43話 本営
-----(清見視点)-----
着いた。
到着した、避難所の『本営』。
不思議な空間だった。木が密集する中に電車が2車両、ちょっとへの字のように置かれている。
民間人は……確か100人くらい居るんだっけ? 危険だから普段は出来るだけ車両から出ないで暮らしているって聞いた。
今は俺たちが立てた轟音のせいか、2両の折れた真ん中の空間にかなりの人が出てきている。
そう、騒音の元である俺たちを見るために。
自衛官達が民間人を車両に戻そうとしている。木の上からいつ魔虫が落ちてこないとも限らないからだ。
電車の窓にも人が鈴なりにへばりつきこっちを見ている。
移動させてきた仏間は車両のへの字の『へ』の下部分に横向き、つまりガラス障子の方を向けた位置で設置をした。
平和な世界なら田舎の風景だ。
電車の窓から仏間の縁台が見える。仏間の縁台から電車が見える。うん、そんな状況ではないけどな。
俺はへばって地面に座り込んでいたが、自衛官達は休む事なく動いていた。
『ニッポン』の地上部の仏間で出会った乃木さんと、す、杉田?さん、それからこの林に入る前に『本営』から合流したわかつきさん、こっちからは絹田3佐や自衛官達が、向こうの自衛官達と抱き合ったり握手したり泣いたり笑ったりしていた。
慌てて指示を出して食糧を配ったり、衛生兵……じゃなくて自衛隊の医療関係の人が民間人の様子を見に行ったりと皆大忙しだ。
俺は仏間の後ろの地面で静かに休憩を貪った。大島氏もいつの間にか横にきて座っていた。
「清みん、おつかれさん」
「大島氏もごくろーさまでした。マジ疲れたね」
「そうだな」
「でも、来てよかった。来れてよかった」
泣きながら、配られた食事を頬張っている人達を見たら、本当に来て良かったと思う。
思うが、こういう時によく『疲れも吹っ飛ぶ』と表現するけど、…………疲れたままなのは何故だ。俺の頑張りが足らなかったのか?
「ここだけで民間人125名、自衛官が30名か。まだこの近くに避難所があるらしいが……」
大島氏が難しい顔になった。俺もたぶんそんな顔になっていると思う。
「次の避難所って何人居るの?」
「20人くらいって言ってたな。全部の避難所と俺らを入れると持ってきた食糧も、保って3日だな」
「全部であっちが200くらいうちが50として、250人か。仏間の再生食糧だと全然間に合わないな」
「再生する防災食糧だとせいぜいが10人、1日2食に減らしても15人程度か」
「ここらの避難所は獲れたての食事なんだよね? 電車に再生する食糧があるとは思えないし……」
「清みん、『獲れたて』とは、まぁ確かにそうだが。獲れたてね。うん」
「そう言えば『スキル電車』の人、居るのかな」
「居るだろ? 車両が消えてないからな」
「ううん、スキルが消えても車両は残るよ。単なる物質として。もしもスキル所持者が離れてしまってたら、きっとどんどんと錆びていったりするんじゃないかな」
「なるほど。車両に壊れた感じがないところを見るとスキル持ちが居るのか? まぁ、3佐が聞き取りをおこなっているだろう」
「車両が繋がってるけど、ふたりかな? それともひとり?」
「どうだろうな? どうせなら新幹線とか食堂車がある車両なら良かったのにな」
「うーん、あの災害が8:30くらいだから、そんな時間に親子で食堂車に居るかなぁ。特に小さい子なら自分の席でミルクやご飯をあげていそう」
「そっか、そうだな」
「獲れたての食事に慣れている人達なら、今はコアラパンダ達がいるから、お願いしたら獲ってきてくれそう。食事は何とかなるかなぁ」
「そういえばそうか。問題は今後か」
「うん。どうするんだろう。『ニッポン』まで連れて帰るのはかなり大変そうだよな。激しいところを通らないとならないし、全員一緒は無理だろうなぁ」
「民間人の全員を仏間に収容は無理だな」
「あの……俺、この距離を何往復も、とか、絶対無理だけど。ええと、食糧確保とかは手伝いたいけど、あの距離を徒歩移動はちょっと」
3佐の手が空いている時に話を聞こうと思ったのだけど、絹田3佐達はここから近いと言われている次の避難所へ既に向かった後だった。
仏間とミニバンは置いていった。気力スキル持ちの自衛官のコアラパンダ達を連れていったそうだ。




