その避難所にあった建物を持参して。
「何……あの、コンクリのブロック?」
「ビルの一室だったんだと」
「ああ、風呂ママさんとこみたいな感じか。風呂ママさんとこってマンションの一室って言ってたっけ」
どうやら空間スキル持ちが居たようだ。絹田3佐らが建物の運び方を説明したんだろう。コアラパンダも連れていたし運ぶのは簡単だったみたいだ。見た感じキッチンママさんとこよりは大きいように思える。豪華タワマンの一室とか。
「何の部屋? 居間とか?」
大島氏が絹田3佐からチョロっと話を聞いてきた。
「どっかの会社の託児ルームだと」
「託児所。だからスキル持ちが居たんだ……」
「社員の子供を預かる託児ルームがある職場だったらしいぞ。で、親子が3組居た。それと子供だけが6人。保育士が5人だったか。あと自衛官が3人、そこを守ってた」
「親子が3組……? スキル持ちはどうなってるの? お母さん3人ともスキル持ち?」
「いや、スキル持ちは保育士のひとりだった」
「そっか、そうなのか。そういえば、産院もスキル持ちは看護師長さんだったな」
「で、託児所ごとコアラパンダに引かせて持ってきたって。今、久しぶりの日本食を食べてる。病院から乳幼児食預かってきて良かったな。」
「けど、再生しないから、今日だけになっちゃうね」
「まぁこの半年、獲れたてで何とかなってたんだ。今後も何とかなるさ」
「そうだねぇ……」
自衛官に呼ばれて会議に参加してほしいと言われた。
大島氏とふたりで向かう。と言っても、車両と仏間の間のスペースの地面に座り会議が行われていた。
仏間の陰からガラス障子側へ回っただけだ。
への字の短い棒の横にコンクリブロックが置かれている。カラフルな窓枠が目に入った。ビルの廊下側にあった窓らしい。
お母さんが廊下から中を見えるように作られていたそうだ。今は廊下は無い
チラッと覗かせて貰う。
外から見ると真四角のコンクリだが、中は空間が区切られていた。子供のトイレと給湯室、事務室、遊戯場などがカラフルで低い壁で仕切られているそうだ。
扉などで完全に仕切られていなかったのが幸いしたのだろう。多分だが、仕切られていたらその部屋しか転移しなかっただろう。トイレ(子供用とは言え)と給湯室があったのは良かった。
子供達は久しぶりにお腹いっぱいになったのか、皆、気持ちよさそうに寝ていた。
それでも、痩せてるな、と思ってしまった。
会議では、発言はするつもりはないので、隅っこに座る。座るが皆がチラチラとこっちを見る。見んな。
あ、大島氏を見てるのか。
広場に集まっているのは自衛隊だけではない。民間人からも何人か出席しているそうだ。きっとリーダー的な人だろう。
『何故、あの災害が起こったのか』
それは誰にも答えられなかった。
『地球に、日本に戻れるのか』
これにも声は全くあがらなかった。
『ここは、何処なのか』
絹田3佐が話した。惑星の名前は不明だが、この世界に自分達に似た人類が居る事、彼らは地下に都市を築いている事。
地上が危険な事、魔物……魔虫魔獣が居る事を話した。
この避難所でも自衛官はもとより避難民達も魔虫を見ているし、食材にもなっているので、その話はすんなり皆の腑に落ちたようだ。
『ニッポンと名付けた街を造っている最中である』
その話が出た時は一斉に歓声が沸きあがった。
「すぐに地球に戻れないなら、せめて日本っぽい街で暮らしたい」
「子供の安全が脅かされない場所で暮らしたい」
「他の隊員と合流したい」
みんなの意見は一致していた。問題はただひとつ。
『どうやってニッポン街まで移動するか』
絹田3佐がここまでの道のりであったことを説明した。




