41話 林前で待機
-----(大島視点)-----
森を進んで、休んで、進んで、休んでを繰り返した。
スライムやコアラパンダが進む先の魔虫や魔獣を間引いてくれているおかげか、その後は大きな襲撃もなくスムーズだ。
たまにうっかり落ちてきた魔虫はスライムにパクっと喰われていた。
仏間とミニバンの進みも良い。コアラパンダが引いてくれているおかげだろう。
「もうすぐです。あの林に突入して少し進んだあたりです」
案内をしてくれていた自衛官の指した方向を見ると、確かに『森』というよりは『林』だな。
細い木々が鬱蒼と生い茂っているのが見えた。
「どうしましょうか」
「いきなりデカイ建物で薙ぎ倒しながら入っていったら向こうも驚くだろう。ここからどのくらいだ?」
「林に入って徒歩……60分くらいでしょうか」
「では、一行はここで待ってもらい、まずは自分達数人で向こうに合流しましょう。コアラパンダは置いてうちの隊員のスライムだけを連れて入ります。皆さんはここでお待ちください」
絹田3佐は部下達を連れて林の中へと入っていった。残りの隊員達、仏間、ミニバンはここで待機だ。
この先に避難所の本営があるそうだ。電車の車両ふたつと言ってたな。
清みんは仏間に上がり、うつ伏せに寝ていた。本当にご苦労さんだ。
清みんの事をもう引きニートと言うやつはいないんじゃないか?危険な森の中を4日間も仏間を引き……、仏間を引き……。仏間引きニート? 違う違う違うぞ?『引きニート』はひきこもりニートの略してだからな。うん、清みんは引きこもってない。ちゃんと物理的に引いてたからな。
うつ伏せに寝てる清みんの背中に乗ったポヨンさんを見る。よく懐いているよなぁ。羨ましい。
俺もテイムしたい。今のところテイム成功者は『空間スキル』持ちと『気力スキル』持ちだ。
今更『空間スキル』は手に入らないから、気力スキルなら何とかならないだろうか。『ニッポン』街で発見されたゴミ箱からの気力のスキル石はもうないんだよなぁ。
でも、ゴミ箱に少なくとも1個は入っていたって事は、いらないから捨てられた。って事はある程度は出るって事だよな?どこかのダンジョンに入ってみたい。
寝返りをうった清みんが目を覚ました。近くでポヨンさんを見ていたから気配で起こしちゃったか。
「はよ……もう、戻ってきた?」
「まだだ。まだ寝てても大丈夫だぞ?」
「うん、もう、起きとく」
「そっか。……清みんさ、この救助が終わったら、今度ダンジョンに行かないか?」
「…………この救助が終わったら、しばらく休みたい。パンツの仕事も多いし、ちょっと俺、疲れた」
「そうだった。清みんは修繕の仕事もあったな。ご苦労さん」
「大島氏こそ、ほぼ自衛隊。てか、自衛隊より自衛隊だよ」
「だよなー。俺ら、働きすぎだな」
「うん。…………でも、何でダンジョン? 箱のレベル上げ?」
「いや。清みん達を見ててさ、テイムがちょっと羨ましくなった。それで『気力』のスキル石が欲しいと思ったんだ」
「そうか。……でも、ダンジョンで魔物倒してもそれが出るとは限らないじゃん? だったらデスエのギルドに依頼出した方が早くない? 『気力のスキル石求む』みたいな」
「それ! なるほど、そっちのが確実だな」
「でもさぁ、俺、ちょっと疑問なんだけど。こっちの世界の人って何でテイムしないの? 石を捨てるくらいだからみんな『気力』持ってるんだよね? 普通に日常的にテイムしてそうじゃない?」
「確かに。ゴミ箱に入れるクズスキル。誰もが子供でも持っているスキル。魔物が当たり前に居る世界ならもっとテイムされた魔物が人と共に居てもおかしくない」
「あ、俺が知らないだけでテイムしてる冒険者いるのかな。俺、デスエもあまりよく見てなかったから。もしかしたら街中でも普通に飼われている魔獣居た?」
清みん言葉が頭の中をくるくると回った。デスエの街……、乗り物としては居た。しかし生活の中に居たか? 俺も清みんが言うほどは街の人の生活を見てはいない。
「そこんとこ、絹田3佐にも話して、向こうの話も聞いたほうがいいな」
「うん。テイムするのは聞いてからにしなよ。テイムしないのは何か大きな問題があるのかもしれないじゃん? ミニバンママさんはもうテイムしちゃったけど、食費が異様にかかるとか、夜中に煩く鳴くとか」
なるほど。清みんの話は、言い得て妙。何かの確信を突いている気もした。
外から騒めきが聞こえてきた。戻ってきたのか?




